「おや、珍しい組み合わせだね」
徹が【待合室】に入ってくると、マスターの恵史が目を丸くした。
見ると、カウンターには顔色のよくない航がいた。
「あれ? 翔吾はいないの?」
徹が声をかけると、航は露骨にイヤそうな顔をした。
「漫才コンビじゃあるまいし、あんなむさ苦しい男と、そう四六時中一緒にいたいもんか」
綺麗な顔に似合わず口が悪い航だったが、今日は更に毒舌に磨きがかかっている。
「ケンカでもしたの?」
徹の問いに航は肩を竦めるだけで答えた。
「そういうお前こそ、優等生はどうした?」
反対に突っ込まれて、徹は思い出したように涙目になった。
「慎司は補習・・・」
徹の答えに、航は自分もその補習を受けに来たけどサボッたことを思い出した。
「で? どうしたのかな? 徹クンは」
徹にアイスコーヒーを運んできた恵史に、徹は口唇を噛み締めながら訴えた。
「慎ちゃんがあんまり激しくするから、俺・・・足腰がガクガクで部活ができなかったんだ」
「お前もか?」
航が驚いたように徹を見た。
「あれま・・・」
恵史も苦笑している。
「俺も補習を受けようと思ってきたけど、ここまで来たとこでスタミナ切れ」
航と徹がカウンターに並んで突っ伏していると、けたたましい音をたててドアベルが鳴った。
「こんなトコにいたっ! 航!」
下僕は姫に駆け寄ったが、聞くも恐ろしい言葉で罵られることになった。
「お待たせ。徹」
保護者が現れたが、おこちゃまは待ちくたびれて眠っていた。
「んー? どうしたんだ? ヤツらは」
1ヶ月ぶりに戻ってきたダーリンを濃厚なくちづけで迎えたマスターは、簡単に事情を説明した。
「アハハハ! 明日はわが身だってことわかってんだろうな? 恵史」
ニッと笑う裕の目が欲望にギラついてるのに気付いた恵史は、明日は臨時休業になることを予感して、痛いほどの抱擁に身を委ねた。