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「僕はずっと佳尉に憧れてたんだ。佳尉のようになりたかった・・・」
 佳尉とお揃いのプラチナのシンプルな指輪が左手の薬指に輝いている。真矢は怖いほどの幸せに包まれている自分がまだ信じられない様子だった。
「俺みたいにならなくてよかったじゃん」
「どうして?」
「だって俺が俺みたいな男と抱き合うなんて、考えただけで気持ち悪いじゃん」
 佳尉の言うことももっともで、真矢はクスッと笑った。
「そっか・・・僕は僕のままでいていいんだ・・・」
「そういうこと、俺は藤枝まあやセンセーじゃなくても、藤枝真矢に惚れたんだから」
 佳尉の真摯な瞳に見つめられて、真矢は身体が熱くなるのを感じた。
「うれしい・・・佳尉・・」
 積極的に真矢は佳尉に抱きついた。佳尉は以前の真矢とはうって変わったような変貌ぶりに、驚きを隠せなかった。


「藤枝?」
 夏休みが明けてひさしぶりに真矢に会った岡崎は一目見て絶句してしまった。
「久しぶり、岡崎。元気だった?」
「そっか・・・とうとう収まるとこに収まったんだな」
「え?」
 目をパチクリさせる真矢に岡崎は完璧に失恋したというのに、気持ちはサッパリしていた。
「湯島に愛されてんだろ? ずいぶん綺麗になったよ。自分に自信がついたんだな」
 岡崎に指摘されて、真矢ははにかみながらもコクンと頷いた。
「僕は僕のままでいていいって佳尉が言ってくれたから・・・」
「チェッ、惚気られちまった。悔しいから昼メシは藤枝のおごりな?」
 これからも友達でいてくれるんだという意思表示に、真矢はまたコクンと頷いた。
「特別定食にオムライスもつけるよ」
「おー! 持つべきものはリッチな親友だ」
 茶化したような岡崎の言葉に、真矢は破顔した。

「随分長いことかかったね。ま、取り敢えずおめでとう」
 洋人は2ヶ月以上もかかったのが信じられないと言いたげだったが、祝福してくれた。
「俺がセンセーのファンだってのは本当なんですよ」
 洋人がニコっと綺麗な顔で微笑むと、真矢は照れたように「ありがとう」とお礼を言った。
「こいつがバカなことしないように、しっかり手綱を握っておくことが円満の秘訣だと思いますよ」
「うるせぇ! 反省してるっつったろ」
 洋人の言葉に、佳尉は口唇を尖らせた。

「そ・・・そりゃ、おめでとう・・・・」
 佳尉の恋人が男だと知らさせた誠吾は、身を固める覚悟を決めたらしい。婚約者としてさやかを紹介された佳尉は、驚きながらも祝福した。
 誠吾は佳尉が目を丸くしているのを見て、自分ほど驚いてないにしても、密かに溜飲を下げた。
「私の占いが役に立ったみたいね。私にも今度恋人を紹介してくれるとうれしいわ」
「もちろん、喜んで」
 自分と真矢の関係を認めてくれる人がいるということに、佳尉は幸せを感じていた。

「あ・・・・佳尉・・・・佳尉・・・」
 佳尉の灼熱で最奥をかきまわされて、真矢は身も世もなく乱れていた。
「コレが見たかったんだ・・・・」
 真矢を高みに追い上げながら、佳尉はうっとりした顔でつぶやいた。
「真矢・・・・一緒に達こうぜ・・・」
 真矢が白濁を吹き上げるのを見届けると、佳尉も真矢の奥を熱く濡らした。
「絶対に幸せになろうな・・・・」
 半分意識を失っているような真矢に囁きかけると、口唇に笑みを浮かべて小さな答えが返ってきた。
「佳尉のそばにいられるだけで・・・・幸せだよ・・・僕は・・・」
 そのまま眠ってしまった恋人をそっと抱き締めると、佳尉もまた眠りの世界へと入っていった。
「俺もだよ・・・真矢・・・」
 不器用だった恋人達の寝顔は、輝くような幸せに満ち溢れていた。

                                                            おしまい♪