17

「偽装結婚って・・・」
 いつもの居酒屋で、俺が報告すると、美音を始め女のコ達は全員目をまん丸に見開いて絶句してしまった。
「そういうことなんで、協力をよろしくお願いします」
「ワカ様に頭下げられちゃ、仕方ないわね・・」
 美音が大きなため息と共に言うと、みんなも脱力したようにうんうんと頷いた。
「でも、偽装結婚なら私がしてあげたのにぃ・・・水臭いですぅ」
 静美が頬を膨らませて言うと、麗香が彼女の頭を小突いた。
「バーカ。偽装結婚なんだから、ワカ様のことを好きなアンタじゃ、偽装にならないじゃないの」
「あ、そうか・・・」
 てへっと舌を出して静美は首をすくめた。
「こうするのが一番イイのよね? 後悔しないよね?」
 美智子が心配そうに言う。俺は安心させるように微笑んで言った。
「絶対に大丈夫だとは言えないけど、多分後悔はしない。応援してくれるみんなのためにも、俺は絶対に幸せになるから」
「ワカ様・・・」
 俺の決意に、みんなホロリと涙ぐんだ。
「なんだか、妹を嫁に出す気分だわ・・・」
 美音がハンカチで目元をぬぐうフリをしながら言うと、俺より年下なはずの他のみんなも「本当。絶対に幸せになってね。ワカ様」と、ヨヨヨと泣き崩れるマネをした。
「幸せになるつもりだけど、俺は妹じゃないし、偽装とはいえ、嫁を貰うんだってば・・」
 俺が憮然として言うと、みんなこらえ切れなくなったように吹き出した。

 ジューンブライドになりたいとの雪姫のたっての希望で、6月に入ってすぐ、梅雨入り前の大安吉日、俺達4人は結婚式を挙げた。
 神の前で偽りの相手に愛を誓うのは少し良心が痛んだけど、相手が違うだけで確かに永遠の愛を誓った。
 披露宴は堅苦しくならないように、立食形式のガーデンパーティーにした。

「みんなが幸せになれるウソも、アリよね」
 タイトなデザインのシンプルなウエディングドレスに身を包んだ吏伽が言うと、グレーのタキシードをモデルばりに着こなした健悟がうなずいて言った。
「少なくとも、俺達4人は確実に幸せになろうな」
「うん」
 フリルとリボンだらけの、ロリータじみたミニの純白のドレスがしっくり似合っている雪姫も嬉しそうにうなずいた。
「さあ、そろそろ行こうか」
 雪姫に合わせて純白のタキシードを着た俺は、どう見てもトウの立った七五三にしか見えなかったので、ヤケになって言うと、みんな表情を引き締めて披露宴の会場へと向かった。

 多分俺達は上手くやれるだろう。
 健悟は吏伽さんと顔を見合わせて微笑んでいる。
 俺も、隣で微笑む愛らしい共犯者に腕を差し出すと、みんなからの祝福の拍手を浴びる為に一歩踏み出した。






                                               はっぴぃえんど・・?(^^ゞ