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「垣内さん、帰ってこなかったじゃねーか」
 翌日、望は苦情を言いにやってきた。
「俺は垣内さんに逢ったとは言ったけど、家に戻ってきたようだとは言わなかったぜ」
「なんだよ、それっ!」
 テーブルをバンバン叩いて望は怒鳴った。
「俺は仕事帰り、垣内さんは仕事中。忙しいらしいな」
 一矢は悪びれずにシレッと言った。
「ぬか喜びさせやがって、バカ野郎!」
「牧村・・・・欲求不満だろ・・・何日可愛がってもらってないんだ?」
 ボソッと呟いた一矢の言葉に、望は耳まで真っ赤になった。
「図星かよ・・」
 ぷっと吹き出した一矢にソファのクッションを投げつけると、望はダンダンと足を踏み鳴らして帰っていった。
「ゆづちん、そんな人でなしとはさっさと別れた方がいいぜ」
 ドアが閉まる前にそんな一言を言い残して。


「人でなしだって・・・」
「望が可哀相だよ」
 ちょっと一矢を睨んだ弓弦を抱き寄せながら、一矢はニヤニヤしている。
「そうでもないんじゃねぇ? 昨日は無理だけど、今日には家に帰れるって言ってたし」
「なんでそのことを教えてあげないんだよ? イジワルなんだから」
 弓弦は頬を膨らませた。
「サプライズな方が喜びは大きいだろ?」
「それはそうだろうけど・・・」
 納得できないのか、弓弦はブツブツ言っていたが、一矢はそのままソファに押し倒した。
「いっ・・・一矢?」
「お前は欲求不満にならねぇように、全力で可愛がってやるよ」
「ちょっ・・・こんな昼間から・・・昨日だって・・」
 弓弦の抵抗はあっさりとくちづけで封印された。



 恋人になった一矢はとても情熱的だけど、体力が持つかな・・・と、弓弦は不安になった。
 でも、望には相談できないな・・・・と、新たな悩みに弓弦は嬉しい悲鳴を上げることになった。






                              おしまい♪