終わりよければ・・?

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 魔法界カーネリアンの次期王である11歳のグレアムとフレデリックとアーネストは同い年で赤ん坊の頃から一緒に育った。
 やんちゃで活発なグレアムとは正反対の、聡明でおとなしく思慮深いフレデリックは、魔法学校に入学して6年経った今、将来文官としてグレアムの右腕となることが決められていた。
 グレアム同様やんちゃなアーネストは同じくグレアム付きの武官となることが決まっていた。


「フレディ、外で遊ぼうぜ」
 グレアムに誘われても、最近のフレデリックはいつも首を横に振るだけだった。
「また図書館? たまには俺達と遊んだってバチは当たらないって」
 グレアムが口を尖らせても、フレデリックはどうしても首を縦には振らなかった。
「そんなに勉強ばっかしなくても、俺の右腕になれることは決まったんだからさ。遊ぼう」
 以前なら、しつこく誘わなくてもいつも一緒に遊んでいたのに、フレデリックはやはり首を縦に振らなかった。
「だから、近い将来、イヤでもずっとグレアムの側にいなきゃいけないんだから、今から一緒にいなくてもいいだろ」
 フレデリックの言葉に、グレアムはふくれっ面になったが、アーネストと2人で部屋を出て行った。
「イヤでもってことはないじゃん・・まじ一緒にいたくないのかな・・・」
 毒舌なフレデリックの冗談だとわかっているけど、グレアムは少し凹んだ。


「気にするなよ、グレアム。フレディにもいろいろ考えがあるんだろうから」
 アーネストも本当はフレデリックと遊びたいと思っていたけど、無理してガマンした。
「だけどさ・・・・」
 グレアムは納得しきれていないようだったけど、アーネストが魔法で羽の生えたボールのようなものを出して空に飛ばすと、それを追いかけて駆け出した。
「今日こそ、俺が勝つからな」
 アーネストがグレアムの後を追いながら言った。カーネリアンを護る将来のために、遊びを兼ねて2人はこうやって訓練をしていた。
 クレアムの武器は剣。魔法学校に入学した祝いに王から与えられた時には、手のひらに治まるナイフのような大きさだった それは、魔力が上がるにつれて、グレアムの腕の長さくらいに成長していた。
 アーネストの武器は小さなナイフのようなもので、投げて使う。
 2人は逃げ回るボールを打ち落とそうと、走り回った。
 ちなみに、フレデリックの武器は指先から飛ばす氷の刃だ。冷たいフレデリックに似合いの武器だとグレアム達は思っていたけど、本人の前では絶対に口に出さなかった。



「マーシャル・・・」
 フレデリックの呼びかけに振り返った上級生は、スラリと背が高かったが、ウィッチかと見まごうくらい端整な顔立ちをしていた。夕陽のように赤い髪を腰まで伸ばしているのは、ウィッチのように髪の長さが魔力に比例するとかで、切れないかららしい。
「やぁ、フレッド・・・」
 端正な顔を綻ばせて、マーシャルはフレデリックの頭を撫でた。
「今日はどんな本を読んでるの?」
 図書館のヌシ的存在のマーシャルは、寮ではフレデリックと同室で、子どもの頃からずっと面倒を見てくれていた。
 リシュールには女手がないので、子どもは一所に集められて、年で一線を退いた保育専従のウィザードに育てられる。
 5歳になると全寮制の魔法学校に入ることになるが、この時には上級生が下級生と同室になって世話をする。そして上級生になると、下級生の世話をするというシステムになっていた。