翌年の『ナイト』。
「ヤダぁ♪ こんなキュートな伴侶だなんて、モゥ全面的に許しちゃう♪」
「流石、私の甥っこ、目が高いわ♪」
フレデリックを紹介した途端、キャサリンとキャロラインは悲鳴を上げた。
二人の魔女にかわるがわる抱き締められて顔中にキスの嵐を受けて、フレデリックは目を白黒させていた。
「そう、エイダの息子なのね」
フレデリックの母エイダは、フレデリックを産んだ後の肥立ちが悪く、既に亡くなっていたのだった。
「エイダに似てるわ。この優しそうな琥珀の瞳も、ふわふわのブラウンの髪も・・・」
キャロラインは生前のエイダを思い出したのか、フレデリックを抱き締めたまま、涙ぐんだ。
「エイダの分も幸せにしなきゃ許さないわよ」
キャサリンの言葉に、マーシャルは真摯な思いで頷いた。
『ナイト』にデビューしたものの、フレデリックは10日間ずっと、マーシャルと二人きりで部屋にこもって愛を交わしていた。
二人が恋人同士ということは家族以外には極秘事項となっていたので、変化魔法を使ったりして、バレないように行動するのは、それなりにスリルがあって面白かった。
「終わりよければ全てよし・・・」
紆余曲折はあったものの、見事マーシャルを恋人にできたフレデリックは、ほくそ笑んでいた。
「何か言ったかい? フレッド」
情事の後のけだるい身体をシーツの海に投げ出したまま呟くフレデリックに、マーシャルは首をかしげた。
「ん・・なにも・・」
意味深な笑みを浮かべる恋人に、両手を差し伸べられると、マーシャルは再びその華奢な身体に覆いかぶさっていった。
9年後。
「俺にもセラフィという伴侶ができて、アーサーも来年の『ナイト』で伴侶ができるから、お前もそろそろ身を固めたらどうだ? フレディ」
可愛い天使のベターハーフを手に入れ、幸せに緩みきった表情で、グレアムが言う。
お世継ぎの優秀な右腕であるフレデリックは、少し眉を上げた。
「お言葉ではございますが、私には『ナイト』にテビュー前から、心に決めた伴侶がおります」
「なんだと!?」
グレアムはあんぐりと口を開けた。
「グレアム様を差し置いてはいけないと、長年秘密の関係を保ってまいりましたが、これでやっと一緒に暮らせます」
「マジかよ?」
「ええ」
にっこり微笑ったフレデリックは、魔法力では誰にも適う者がないグレアムでも読めない表情で、別の意味で勝てないと思わされた。
「相手はダレだよ?」
不貞腐れて訊ねて返ってきた答えに、グレアムは度肝を抜かれた。
「マ・・・・マーシャルって・・・・・」
グレアムはフレデリックが退室しても、しばらく魂が抜けたように呆然としていた。
切れ者のフレデリックの伴侶が美貌の薬師だというニュースは、さながら嵐のようにリシュール中に広まった。
しかしウワサの二人は、やっと一緒に暮らせると、周りの喧騒をものともせず、ラブラブな蜜月を送った。
ある意味ハッピーエンド?