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「もぉヤだぁ・・・眠いよぉ・・・バートのバカぁ・・・」
 バスケで鍛えているとはいえ、慣れない行為を強いられ続けて、聖夜の体力はもう限界にきていた。
 バートは抜かずに3度も放ったくせに、今度はバスルームに聖夜を連れ込んで、清めると言ってまたみだらな行為を強いていた。
「ナカをきれいにしておカないト、おなかが痛くナルんだヨ。もうスコシの辛抱ネ」
 何度も何度も湯を注ぎ入れては目の前で排泄することを強要されて、聖夜は泣き疲れて声も嗄れてしまった。
「キライだぁ・・バカぁ・・」
 そう呟いたのを最後に、聖夜は意識が墜落するように眠りに落ちた。
【嫌いだと言われても、もう手離すつもりはないよ。やっと見つけた僕のヤマトナデシコ・・】
 バートは無心に眠る聖夜の口唇にキスを落とした。



「ナマトナデシコは女だっ!」
 聖夜は顔を真っ赤にして怒鳴った。冬夜も困惑した表情になっている。
【しとやかな女性の代名詞だから、そう言われても全然嬉しくないよ・・・】
 ふくれっ面になった似てない双子を挟んで、同じ顔の双子は満面の笑みを浮かべていた。
【私たちは「ガイジン」だから日本のことは詳しく知らない。微妙なニュアンスの違いはわからなくても当然だよ】
 ニコニコしながら開き直るアーニーにバートも同調した。
【とにかく、運命の人イコール「ヤマトナデシコ」ってことでいいじゃないか。厳密に言えば僕たちのママも「ヤマトナデシコ」なんかじゃないらしいし】
 無理やりのこじつけに、冬夜は苦笑するしかなかった。聖夜は英語での会話がわからずに、ますます頬を膨らませた。
「ナニ言ってるのか、全然わかんねーよ!」
「ゴメなさーい。ボクがホーリーのこト大好キだって言ったンだよ」
「ウソ言ってんじゃねーよ」
 テキトーなことを言って誤魔化されたとわかっている聖夜は、とうとうそっぽを向いてしまった。
「Oh! ウソなんかジャありまセーン」
 態度で想いを伝えようと聖夜を抱き締めたバートは、驚いた聖夜が弾みで上げた頭に顎を直撃されるハメになった。

【おじいさんによると、ボクたちのママのことは「カカア天下」と言うらしいよ】
 涙目で顎をさすりながら、バートが言う。
「えっ・・ウソ・・・」
 冬夜が目を丸くしたので、聖夜は何事かと首を傾げた。
「2人のお母さんはヤマトナデシコじゃなくてカカア天下なんだって」
「えー?!」
 冬夜の説明に聖夜も目を丸くした。
「パパはクッションのヨうにママのお尻の下に敷かレテる。ボクたちもキュートな恋人に頭が上がらナイね」
 バートの言葉にアーニーも頷いている。
「どっちも同じ女に対する代名詞だけど、カカア天下の方がイヤだ・・・」
 聖夜は憮然としていたが、冬夜は諦めたような笑みを浮かべた。
「どうせ、女のコみたいに抱かれてるんだから、もう好きなように言ってよ」
 2人の機嫌がどんどん低下して行くのが見て取れたので、そっくりの双子は慌てて恋人の機嫌を取りにかかった。
【女のコのようにだなんて心外だ。私がどれだけ冬夜のことを想っているか、身体で表現してるだけなのに・・・】
「Oh どうシて怒ってルのデスか? ボクはこんなにホーリーのこと思っテルのに・・」
 必死の双子は同じように恋人を羽交い絞めにして、機関銃のように愛を囁きだした。似ていない双子はうんざりとした表情を浮かべながらも、まんざらでもない様子で恋人の胸に抱かれ、したいようにさせていた。
 その様子ははたから見ていると恋人を尻の下に敷いている「カカア天下」以外の何物でもなかった。
 そして、そっくりな双子がとても幸せだというのは、2人の表情を見ていれば火を見るより明らかだった。




                                  .Happy End.