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「今日はこんなの用意してみたんだ」
 佳尉はベッドサイドの引き出しを開けると、はたきのようなものを取り出した。
「ソフトSM・・・前からちょっと興味あったんだ。バラはあまり痛くない鞭だから、痕が残らないと思うよ」
 そう言いながら房のようになっている先を、真矢の胸に這わせる。
「か・・佳尉・・・」
 真矢の目に怯えが浮かんだのを、佳尉は見逃さなかった。
「俺のことが怖い?」
 訊かれた真矢はフルフルと首を振った。
「これで叩かれるんだよ・・・それでも怖くない?」
 房で頬を撫でられても、真矢は首を横に振った。
「佳尉は・・・ひどいことをしたりしない・・・わかってるから・・・・」
 真矢の言葉に佳尉は驚いた。
「今まで俺がしてきたいろんなこと、ひどいことだと思ってないんだ?」
 浣腸したり、オモチャを突っ込んだり、言葉で弄ったり、縛ったり、嫌いになられても仕方ないようなことをいろいろしてきたけど、真矢はひどいことをされたと思っていないということなのかと、信じられない思いだった。
「佳尉は・・・優しいよ・・・・」
「センパイ・・・・」
 無条件に寄せられる信頼に、佳尉は少し戸惑った。
「俺はそんなにいいヤツじゃないさ・・・」
 佳尉が自嘲的につぶやくと、真矢は佳尉の頬に手を伸ばした。
「僕には・・・優しいよ・・・ あの・・・あれは、恥ずかしいけど・・・気持ちいいから・・・」
「センパイ・・・・」
「僕は・・佳尉が好きだよ・・・」
 真矢は真っ直ぐに佳尉の目を見て言った。
「やっぱ、センパイ可愛いや」
 佳尉は真矢を抱き締めた。
「これだけ無条件に信頼されちゃ、無下にできないじゃん・・・」
「佳尉・・・」
 広い胸に抱き込まれて、真矢は幸せを感じながら目を閉じた。
「で・・・ホントにシテもいいの? コレ・・・・」
 身体を離して、バラ鞭を振りながら佳尉に訊かれて、真矢は頬を染めて頷いた。
「じゃ、いくよ・・・身体の力抜いててね・・・・」
 パシッ。
 裸の胸を軽くはたくと、真矢の身体が跳ね上がった。
「痛い?」
「そ・・・そんなには・・・・」
 涙で潤んだ目で見上げられて、佳尉の理性がグラついた。
「そんなに可愛い顔、余所で見せたらおしおきだぜ」
 こういう風にな、と言いながら、佳尉は剥き出しになった乳首を狙って打った。
「ぅ・・・ん・・」
 打たれたところがほんのり赤くなる。佳尉は細心の注意を払いながら、真矢を打った。
「どんな感じ? 言葉にして教えて・・・」
 佳尉に顔を覗きこまれて、真矢は熱にうかさせたように答えた。
「熱いよ・・・胸が・・・・」
 真矢の言葉に見ると乳首がツンと尖っていた。
「ホントだ・・・乳首がいやらしく勃ってるね・・・どうして欲しい?」
 言葉で弄ると股間のモノも反応して鎌首を擡げてきた。
「あれ、触ってもいないのにココも熱くなってきた? ホントに淫らな身体になっちゃったよね、センパイ」
「・・・ごめん・・・なさい・・・」
 からかうように言われて、真矢は恥ずかしくて消えてなくなりたいと思った。