「話は後で。まずは真矢を感じさせて」
佳尉はドアを閉めるなり、靴を脱ぐ間もなしに真矢の口唇を貪った。
「ん・・・んんっ・・・・」
吐息ごと奪われるようなくちづけに、真矢は佳尉の背中にしがみついて、崩れ落ちそうになる身体を支えた。
「今すぐ欲しい・・・・」
情熱的にささやかれたと思った瞬間、真矢の身体は宙に浮いていた。
「か・・佳尉?」
「もう、一瞬たりとも我慢できねぇよ」
お姫さま抱っこで寝室まで運ばれて、投げ出すようにベッドに下ろされ、そのまま押し倒された。
「愛してる・・・真矢・・・」
真顔で告げられて、真矢は奮えが止まらなくなった。
「佳尉・・・僕も・・・僕も・・・」
愛してるという言葉は佳尉の口唇に吸い取られてしまった。毟り取られるように衣服を剥がれ、一糸纏わぬ姿になった真矢を佳尉は上から見下ろした。
「俺のだ・・・」
確かめるように胸に手を這わせ、佳尉は真矢を高めるために愛撫を始めた。
「佳尉・・・佳尉・・・」
真矢は佳尉に縋りついた。涙が溢れて佳尉の顔がぼやけた。
「あぁっ・・・」
佳尉の手であっという間に達かされて、真矢の身体から力が抜けた。佳尉は真矢をうつ伏せにすると腰だけを引き上げて、双丘の奥の蕾を綻ばせようと口唇を寄せた。
「あっ・・・ダメ・・汚いからっ!」
佳尉が何をしているのか気付いた真矢は身を捩って抵抗した。
「ダメ! 真矢の全てが俺のモンだと確認したいんだから、抵抗しないでくれ」
敏感な粘膜で佳尉の吐息を感じて、真矢は眩暈を感じた。
「ん・・・ぅ・・・・」
口唇を噛み締めて声を押し殺そうとする真矢に、佳尉は愛撫の手を止めた。
「そんなに口唇噛んでると切れちゃうだろ? 俺しか聞いてないんだから、声上げて真矢の気持ちいいトコ教えてよ」
「だって・・・」
真っ赤になって真矢は目を逸らした。
「だって、ナニ?」
珍しく食い下がった佳尉に、真矢は泣きそうになりながら気持ちを伝えた。
「だって・・・女のコみたいに声上げたりして、みっともないとこ見られたりして、佳尉に呆れられたくないから・・・」
「はぁ?」
拍子抜けして、まぬけな声を上げてしまった佳尉に、真矢はやっぱり呆れられたのだと、悲しくなった。涙目になった真矢を抱き締めて、佳尉は笑い飛ばした。
「バッカだなぁ。そんなことで呆れたりするもんか。俺は、真矢がセックスするのがイヤなのに、我慢して俺につきあってくれてるから、口唇噛み締めて堪えてるんだと思ってたんだぜ」
「えっ?」
「男なのに抱かれてるのが屈辱なのかなとか、いろいろ考えて俺も悩んでたんだからな」
佳尉の思いがけない言葉に、真矢は驚いた。
「沙菜さんから聞いたけど、俺がお情けで真矢と一緒に暮らしてたと思ってたんだって?」
真矢が頷くと、佳尉は苦笑した。
「なんで真矢がそんな勘違いしたのかわかんないけど、俺はそんなボランティア精神が旺盛じゃないぜ。真矢が好きだから、一緒にいたいから、だから一緒に暮らそうって言ったんだ」
「佳尉・・・・」
「俺達、言葉が足りなかったよな。お互いに・・・・」
「佳尉・・・・」
「これからはいろいろ話し合おうぜ。一人で胸に溜め込んでしまわないで、思ってることはちゃんと言おうな」
「うん・・・・うん・・・・」
涙が溢れて言葉にならない真矢を抱き締めて、佳尉はようやく恋人との間の見えない壁がなくなったことを感じた。