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「ゆっくり息を吐いて力を抜いて・・・でないと、俺が入れないよ」
 真矢が言われたとおりにすると、佳尉は一度指を引きぬき、今度は中指も添えてゆっくりと挿入した。
「ぅ・・・・」
 感じる異物感は相当なものだっだ。本来は出すところで入れることはないのだから。でも、真矢は声を押し殺して耐えた。
 佳尉の指が真矢の内部を探るようにバラバラに動き出した。蕾を広げたり、奥深くの快感の根を探ろうと、傍若無人に動き回った。
「湯島くん・・・湯島くん・・・・」
 恥ずかしくて、辞めてほしくて、真矢は名前を呼んだが佳尉は無視して続けた。
「違うだろ? 佳尉、って呼ばなきゃお仕置きするぞ」
 そして、3本の指を捻じ込むと、ゆっくりと抽挿を始めた。
「痛くないだろ? ゆっくり馴らしてるから、大分ほぐれてきたよ」
 恥ずかしくて、どうしたらいいのかわからなくて、ただひたすら口唇を噛み締めて耐えている真矢の蕾から指を抜き去ると、佳尉はポケットから避妊具を取り出してパッケージを破った。
 慣れた手つきで装着すると、閉じかけている蕾にあてがって、腰を進めた。
「あぅっ!」
 想像以上の衝撃に、真矢の意識は遠のきかけたが、佳尉が後ろから優しく抱き締めてくれたので、身体を委ねた。
「キツ・・・すげえ、イイ・・・」
 佳尉の声が欲望に掠れている。自分との行為で感じてくれているのだと思うと、真矢は身体を引き裂くような痛みにも耐えられると思った。
「ねぇ・・・動いてもイイ?」
 真矢が頷くと、佳尉はゆっくりと抽挿を始めた。獣のようなポーズだが、これが一番真矢への負担が少ない。初めてなので痛いのは仕方ないけど、できる限り感じさせてやりたいと思った。
「センパイ・・・どう? 少しはイイって感じる?」
 ゆっくりとした抽挿を続けながら、佳尉は空いた手を真矢自身と胸の粒に伸ばした。
「ホラ・・・ココなら感じるだろ? 今日は痛いだけかも知れないけど、スグにお尻でも感じるようにしてあげるからね」
 真矢は早く開放して欲しくて、ただ無我夢中で頷いていた。


 真矢の意識が浮上してうっすら目を開けると、佳尉が隣に眠っていた。慌てて飛び起きようとしたが、あらぬところから激痛が走って、再びシーツの波間に沈んだ。
「ん・・・気がついた?」
 佳尉が肩肘をついて起きあがる。何もまとっていない上半身は、彫像のようにきれいな筋肉に覆われていて、真矢は羨ましいと思った。
「身体・・・大丈夫? 初めてなのに無理させちゃったかなー?」
 佳尉の言葉に、何をしていたのかを思い出して、真矢は全身を朱に染めて背を向けた。
「そんなに照れないでイイからさー。こっち向いてくんない?」
 泣き出しそうな顔で真矢が振り返ると、佳尉は口唇にキスを落とした。
「俺達、もうつきあってるんだぜ。だからセックスするのは当たり前だろ?」
「え・・? だって、湯島くんには彼女がいるんじゃ・・・?」
 真矢の言葉に佳尉は目を丸くした。
「湯島くんじゃない、佳尉だろ? それに今頃何言ってんだよ? 俺、ちゃんとアイツとは別れたぞ。さっき電話するのを聞いてたクセに・・・・」
「ウソ・・・?」
「ウソなんかつかねーよ。セージツがモットーなんだぜ、俺。二股なんてかけたりしねーよ」
 自分の所為で、一人の女のコを不幸にしてしまったと、真矢は愕然となった。
「だって・・・そんな・・・・その人の気持ちは?」
 自分が別れを告げられたような顔で真矢が言うので、佳尉は驚いた。
「じゃあ、ナニ? センパイは彼女のタメに身を引くって言うの?」
「僕は・・・」
 そこから何も言えなくなって顔を伏せた真矢を抱き締めると、佳尉は髪を撫でた。
「優しーんだな。でも、心配いらねーよ。彼女とは身体だけの割り切った付き合いだったから。センパイが気にすることないんだ」
「ゆし・・・佳尉・・・」
 佳尉が自分のことを気遣ってくれるのが嬉しくて、真矢は泣きそうになった。いつか佳尉に飽きられるまで、それまででいいから側にいさせて欲しいと神に祈った。