「年寄りって何だよ。俺5月に16になったとこだぜ。お前だってタメじゃねーか」
「俺は早生まれで、誕生日は4月1日だ。お前が既に16になってるなら、俺とはほぼ1年の差があるのさ」
「ぷっ・・・エイプリルフール・・・ひねくれた日に生まれやがって・・・」
「悪かったな・・・そういうお前は5月5日の子どもの日が誕生日だろう・・・どうせ」
「なんでわかったんだ!?」
やっぱり・・・・
「泣き虫のクセに・・・」
「傷害罪で訴えてもいいんだ・・・」
「うっっっっっ」
ボソっと呟いた俺に、亜南はテーブルにつっ伏した。
「悪魔・・・」
最後に小さく呟いたのを俺は聞き逃さなかった。後頭部にゴンッとゲンコツを食らわせてやった。
「い〜おりっ! 元気になったか?」
週明け、校門をくぐったところで亜南が背中に飛びついてきて、俺は悲鳴を上げそうになった。
「まだあちこち痛むんだ。俺に触るなっ!」
結局、土曜日は亜南の家に泊まる羽目になってしまった。兄貴に電話したら、真純さんを泊めてイチャイチャできると歓迎されてしまった。
まぁ、あの二人はもうすぐ結婚するんだから、いいんだけど。
日曜日の朝は亜南の腹の虫に叩き起こされて、作りそびれていた八宝菜を作っていたら、思いの他早くトラブルが解決したとかで河本父が帰ってきて、キッチンで間抜けな初対面を果した。
八宝菜は気に入ってもらえたようで、破格のバイト料をもらって、俺は恐縮してしまった。
亜里の怪我も俺の所為じゃないって言ってもらえて、これからも二人をよろしくと、握手もされてしまった。
午後から、一家で入院中のお母さんのお見舞いに行くので是非紹介させてくれと頼まれたが、体調不良を理由に辞退して軋む身体にムチ打って、早々に帰宅したのだった。
「ごめんな・・・今度はもっと上手くやるからさ・・・・」
耳許で囁かれて、俺の肌は粟だった。
「バッ・・バカかっ!? お前はっ。そんなことを学校で言うなっ! 今度なんて、永遠にないわっ!」
みぞおちに手加減した肘鉄を食らわせて、俺は校庭に沈んだ亜南を置き去りに、校舎に向かった。
信じられない・・・今度だって?
自分でも赤面してるのがわかる。多分誰にも話の内容は聞かれていないだろうけど、まんま痴話ゲンカだよな・・・・
でもこんな風にジャレてるのも嬉しくて、俺って意外と単純だったんだなと思い知らされる。
嫉妬深かったり、単純に嬉しがったり、今まで冷静沈着をモットーにしてた俺にこんな一面があったと気付かせた張本人はいつもマイペースで、愛しい反面ちょっと憎らしくもある。