「冷麺は?」
亜里はムクレている。
「何でイオ兄ちゃん寝てるの? さっきは元気だったのに」
「テ・・テスト疲れが出たんだ・・・そうそう、伊織は優等生だから勉強のし過ぎなんだよ・・・きっと・・・」
俺のしどろもどろの弁解に、亜里は怪訝そうな顔をしていたが、一応は納得したようだ。
「明日からはきっと元気になるから、今日のところは寝かせておいてやろうぜ」
「うん・・・」
それにしても、俺のやり方がマズイんだろうか? ヤる度に失神しちまうってのは・・・でも、伊織は空手をやってるんだから決して身体が弱いって訳じゃないし・・・・とすると・・・
悶絶失神ってヤツかっ!?
じゃあ・・・じゃあ、俺って、テクニシャンってことか?
自分の考えにニヤニヤしていたらしい。亜里が思い切り不信そうな視線を投げかけてきた。
「本当は兄ちゃんがナニかしたんじゃないの?」
ドキィッッッッッッッッ!!!
「し・・・してないっ! ナニもしてないぞ! 俺はっ!」
「兄ちゃん・・・怪しい・・・・」
「断じて俺は無実だっ!」
「あっそ・・・どうでもイイけど、僕おなかぺこぺこなんだよね。早くほか弁でも買ってきてよね」
亜里に睨まれて、俺は渋々コンビニに出かけた。
全く、兄を兄とも思っていないんだから・・・・
コンビニで弁当を五つとデザートにアイスなんかも買って戻ると、亜里の泣き声が聞こえてきた。
「どうしたんだっ!? 亜里」
慌てて2階へ駆けあがると、伊織はまだ寝ていたが、かけてあったタオルケットがずれていて、裸の胸があらわになっていた。
「イオ兄ちゃん、病気だったんだ・・・・こんなのが身体一杯にできてるんだもん・・・・」
メソメソ泣きながら亜里が指差したのは、先ほど俺がつけまくったキスマークだったんだ。
「こ・・・・これはアザ! そう、空手の稽古でできたアザだ。昇段試験があるって言ってたから・・・・」
「ホント?」
「ホントホント。だから、もう少し寝かせておいてやろうな」
タオルケットをかけ直して部屋を出ようと振り向いたら、親父が仁王立ちしていたので、ビックリした。
「うわあっ!」
「あっ、父ちゃん」
「アザだぁ?」
「そそそそそそそそそ。そうだよ、多分」
俺の声は裏返っていた。嘘をついているのはバレバレだ。
「無理強いしたんじゃないだろうな?」
「し・・・してないしてないっ! 俺達は相思相愛なんだからっ!」
「んー?」
亜里は何のことかわからず、キョトンとしている。
俺が必死に言い訳していると、伊織が目を覚ました。
「あっ、イオ兄ちゃん。大丈夫?」
「亜里・・・?」
のろのろと起きあがろうとする伊織に、亜里が手をかした。
「!?」
あっ、パンツを履かせるのを忘れてたっ!
部屋にいた全員が真っ赤になって、目を泳がせた。