「ただいま・・」
 約束通りに史朗は残業なしで戻ってきたらしい。手にはコンビニ袋を持っていたが、パンパンに膨らんでいるその中身は、全部チョコボールだった。
「うわ・・・スゴイ・・・コレってもしかして、店のチョコボール全部買占めてきたとかっすか?」
 目を丸くする元気に史朗は顔を赤くしながら頷いた。
「之の好物だから・・・よかったら君達もどうぞ」
「もう・・いつまでもあんな昔のこと覚えてないでよ・・・」
 頬を膨らませてブツブツ文句を言いながらも、之は早速口に放り込んでいた。

「なんか、史朗さんって開き直ったらめちゃくちゃユキに甘くなっちゃったな」
 チョコボールを一箱ずつもらって茜の家に戻ると、元気はボソッとつぶやいた。
「そうね・・・もっとクールな人かなと思ってたけど、死にそうなユキの姿見ちゃったら甘くなるのは仕方ないかもね・・・」
 茜がくすくす笑いながら言った。
「結局、惚れたモノ勝ちだったんだよな。ユキの粘り勝ち」
 自分は茜に対して『惚れたモノが負け』だと思っている元気は、更にブツブツつぶやいた。
「あら、元気はあたしに負けるのはイヤなの?」
 茜に首筋に腕を回して抱きつかれて、元気はフルフルと首を振った。
「とんでもない。最初からお手上げです。茜姫」
 元気は茜の腰に手を回すとさくらんぼのような口唇にキスを落とした。
「ちょっ・・元気・・ご飯の仕度しなきゃ・・」
「先に茜を食いたい・・」
 強引に愛を確かめ合おうとする元気に、茜はお手上げだと身を任せた。

 茜が用意してくれた夕食を平らげると、之はまたチョコボールを口に放り込んだ。
「一度に全部食っちまう気か?」
「だって、リゾットなんて、あんまり腹が膨れないんだもん・・・」
 史朗に内臓を掻き回されてる上に、あらぬ場所に裂傷を負ってしまった之の身体を気遣った茜は、消化の良い物がいいと、きのこのリゾットを用意したのだが、少々物足りなかった。
「一人で食ってないで俺にも寄越せよ」
 史朗は、之が座るソファの隣に滑り込んだ。
「はい」
 之が差し出したチョコボールを3つほど口に放り込んだ史朗は、之の肩を抱き寄せると顔を近づけていった。
「そんなに食いたけりゃ、俺が食わせてやる」
 そう言うとおもむろに口唇を重ねて、溶けかかったチョコボールを舌で之の口内に押し込んだ。
「んんっ・・」
 ドロドロになったチョコボールが二人の舌の上で行ったりきたりするうちに、全部溶けると、中身のピーナッツだけが残った。
「し・・しろちゃ・・」
 チョコレートだけで酔ったように頬を上気させた之をそのままソファに押し倒すと、史朗は再び口唇を重ねた。
「いっ・・痛い・・」
 身体を動かす度に軋む筋肉が之に悲鳴を上げさせた。史朗はバツが悪そうな顔で、之の上から身体を起こした。
「悪い・・・」
「やめないで・・」
 之は史朗の背中に腕を回した。
「でも・・・」
「お尻が痛いのは史朗ちゃんのが大きかったせいだけど、筋肉痛なのは僕がやわだったからで・・・」
 真っ赤になっている之の言葉に、史朗は目を瞠った。
「だから、今日は挿れるのはヤだけど・・抱っこはしてもらいたいな・・・って・・・」
「之・・」
 史朗は之の身体を抱き起こすと自分の胸に抱え込んだ。

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