12

「じゃあ・・・おいで・・」
 健悟が俺に手を差し伸べた。俺はなんだか初めてベッドに誘われたあの時のように、ドキドキしながら健悟の指先に触れた。
 すると、健悟は俺の指先を握り締めてひざまづいた。
「え・・?」
「和夏・・・お前の髪はこれからずっと、俺だけにカットさせてくれないか・・」
「え・・・それは、まぁ・・・カリスマ美容師サマがやってくれるってなら、ありがたいけど・・・」
 専門学校時代から、ずっと健悟にしかカットしてもらっていないのに、なんで今更こんなことを言われるのかわからなかったが、俺は戸惑いながらも頷いた。
「意味が違う・・って違わなくないけど、お前の髪は俺以外のヤツに触らせたくないんだ。つまり、その、俺と一緒になってくれって言ってるんだけど・・・」
 こ、これは・・今流行りの「ひざまづいてのプロポーズ」というヤツか?
 顔に血が上ってくるのがわかる。場所が俺のアパートのキッチンというのもなんだかマヌケな話だけど、昨日今日と、想定外のできごとが立て続けに起こるので、俺の思考回路はショート寸前になっていた。
「和夏・・返事をくれないのか?」
 不安そうな顔で健悟は俺を見上げている。俺は同じように膝をついて、健悟と目線を合わせた。
「俺でいいのか?」
 反対に問うと、健悟は握り締めている俺の手の甲にうやうやしく口唇を押し当てた。
「お前じゃなきゃイヤだ。一緒に暮らして欲しい。二人で幸せになりたいんだ・・・」
 俺はうなずきながらも、親兄弟にどう言えばいいだろうと、頭の端をチラッとよぎった。
 しかし。それは明日以降に考えればいいか。取り敢えず今は抱き合いたい。俺は健悟と縺れ合うようにベッドに転がり込んだ。



「和夏・・・俺・・何か余裕ねぇや・・」
 服を脱ぐ手が震えている。初めて和夏を抱いた時もこんな感じで、結果的に和夏をひどく傷つけてしまったことを思い出した。
「俺だって・・・こんな朝っぱらから、なんかヘンだ・・・・」
 和夏もなんだか不安そうな、でも欲望に潤んだ目で俺を見つめている。
「お互い様ということで、イイよな・・・・」
 俺は理性がブッ飛んでしまって、うなずく和夏に覆い被さっていった。

「あ・・イヤだ・・・ソコ・・・」
 つんと尖った乳首ばかり攻めると、和夏は口では嫌がるけど、胸を突き出すような仕草をする。
「ウソつけ。身体は嫌がってないじゃないか」
 言葉で辱めると、和夏は恥ずかしい気持ちと感じる身体のギャップについていけずに、段々と乱れだす。
「イヤなのにこんなになってるのか?」
 乳首以上に硬くなっている中心に触れてやると、和夏は電気に触れたかのように身体を弾ませた。
「あぁっ・・健悟ぉ・・」
 欲望に掠れた声で名前を呼ばれるのが好きだ。俺はもっと呼んでもらいたくて、和夏の快感を暴きはじめた。
「畜生・・・ズルイぞ・・・」
 和夏は今にも弾けそうになっていたくせに、身体を起こすと69の体勢になって、俺の股間に顔を埋めた。
「うっ・・」
 いきなり怒張を咥えられて、危うく暴発しそうになったが、俺も負けじと和夏に舌を這わせていった。
 お互いを愛撫するいやらしい音がピチャピチャと部屋に響いている。
 どうしてこんなに愛しいのに逢わずに我慢できたのか、今となっては思い出せない。
「健悟ぉ・・もぅ・・」
 和夏の腰がブルブル震えだした。俺の口の中で弾けそうになっているのを根元で戒めて、双丘のスリットに指を滑らせた。
「やっ・・・」
 奥の蕾は硬く慎ましやかに閉じているのに、襞を撫でてやると、ヒクヒクと俺の指を引き込もうかとするように蠢いた。
「すげ・・俺の指飲み込まれそう・・・っわっ!」
 焦らされた和夏は意趣返しにオレに歯を立ててきたのだ。
「俺が悪かった。指より大事なモノ、食い千切らないでくれ」
 俺は心から謝罪していることを表すために、意地悪せずに和夏を解放へ導いた。
「んっ・・・」
 和夏が小さくうめいて俺の口の中に蜜を放ってすぐ、俺も和夏の喉の奥に熱い想いを叩きつけた。