5

「ヒデ・・・俺は・・・」
 自分の気持ちをどう伝えたらいいのかわからずに、飛雄は口唇を噛んだ。
「言ってくれなきゃわからない。飛雄・・・何を考えてる?」
 そっと頬に触れられて、飛雄は電流でも流されたかのように身体を震わせた。
「ヒデ・・・」
 こんな風に触れられたら、もう我慢なんてできない。飛雄は力いっぱい秀悟を抱き締めた。
「ひ・・飛雄っ!?」
 いつもいつも、帰り際に壊れ物でも扱うようにそっと抱き締めるだけで、キスもしてこないので、プラトニックな関係を望んでいるのだろうと思っていたのに、いきなり渾身の力で抱きすくめられて、秀悟は驚いた。
「俺・・どうしたらいい? ホントに好きなんだ・・・ヒデ・・キスしたいよ・・抱きたいよ・・・」
 まるで泣いているかのように飛雄の声が震えている。秀悟はこんなときに不謹慎だとは思ったが、思わず笑ってしまった。
「飛雄のしたいようにすればいい。俺は聖人君子じゃないよ」
 腰に当たる飛雄は硬く張り詰めていた。飼い主は、甘えたがっている仔犬の手を引いてベッドルームにいざなった。


 部屋の真ん中にクイーンサイズのベッドが鎮座している。飛雄は目を丸くした。
「一人暮らしなのにこんな大きなベッドって、恋人と寝るため?」
 疑問はもっともだったが、秀悟は笑って否定した。
「俺、寝相が最悪なの。朝起きると大抵上下さかさまになってる。だからフツーのシングルベッドじゃ、墜落するんだ」
「うっそだろぉ?」
 笑い話に飛雄の緊張が解けた。秀悟を抱き寄せるとそっと口唇を重ねた。
「ひゆ・・ぅ・・・」
 初めての口づけに、秀悟はうっとりと目を閉じた。おずおずと飛雄の舌が忍び込んでくる。物慣れない感じが初々しくて、ついいたずら心が起きた。反対に絡め取って吸い上げてやると、驚いた飛雄は目をパッチリと開けて硬直してしまった。
「ひひひひひひ、ヒデっ!」
 主導権を握られた飛雄はすっかりうろたえて、泣き出しそうな顔になっている。
「いつベッドに誘われてもいいように、毎日シーツ換えて待ってたのに、飛雄ったらキスもしてくれないから、プラトニックな関係がいいのかと思ってたよ」
 引き攣る飛雄の頬をねちっこく撫でながら、秀悟は身体を摺り寄せた。
「おおおおお、俺は、どうしたらいいか、わ・・わからなかったから・・・・」
 しどろもどろになっている飛雄が可愛い。秀悟は熱くなっている下半身を飛雄の太ももに押し当てた。
「ほら・・・もうこんなになってるんだ・・・恋人なら責任とってくれるだろ?」
 そう挑発した途端、秀悟の視界はいきなりグルッと回転した。背中からベッドに押し倒されて飛雄が圧し掛かってくると、口唇の端に笑みを浮かべた。
「飛雄・・・」
 甘い声で名前を呼ばれて理性がブッチリとキレてしまった飛雄は、引きちぎる勢いで秀悟のエメラルドグリーンのシルクのシャツを毟り取ると、あらわになった首筋にさながらヴァンパイアのように食らいついた。

「あっ・・ひゆ・・焦るな」
 無我夢中で秀悟の肌を貪っている飛雄に、秀悟は胸を押しやって抵抗した。
「引き出しに・・ローションがあるから・・・」
 秀悟もいろいろ調べて、必要そうなアイテムをゲットしておいた。
「こ・・こ・・これって・・・」
 ネットで見たようなグッズが引き出しから出てきて、飛雄は目を白黒させた。
「好きなように使ってイイから・・・・」
 秀悟が言うと、飛雄はローションのボトルを手にした。
「これを使ってヒデのココをほぐせばいいんだな・・」
 大体どうすればいいのか、既にいろいろ調べつくしている。飛雄はキャップを開けると、中身をうつぶせにした秀悟の双丘の狭間に垂らした。
「やっ・・・冷たいっ」
 秀悟が身を捩って逃れようとするのを押さえつけて、飛雄は蕾に指を挿しいれた。