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「殴ったりしてゴメン・・・少し赤くなってる・・・」
 湊が少し腫れている頬に手を当てると、綾は舌をペロッと出した。
「大丈夫だよ。コレくらい・・・・それより、お揃いみたいでなんか恥ずかしいや・・・」
 照れて、ヘヘッと笑う綾が愛しくて、湊の腕の力はまた一段と強くなった。
「綾・・・僕の部屋で続きをしたい・・・ダメか?」
「続き・・・?」
 キョトンと見上げる綾に、湊は欲望に掠れた声でささやいた。
「綾を抱きたい・・・」
「だ・・・ダメっ! そんなの・・・俺達まだ高校生じゃん・・・・」
 綾の脳裏には、先日図らずも見てしまった一朗と和七のソレがフラッシュバックしてた。
「みんなやってることだよ」
「し・・・知ってる・・・・でも、俺・・・・」
 怯えて震え出した綾を、湊は宥めるように撫でた。
「怖がらないで・・・・今度は優しくするから・・・」
「でも・・・・」
「約束するから・・・綾・・・・好きだよ・・・」


 決して同意した訳ではないのに、湊の部屋に連れて来られて、綾は困惑していた。
 学校でシャワーを済ませていた綾を一人残し、湊はシャワーを浴びに行ってしまった。
「黙って帰ったりしたら、先輩怒るかな? どうしよう・・・・」
 綾が帰ろうかどうしようかとぐずぐず迷っている間に、湊はバスローブを纏って出てきてしまった。
「綾・・・?」
 泣き出しそうな顔で振り返った綾だったが、湊の姿を見て驚いたように目を瞠った。
「わぁー、ドラマみたいだ。コレってバスローブだよね? 初めて実物を見た」
 つい今しがたまで、ドナドナの仔牛の様な心境で悲愴な顔をしていたことも忘れて、綾は生まれて初めて見るバスローブを触っていた。
「着てみるかい? たくさんあるから」
「えっ、いいの?」
 うれしそうに目を輝かせる綾から、すっかり緊張がとれていて湊はホッとした。ここに連れてくる間ずっと強張った表情で口数も少なくなっていたので、どうやったらリラックスさせられるか、シャワーを浴びながら思い悩んでいたのだ。
「俺んち、ただバスタオルを巻きつけるだけだからさ、こんなの一度でいいから着てみたかったんだ」
 子どもみたいにはしゃぐ綾に、湊を目を細めた。
「下着は全部脱ぐんだよ」
「えっ!? パ・・・パンツも?」
「もちろん、パンツもだよ」
 綾の為にバスローブを出してやりながら、湊は苦笑していた。さて、どうやって漫才になってしまったムードをラブモードに変換できるかと。
「や・・・やっぱり、俺やめとく。だ・・だってさ、こんなのはやっぱ、俺みたいなチビには似合わねーし。先輩みたいにカッコいい人が着るからサマになるんだよな」
 ウンウンと一人で納得している綾が無性に愛しくて、湊は「おいで」と手招きしたが、ブンブンと首を振ってイヤがられて、ドーンと落ち込んでしまった。
「イヤなの?」
「だって・・・・俺、心の準備ができてないし・・・」
「じゃあ、イツならいいのかな?」
 少しムッとして詰め寄った湊に、綾はギュッと目をつぶって首を竦めた。
「せ・・・先輩の誕生日ならっ!」
 思わず口走った答えに、綾は我ながらナイスだと自分で自分を褒めた。湊の誕生日がいつなのかは知らなかったが。
 恐る恐る目を開けると、湊はなんとも複雑な表情をしているので『まさか今日とか言う?』と青くなった。
「僕の誕生日は11月11日。ちなみに先月だったんだけど、これから1年近くお預け食らわなきゃならないのかい?」
「えっ・・・・それは、その・・・」
 モゴモゴと口篭もって俯いた綾に、湊は提案した。
「じゃあ、明後日のクリスマスイブは? 昼からデートして、僕の部屋で一晩過ごす。いいね?」
 反論できずに、綾は渋々同意させられた。