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「りょ・・・う・・・・僕はちゃんとしてるんだけど・・・・」
「えぇっ!? あんなのがそうなのっ!?」
 怖がらせないようにこれ以上ないくらい優しくしたはずの愛撫を、『あんなの』と言われて湊の全身から力が抜けた。
「そうだよ・・・・」
「そ・・・そうなのか・・・最初はくすぐるのか・・・・」
 一人で勘違いして、納得してブツブツ言っている綾に、湊はおずおずと声をかけた。
「わかったなら続きをしてもいいかな?」
「う・・うんっ!」
 覚悟を決めて力強く頷いた綾を再びシーツに沈めて、湊は吐息だけで囁いた。
「目を閉じて・・・・僕を感じて・・・・」
 そして、綾の首筋に口唇を這わせると、朱の花びらを散らしていった。
 もう綾は笑い出すことはなかった。そのかわり、時折堪え切れずに漏れる吐息には濡れたように艶を帯びていた。
「う・・・・ぁ・・・」
 さっきまではくすぐられてるのだとしか感じなかった湊の手の動きが、どんどんと綾の無垢な身体を拓いて火をつけていく。
 自分でするのとは段違いに気持ちイイのは確かだったが、未知の世界に引き摺られて行くような気がして、急に恐ろしくなってきた。
「ヤだっ! 先輩、怖いよっ!」
 堪え切れずに悲鳴を上げた綾の顔を覗きこんで、湊は安心させるように微笑んだ。
「大丈夫だよ・・・何も怖いことはしないから・・・綾はただ、気持ちよかったら声を出して僕にそれを教えてくれるだけでいいんだ」
「こ・・声・・・?」
 目尻に涙を浮かべて、奮える声で綾は湊を見上げた。
「そう・・・・綾が感じるポイントを恥ずかしがらずに教えるんだよ。いいね?」
 怖がる子どもをなだめすかして、これでは保育士のようだと、湊は思いながらも思いを遂げる為に再び行為に没頭した。


「なーにやってんだか・・・・海千山千の湊がこんなに翻弄されちゃってるなんて」
 湊の部屋の前で、いつ戻ってきたのか穂波が陸と2人で聞き耳を立てていた。
「いやぁ、でも初々しくて可愛いじゃん。誰かさんは初めての時から感じまくってイイ声で啼いてくれたからねぇ。まぁ、俺サマのテクの成せる技なんだけどな」
 ズケッと陸に言われて、穂波はカチンときた。
「あっそう・・・そういうコト言うんだ・・・・誰かさんはいたいけな中学生に手を出すようなインコー野郎だったよねぇ。まぁ、僕があまりに可憐でキュートだったから血迷っても仕方なかったけどね」
「うっっっっ・・・・」
 事実なだけに反論できなくて、陸は早速白旗を振った。でないとイブの夜に一人寝をするハメになってしまうので。
「湊なんかほっといて、俺達もベッドに行こうぜ・・・」
 チョンと口唇をついばまれて、穂波は機嫌を直して端整な顔をほころばせた。
「陸ちゃん・・・」
「今夜は寝かさないからな・・・・覚悟しろよ・・・」


「せ・・先輩っ! やだっ・・あぁぁっ!」
 湊の手の中で果てた綾は、意識が半分飛んでいた。自分で慰めるよりも遥かに凄まじい快感に、和七の言ってたことは本当だったんだと、好きな人とするセックスってイイもんなんだなと、ぼんやりした頭で思っていた。
「湊だよ。綾・・・・先輩じゃなくて湊って呼んで・・・」
「みな・・と・・・・すっげぇヨかった・・・」
 潤んだ目を向けて口元を綻ばせた綾を抱き締めて、湊は続きにかかった。
「綾が気持ちよくなることだけを考えてるからね。イッちゃって力が入らないでしょ。そのまま脱力してるんだよ」
 そう言いながら湊は陸の部屋から失敬してきたジェルを綾の秘所に塗り込めた。そのまま人差し指を滑り込ませると、熱く絡みつく粘膜をかき回した。
「?」
 力が抜け切っていたためスムーズに挿入された指は、綾に痛みを感じさせなかったので、始めはナニをされているのか、惚けた綾には理解できなかったようだ。
「ひっ・・!?」
 湊の指が綾の感じるポイントを探り当てた時、綾の身体はエビのようにベッドの上で跳ねた。