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「あっ・・何? ヤだ・・・あぁっ・・」
「ココなんだね。あぁ、そんなに締めつけないで・・・・指が食いちぎられそうだよ」
 堅い未熟な蕾を優しく解きほぐそうと、湊が抜き差しを始めると、綾はあられもなくよがりまくった。
「ヤ・・・あぁ・・・んっ・・・」
 ぼんやりと開かれているけれど、何も映していないだろう綾の目からはとめどなく涙が零れ落ちてはシーツに吸い取られていった。
 熱い吐息とともに吐き出される言葉は意味を成していなかった。
「綾・・・可愛いよ・・・もう我慢できない・・・僕を受け入れて・・・」
 湊は指を引き抜き綾の両足を抱えあげると、ほころびかけた蕾の中に己を沈めた。
「いっ、痛いっ!」
 信じられないような痛みを与えている湊の背中に腕を回してしがみついて、綾は子どものように泣きじゃくった。
「うわあぁぁぁぁぁぁんっ!」
 しかし、やっとのことで思いを遂げ恋人とひとつになって、その快感を全身で貪っている湊には、その悲痛な叫び声も天使の奏でる歌声にしか聞こえなかった。
 驚いたのは陸と穂波だ。
 二人でシャワーを浴びて、さあこれからという時に、湊の部屋から尋常ならぬ泣き声が聞こえてきたのだから。
「おい穂波、これって・・・」
「アヤちゃんの泣き声だよねぇ。でもヨくて啼いてるって感じじゃないけど・・・」
「俺にもただ泣き喚いてるようにしか聞こえないが・・・・」
 ギョッと顔を見合わせた二人は、湊の部屋に飛び込んだ。


 湊が綾の中に吐精して、フッと脱力したと同時に、荒々しいノックの音と共に兄カップルの乱入を受けた。
「アヤちゃん、どうしたの? 大丈夫?」
 逐情の余韻に浸る間もなく現実に引き戻された湊は、乱入してきた二人を睨みつけた。
「どういうつもりなんだ、お前ら。事と次第によっちゃ、タダじゃすまないぞ」
 ひと睨みで数人殺せそうな殺人ビームをものともせず、陸は湊の頭をはたいた。
「タダで済んでないのは、お前の恋人だろうが! ボケてんのか、テメエはっ!」
「えっ?」
 我に返った湊は、自分の身体の下で愛しい恋人がギャンギャン泣き喚いているのに気づいた
「りょ・・・綾!?」
「痛・・・・い・・・うわあぁ・・・・ん・・っく・・・ぐすっ・・・・・」
 泣き疲れて既に意識が朦朧としてる綾の様子に、湊は背筋が凍る思いをした。
「ごめんっ!」
 慌ててすっかり萎えてしまった自身を抜き取ると、綾の内部からは湊が放ったものと共にかなりの量の鮮血が流れ出してきて、3人は一様に目を瞠った。
「穂波っ! 救急箱を!」
 陸が叫ぶと穂波はスイッチが入ったように我に返って、救急箱を取りに部屋を飛び出した。湊はただオロオロするばかりで役に立ちそうになかったので。
「綾・・・綾・・どうしよう・・・・大丈夫・・・な訳ないか・・・・」
 綾の顔色は紙のように真っ白になっていた。自分の流した血を見て、ショックを起こしたらしい。
「医者になろうってヤツが患者を不安にするようなことを言うんじゃないっ! 全く、初めてのお子サマ相手にどんな無茶をしたんだ? ケダモノ。今までの経験は全部無駄だったってことだな」
 言葉を失って呆然としている、使いモノにならない湊をほっといて、陸は穂波が持って来た救急箱を開けると手早く手当てを済ませた。そして、ベッドのシーツも替えた。
「この薬を飲みなさい。少しは痛みがラクになるから・・・」
 少し顔色が戻って来た綾は、陸の差し出した錠剤を飲むと再びベッドに横になった。
『先輩が大人になったらこんな感じなのかな・・・・ホントに似てら・・・・』
 陸に優しく頭を撫でられてウトウトし始めた綾は、朦朧とした意識の中でそんなことを思っていた。