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「う〜疲れたぁ・・・・もうくたくただぁ」
「お疲れさん。ゆづちん。頑張ってくれたご褒美に、パーッと飲みに行こうぜ」
 運動会当日。弓弦は若い保育士集団だけでなく、チビっこギャング集団からもオモチャにされた。
「俺、保育士になるのやめようかなぁ。何かやってく自信ないや」
 そう言うものの、子どもたちと遊ぶのは楽しかった。完全にタメ口をきかれていたが、仲間だと思われたなら、ある意味成功と言ってよかった。
「まぁ、そう言わずに。美味いモン食ったら、そんなこと気にならなくなるって。自信つけたいなら、ちょくちょく手伝いにくればいいじゃん」
 望は何気なく言ったが、そろそろ卒論のことも考えなくてはいけない弓弦には、そういう訳にもいかない。
「まぁ、考える時間はまだあるか・・・」
 弓弦は気持ちを切り替えると、キューキュー鳴きだしたおなかの虫をなだめるために、望についていった。





「おい、ヒデ。この絶不調男をどうするつもりだ?」
 いつも講義が終わるとすぐに飛雄は駆けつける。
 社長以下、社員が二人の超零細企業なので、一人が欠けるとたちまち仕事が滞るので、一矢も毎日出てきてはいたが、相変わらずイージーミスを連発するので、はっきり言って足手まといになっていた。
「プライベートの問題を解決しないことにはダメだろうね」
 一矢の様子を見ると、一心不乱にキーボードを叩いてるかと思うと、宙を見て呆然としていたりして、心ここにあらずといった風だ。
「相手が誰かわかれば、こっちで何とかしてやれるかもしれないけど・・・」
 秀悟はお手上げだと肩をすくめた。
「これだけ弱ってると、からかう気も起きねーんだよな」
「誰か相手に心当たりないのか? 飛雄」
「あったらソイツの名前出して、からかい倒してるっての」
 ニヤッと笑う飛雄に、秀悟は脱力した。
「飛雄ならそうするな・・・」
 二人がボソボソやってる間、聞こえているのかいないのか、一矢はモニターの画面を黙って睨み付けていた。





「ほら、ゆづちん。しっかり歩けってば。寝たら捨てて行くぞぉ」
 週末は恒例のように飲みに出かけていた。望と二人だけの時もあれば、垣内が一緒の時もあった。
「捨ててっちゃやだ。おんぶしてってよぉー」
 酔った弓弦が子ども返りするので、望はいつも面白がって飲ませた。今夜も弓弦はしっかり子どもに返っていた。
「おんぶして欲しかったらどうするんだったかな? センセーが教えてあげたよね? ゆづちん」
 保育士さん仕様の望の問いに、弓弦は目を閉じて望の口唇にそっと触れるだけの可愛いキスをした。
「お願い、望。おんぶしてってぇ」
 小首をかしげて可愛くおねだりした弓弦に、望は頭を撫でてやった。
「よくできました。ほら、ちょっとだけだぞ」
 望はそう言って、弓弦に背中を向けてしゃがんだ。
「わーい。望、大好き」
 弓弦は喜んで望の背中に飛びついた。