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「ごめんなさい・・・兄様ったら、僕のことを可愛がってくれてて・・・」
「わかってるさ・・・・」
 しょんぼり項垂れる恵史を抱き寄せると、裕はそばかすの上にキスを落とした。
「あ・・・・裕先ぱ・・・い・・・」
「違うだろ? ほら、恵史・・・ちゃんと呼べって・・・」
 恵史の鼻を人差し指でつついて、正しい答えを促す。
「だって・・学校でも裕って呼んでしまいそうで・・・僕・・・・」
「別にいいだろ? 恋人同士なんだから・・・」
 裕の言葉に、朱で掃いたように真赤になった恵史は、裕の胸に顔を埋めると、消え入るような声で恋人の名を呼んだ。
「ゆた・・・か・・・・」
「恵史・・・抱きたい・・・いいか?」
 恵史はコクンと頷くと部屋の鍵をかけて、裕をベッドにいざなった。


 シャツのボタンを大きな手で器用に外して、恵史の白い肌をあらわにすると、裕は所有の刻印を施す為に口唇を寄せた。
「やっ・・・あ・・・」
 二つ、三つとバラの花びらのような印が首筋に、胸にと浮かぶたびに恵史の身体はベッドの上で跳ねた。
 女のコの柔らかい身体とは全然違うのに、こんなにも恵史が愛しく思えるなんて、しかも、欲情までしてしまうなんて、以前の裕には考えられないことだった。
「恵史・・俺、今までつきあってた女って、本気じゃなかったんだって思ったよ・・・お前を避けてた間、ずっとお前のこと考えてた・・・本気で好きになってこんなに切ない思いをしたのは、生まれて初めてだった・・・」
 裕が恵史の耳朶を愛撫するように囁くと、恵史はうっとりと目を閉じて、身体を震わせた。
「ゆ・・たか・・・僕も・・僕も今までに大きな人をたくさん見たけど、こんなに・・・夜も眠れなくなるほど想った人は、裕だけだった・・・何故かはわからない・・・けど、初めて逢った瞬間に・・・僕は恋に落ちたんだ・・今ならはっきりわかる。裕じゃなきゃ、ダメだったんだ・・・・」
 閉じていた目を開くと、恵史の頬を一筋の涙が滑り落ちた。裕はそれを口唇で吸い取ると、優しく抱き締めた。恵史も両腕を裕の背中にまわした。
「ホント細いよな・・・抱いたら壊しちまいそうだ・・・」
「大丈夫・・・乱暴にしても、壊れなかったでしょう?」
「うっ!?」
 一度レイプしてしまっている裕には、痛恨の一撃だった。
「あっ・・・僕、そんなつもりで言ったんじゃないです・・・ごめんなさい」
 ペロッと舌を出して首を竦めた恵史は、無邪気に笑った。
「こいつぅ、俺が気にしてることを・・・」
 裕は恵史を押さえつけると、脇腹をくすぐりだした。
「キャーっ! あはははははっ! やめてーっ!」
 必死で逃れようとするものの、体格の差がモノを言って、裕はビクともしない。恵史は涙を流しながら笑い続けた。
「もう言わないか?」
「言わないっ! あはははははっ! 言わないから、やめてっ!」
「いいコだ」
 解放された恵史は、荒い息をついて恨めし気に裕を見上げた。きめ細かい白い肌は上気して、うっすらとピンクに染まっていた。ベッドの上に力なく投げ出された身体に、裕の理性は焼き切れた。
 一瞬にしてケダモノモードになって、恵史に覆い被さり口唇を重ねた。おずおずと、物慣れない様子ではあったが、恵史の舌が差し出されて裕に絡みつく。それを軽く噛んでやると、ピクンと身体が跳ねた。