16

「感度良好だな・・・」
 口唇を触れ合わせたままで囁いてやる。
「コッチはどうかな??」
 言いながら、胸の突起を指で弾く。
「きゃんっ」
 堅く尖ってくるそこに、口唇を滑らせてペロッとなめると、恵史の身体が強張った。
「大丈夫・・・もう酷いことはしないから・・・」
 宥めるように、大きな手のひらで撫でてやると、恵史は覚悟を決めたように、全身の力を抜いて、目を閉じた。


「もうヤだっ・・・酷いことしないって・・・・言ったクセに・・・願・・・い・・・達かせて・・・」
 もうどれくらいの時間弄られているだろうか。恵史は一度も達かせてもらえずにいた。頂点が見えてくると意地悪くはぐらかされて、昇りつめたマグマの行き場を見失う。そんなことを繰り返されて、とうとう泣き出してしまった。
 裕自身もまだ一度も達くことなく、恵史を穿ったままだった。恵史が恥ずかしがって逃げ出そうとするのを押さえつけ、舌で唾液を塗り込んでは、指で時間をかけて綻ばせた蕾に、自身を打ち込んだ時には危うく暴発するところだったけど、経験者の余裕で恵史に快感を与え続けていた。
「恵史・・・一緒に達こうか・・?」
 耳許で囁くと恵史はガクガクと首を振って頷いた。快感に堪えている涙に濡れた顔に見惚れながら、裕はフィニッシュに向けて激しく腰を使った。


「裕のイジワル・・・」
 情事の後の気だるさをまとったまま裕に抱かれながら、恵史は頬を膨らませた。
 しかし、潤んだ目で睨まれても逆効果にしかならない。裕は第2ラウンドへ向けてのゴングとして、熟れた果実のように色づいた口唇に、キスを落とした。
 恵史は抵抗もせずに、段々と深くなっていくくちづけに応えた。
「ココが空っぽになって、ナニも出なくなるまで、可愛がってやるからな」
 裕は淡い茂みに覆われた股間に手を伸ばした。
「やっぱり裕ってイジワルだっ!」
 恵史は真赤になって怒鳴った。


 1学期の終業式に仲良く登校した二人を見た琢磨は、わざとらしい大きなため息をついた。
「とうとう、完璧に熊谷のモノになっちゃったのね・・・子猫ちゃん」
「おはようございます・・・中村先輩」
 はにかむように挨拶をして、裕に寄り添った恵史は、一層鮮やかに変身していた。
 裕にレイプされた後には、確かに凄絶にキレイにはなったがどこか儚げだったが、今日の恵史には何もかも包み込んで許してしまう聖母のような柔らかさが加わっていた。
「熊谷に完敗だな。俺じゃ子猫ちゃんをこんな風にキレイにはできなかった・・・」
 完敗だと言う割には、そんなに悔しそうでない琢磨に、裕は慌てて否定した。
「ちょっと待て、中村。何だよソレ・・・俺だって驚いてんだぜ。狐につままれてるのはお前だけじゃないさ」
「まぁ、理由なんて何でもイイさ。ただ、もう子猫ちゃんなんて呼ぶのは失礼かな・・・聖母マリアとでも、改名する?」
 恵史の顔を覗き込んで、琢磨は言った。
「僕、女じゃないから、そんなのイヤです・・・」
 恵史は頬を膨らませていやがった。
「じゃあ、お釈迦さまってのはどう? ほら、君の掌で熊谷が踊らされてる」
 琢磨の言葉にウケたのは、裕だった。
「ぎゃっはっはっ! それビンゴ!」
 自分がサル呼ばわりされてることにも気付かず笑い転げる裕に、恵史も琢磨もつられて笑い出した。ひとしきり笑っておなかの皮が痛くなった頃、笑いを納めた裕がポツンと呟いた。
「帰りに3人で『待合室』に行くか・・・? ブルマンでよかったんだよな? 中村」
「サンドイッチもつけろ。こんちくしょう。朝っぱらから見せつけられた迷惑料だ」
「わかったわかった。そうムクレるなよ・・・・」