18

「えっ、バイト? 【待合室】で?」
 情事の後の心地よい気だるさを纏ったまま、裕と恵史はベッドの中で夏休みの計画について、話をしていた。
「うん・・・夏休みの間だけなんだけど・・・定休日の日曜日しか逢えなくなっちゃう・・・・」
「わかった。俺も一応受験生だから、補講があるし、毎日帰りに寄るよ。そしたら逢えるだろ?」
 裕の提案に、恵史の顔が喜びに輝く。
「嬉しい。裕に毎日逢えるんだね・・・」
 裸のままの恵史に抱き付かれて、裕の身体の埋み火がまた燃えあがった。恵史のプリンとしたお尻を大きな手で鷲掴みにすると、やわやわと揉みしだいた。
「あ・・・ん・・・裕・・・またするの?」
「イヤか? イヤならやめるけど・・・」
 意地悪く裕が手を止めると、恵史はイヤイヤするように首を振った。
「イヤじゃない・・・だから・・もっと気持ちイイことして・・・・」
 いつもされているように、裕の耳許で吐息だけで囁いて、恵史は笑みを浮かべた。それは、天使が娼婦に堕ちたかのような妖艶さで、裕の理性を吹き飛ばした。
「俺、やっぱお前の掌で踊らされてるような気がしてきた・・・覚悟しろよ、恵史。この俺を手玉にとるような真似をしたこと、後悔させてやる」
 そう言って恵史をシーツの波間に組み伏せると、裕は激しく口唇を貪った。舌を強く搦めとり、痛みを感じるほど吸い上げる。
 息苦しさに恵史が身をよじると、裕は手首を縫い止めていた手を胸に這わせた。指先で胸の突起を摘んだり押しつぶすようにしたり、恵史を啼かせることに専念した。
「いや・・・ぁ・・・」
 激しいくちづけの所為で赤く濡れた恵史の口唇から、甘い声が上がり、裕を喜ばせた。
 持てるテクニックの全てを駆使して、恵史を煽っていく。
「ヤ・・・ゆた・・・か・・・ソコ・・ヤだ・・・」
「ウソつけ・・ココをこんなにしてるクセに・・・気持ちイイこと一杯して欲しいんだろ?」
「違・・・う・・イヤ・・・やめ・・・」
 言葉でも弄られると、恵史は恥ずかしがって、イヤイヤするように首を振った。サラサラの髪が汗を吸って、少し重たそうにシーツに打ちつけられる。閉じられた目からは、涙が零れ落ちた。
「もっと感じて見せろよ」
 すっかり勃ち上がっている恵史をすっぽりと大きな手で包み込むと、裕はゆっくりと動かし始めた。
「好き・・・・裕・・あ・・もっ・・と・・」
 根が素直な恵史は、与えられる快感を貪欲に吸収しようと、腰を突き出した。
「かわいいな・・・恵史・・ホラ・・イッちゃえ・・・」
 動かしている手のスピードを少し上げただけで、恵史は呆気無く弾けた。
「ヨかったか?」
 潤んだ目で見上げて、恵史はコクンと頷いた。
「今度は僕が裕にしてあげる・・・」
 恵史は起き上がると、裕を押し倒した。
「おっ・・・ヤル気充分じゃん・・・」
 恵史の積極的な行動を歓迎した裕は、次の瞬間言葉を失った。
「なっ・・・!?」
 恵史は、やんわりと裕に手を添えて握ると、ためらいもなく口唇を寄せて愛しそうにキスをして、そのまま咥えたのだった。
「ちょっ・・・待て・・恵史・・・・う・・」
 ピンクの舌を覗かせて、アイスキャンデーをなめるかのように、ペロペロと愛撫されて、背筋を昇ってくる凄まじい快感に、裕は暴発しそうになった。恵史は目を閉じてうっとりとした表情で、一心不乱に裕を愛していた。
「ダメだ・・・離せ・・恵史・・出・・・る・・・っ・・」
 裕がきつく閉じた目の奥で、七色の光がスパークした。