13

「センセー! 由良さん。ごめんっ! ごめんなさい。もうしないからっ!」
 笑い続ける橘を抱き起こし、渾身の力で抱き締めて建機は謝った。
「たっくん?」
 壊れたレコードのように『ごめんなさい』を繰り返す建機の背中に、橘は腕を回した。
「どうして泣いてるの? たっくんは僕に謝らなきゃならないような悪いことをしたの?」
 小さい頃と同じように、橘は建機を抱き締めた。
「由良・・さん・・・?」
「たっくんは僕を好きで抱いてくれたんじゃないの?」
 橘の言葉に建機は目を瞠った。
「い・・いや・・あの、それは・・・」
「あの頃の約束は忘れてしまったけど、また新たに僕のことを好きになってくれたんだと思ってたのに、違うの?」
「由良さん・・・」
 畳み掛けるような橘の言葉に、建機は絶句してしまった。
「あの頃の約束に縛られて、この年まで恋人も作らずに清く正しい生活してきたんだ・・」
 橘は腕を解くと、建機の目をまっすぐに見つめた。
「だから、責任取ってもらうよ」
 脅迫者は妖艶な笑みを浮かべると、唖然としている建機にうっとりと口づけた。
 そして。
 開き直った橘は容赦なく、建機はなけなしの過去のあれこれを、洗いざらい白状させられた。


「ぎゃはははははっ! 完璧尻の下に敷かれてやんの!」
 翌日、魂が半分抜けた状態のままの建機が報告すると、範義は建機の肩をバンバン叩き、椅子から転げ落ちる勢いで大笑いした。
 建機は憮然とした表情ながらも、モンモンと悩んでいた頃と比べて、顔色が数段によくなっていた。
「ま、幸せならイイんじゃねーの?」
 範義なりに祝福してくれているとわかる。建機は同性愛に転んだ自分を見捨てないでいてくれる親友の存在をありがたいと思った。

 恋人になる条件は、範義以外の誰にも二人の関係がバレないようにすること。
 橘の言い分はもっともで、建機は頷いた。
「どうせ俺が卒業するまでのことだし」
 家族には記憶が戻ったということにして、週末毎に建機は遠藤邸に入り浸っている。
 華子は孫が一人増えたと喜んでいるが、橘は少し後ろめたいと思っていた。

「教えて、センセー・・ここ、イイ?」
 そして、今週末も華子の手料理をたらふくご馳走になった後、橘の部屋でみだらな授業に及んでいた。
「やめっ・・あぁっ・・・」
 身体の奥深くを建機の指で探られて、橘は甘い声を上げた。
「あぁ・・・ココなんだね。これでまたひとつセンセーのイイところは覚えたから、これからはいつもいつもココをいじってあげるね」
 建機はそう言いながらなぶり続け、橘の身体が弾むのを楽しんでいた。
「バッ・・・バカ!」
 橘は涙目で抗議したが、建機の劣情を煽るだけだった。
「あんまりいじわるして嫌われたらイヤだから、そろそろセンセーの欲しいモノあげるね」
 建機はそう言って全裸になると、中心でそそり立っているモノを橘に見せつけた。
「たっ・・・たっくんっ!」
 怯えたような表情で悲鳴を上げる橘にかまわずに、今まで時間をかけてほぐしていた蕾にゆっくりと押し入った。
「あ・・・あぁっ・・・」
 挿入の瞬間は、いつも息が詰まるような気がする。橘は建機の背中にギュッとしがみついた。