フレデリックが好意を寄せてくれているのはわかっている。それほど鈍感じゃない。だけど、その想いが自分と同じものだとは思えなかった。
フレデリックはまだ11歳だ。優しいお兄さんへの憧れといったような想いならいらない。
今までにもじゃれあいの延長のような抱擁は何度もしたことがある。
今日もフレデリックの発熱をいいことに抱き締める機会を得たけれど、子どもらしい独占欲で『ナイト』へのデビューを阻止された今では、返って飢餓感が増してしまった。
(焦るものか・・・)
身も心も手に入れるためには、もう少し彼が大人になるまで待つのだと、マーシャルは腕の中で眠るフレデリックの頬に口唇を寄せた。
「ん・・・」
その時、フレデリックが寝返りをうったので、頬に落とそうと思ったキスが口唇に重なった。
「っ!?」
熱の所為で、触れた口唇は火傷をするかと思うくらい熱く感じた。慌てて離そうとしたが、フレデリックに吸い付かれて、心臓が止まるかと思うくらい驚いた。
苦しくて寝返りを打ったとき、熱で火照った口唇にひんやりしたものが触れて、フレデリックは夢うつつに逃げるそれを追いかけた。
しばらく吸っていると、軟らかいものが口唇を割って忍び込んできた。それもチューチュー吸ってるうちに、再び深い眠りに落ちて行った。
赤ん坊のようにマーシャルの口唇や舌を吸いながら、フレデリックは眠った。
マーシャルはフレデリックの熱が移ったように、夕陽色の髪と同じく全身真っ赤になっていた。心臓が胸を突き破ってしまうかと思うくらい、激しく鼓動を刻んでいる。その熱が下腹部に集中したかのように、中心が堅く勃ち上がってしまった。
「フレッド・・」
口唇を吸われて、思わず舌で口内を犯すような真似をしてしまった。
フレデリックが同じ想いになるまで手は出さずにいようと思っていたのに、こんな不意打ちを食らうなんて・・・
マーシャルは泣きたい気持ちで、熱を静めるために自身に手を伸ばした。
荒くなる息を押し殺して、フレデリックの寝息を抱き寄せた胸に感じながら手の中に熱を放出すると、マーシャルは魔法で跡形も残さずに始末した。
しかしフレデリックを汚してしまったような気がして、情けなくなって涙が溢れ出した。
「ごめん・・・フレッド・・」
まだ熱の下がらないフレデリックを抱き締めて泣き疲れて、いつしかマーシャルも眠りに落ちていった。
ロバートの薬が効いたのか、翌朝にはフレデリックの熱はすっかり下がっていた。
目覚めると、いきなり夕陽の赤が目に飛び込んできて驚いたが、マーシャルの腕に抱かれているのだとわかると、フレデリックは心臓が止まるかと思うくらいビックリした。
「な・・な・・なんでマーシャルが僕のベッドに・・?」
頭の中を疑問符が飛び交っていたが、マーシャルの寝顔を間近で見ることができて、フレデリックは嬉しくなった。
「マーシャル・・・」
綺麗な寝顔を眺めているうちに、我慢できなくなったフレデリックは、起こさないようにそっと口唇にキスを落とした。
(今年は上手くいったけど、来年はどうやって阻止しようか・・)
考える時間は1年間ある。今年の作戦がバレバレだったとは気づいていないフレデリックは、うっとりとマーシャルを見つめ続けた。