「徹がいけないんだ・・・」
慎司はそう言うと、後ろに埋め込んだ指をもう1本増やして、強引にねじ込んだ
「うわあぁぁぁっ!」
徹の身体が激痛に強張った。
慎司は根気良く中を掻き回して、きつく締めつけてくる蕾をほぐしていった。萎えてしまった徹自身にも、指を絡めて扱いた。
「あぁ・・・う・・・あ・・ん・・・・」
前と後ろを同時になぶられて、徹の腰も揺らめき始めた。身体がもう自分のものではないような気がする。
感じているのはもう痛みだけではなかった。その証拠に徹の分身は勃ち上がっていて、歓喜の涙を溢れさせていた。
「もうそろそろいいかな・・・」
慎司は指を引き抜くと、天を仰いでいる自身をゆっくりと挿入していった。しかし、恐怖の為になかなかほぐれない蕾に拒まれて、慎司も徹以上に痛みを感じていた。
「きっつ・・・・」
「い・・痛いよ・・・やめて・・・慎ちゃん・・・ヤ・・だ・・・」
「徹が悪いんだ・・・徹が俺を誘惑したんだ・・・・」
慎司が根元まで徹の中に収まった頃には、二人とも汗びっしょりになっていた。ゆるゆると動き始めると、徹から呻き声が洩れた。
ローションの粘着質な音が、慎司を余計に煽っていく。激しく腰を使うと、徹の上げる声の色が微妙に変化してきた。快楽の頂は間近に迫っていた。
「イヤあぁぁぁぁぁっ!」
嬌声を上げて、徹は欲望を解き放った。その艶冶な声に慎司もまた昇りつめた。
ぐったりとした徹を仰向けにした慎司は、その顔を見て凍りついた。涙をボロボロこぼして、悲しそうな目で見上げていたのだ。
「痛いって言ったのに・・・ヤだって言ったのに・・・・やめてって言ったのに・・・お医者さまになってボクを治してくれるって言ったくせに・・・ボクに痛いことした・・・」
「とお・・・る・・・」
子どもの頃に返ったかのように、自分のことを『ボク』と呼んで、徹は泣きじゃくりながら慎司を責めた。
「ウソツキ・・・慎ちゃんのイジワル・・・」
「徹・・・ごめん・・・・ごめん。ごめん。ごめん。ごめん。ごめん」
壊れた機械のように謝り続ける慎司もまた、涙をボロボロ流していた。
週明けの朝、重苦しい気持ちを抱えたまま、徹は慎司を待っていた。いつもなら、とうの昔に来てる時間なのに一向に現れる気配がないので、慎司の家に行ってみると、随分前に家を出たという。
『嫌われたんだ・・・』
漠然と徹は思った。
愛し合った二人がする行為を、慎司は徹を傷つける行為にした。
『好き』という言葉が慎司の口から出ることはなかった。徹がいけないんだと、そう言っていた。
「いっつも待たせてばかりいたからかな・・・?」
徹は悲しくなってきた。生まれた時からずっと一緒で、傍にいるのがあたりまえだと思っていた。青陵を受験することも、慎司と一緒にいたくて1年の時から頑張って勉強して臨んだ。
なのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう。
「俺の何が悪かったんだろう?」
レイプされたのに、自分の方が悪く思えるのは、慎司の涙を見てしまったからだろうか。
遅刻してはいけないと、徹はまだ痛む身体にムチ打って、駅まで全力でダッシュした。