放課後、ゲーセンに行くという二人と別れて、部活のバスケ部で無心にボールを追いかけてると悩んでいたことを忘れられたが、帰りに一人になると、またモンモンと考え始めた。
『ずっと一緒にいたのに・・・』
聖夜は冬夜が遠くへ行ってしまうような喪失感に襲われていた。
公園の側を通り過ぎようとして、子供の頃二人でよく遊んだことを思い出した。端の方に設置されているバスケットゴールで遊ぶ内に、聖夜はバスケットの選手になりたいと思ったものだった。
聖夜はバッグからボールを取り出すとゴールに向かってシュートした。
「ザンネン!」
ボールがゴールリングにバウンドすると背後から声がして、聖夜はびっくりして振り返った。
「ゴメんなサイ。驚かセた?」
金髪の青年がそこにいて、外人に過敏になっている聖夜は眉を寄せた。
「あの・・」
「腕がブレるね。もッと脇を締めてシュートするとヨイよ」
足元に転がっているボールを拾い上げると、青年は見事なロングシュートを決めた。
「スゲー!」
相手がキライになりそうな外人だということも忘れて、聖夜は拍手していた。
「おにーさん、バスケやってるの?」
元々人懐こい聖夜は目を輝かせて訊いた。
「High schoolでチョとだけね。チビだからNBAから誘われナカった」
チビだと自分を卑下した青年は172センチの聖夜より10センチ以上長身だったが、NBAで185センチでは確かにチビの部類に入るだろう。
「でも、田臥勇太は俺ぐらいのチビなのにNBAに入ったじゃん」
「ソーだね。ボクは諦めたけど、キミはまだ若いからガンバレ」
青年に肩を叩かれて、聖夜はなんだか元気が出てきた。
「心に悩みがアルとボールも真っ直ぐ飛ばなイよ」
核心を突かれて、聖夜の顔が強張った。
「やっぱりソーだったの。ボクには聞いてアゲることしかできないけど、話してミル?」
外人の男に兄が取られそうで淋しいなんてこと言える訳なくて、聖夜は首を振った。
「ありがと。でも、これは俺だけの問題だから、俺自身で解決しなきゃならないのはわかってるんだ。悩んでも仕方ないことだってのもわかってるんだ。おにーさんがそう言ってくれただけで嬉しいよ。Thank you.」
聖夜の言葉に青年は頷いた。
「それだケ強い心あればダイジョブね。ボクの名前はランバート。バートって呼んデくれたらイイ」
「俺は聖夜。クリスマスイブに生まれたんだ」
「I see.Holy nightネ。ソレじゃ、ホーリーと呼ボう」
『聖なる』という意味のホーリーというニックネームをつけられて、なんだか聖夜は照れくさかった。
「また明日、今と同じ時間にココで逢えマスか?」
バートに訊かれて、思わず聖夜は頷いた。
「OK.See you tomorrow,Holy」
バートが笑顔で手を振ってきたので、聖夜もバイバイと手を振り返した。
「あれ・・・でも、どうして明日も逢わなきゃならないんだろ?」
バートの姿が見えなくなってから、聖夜は疑問に思った。
次の日、部活が終わって約束通りに聖夜が公園に来ると、バートはもう待っていた。
「ゴメン。待たせた?」
なんだか、デートの待ち合わせみたいだなと思いながら聖夜が声をかけると、バートは嬉しそうに笑った。
「ボクも今来たトコでース」
バートは真新しいバスケットボールを持っていた。
「今日はOne on Oneしまセンか?」
人差し指の先でボールをくるくる回すバートの提案に聖夜は目を輝かせた。
「やるっ! やりたいっ!」