【・・私が欲しいものは・・】
そう言いながら、アーニーはカウンターから身を乗り出して、冬夜に触れるだけのキスをした。
【冬夜・・君だよ・・・君の・・・身も心も・・全て欲しいよ・・・好きなんだ・・】
そんなに都合のいいことがあるはずはない。これはきっと夢なのだと、冬夜は耳を疑った。
冬夜が目を見開いて硬直したので、アーニーは拒絶されたのだと思った。
【ゴメン・・・今言ったことは忘れてくれるかい・・・】
【イヤですっ!】
大人しい冬夜が大声を出したので、アーニーは目を丸くした。
【せっかくロイドさんも僕のこと好きでいてくれたってわかったのに、忘れることなんてできない】
【え・・・?】
【それとも、今キスしてくれたのも、僕が見た夢だったの?】
【冬夜・・?】
冬夜は泣き出しそうな顔でアーニーに訴えた。
【ボクもロイドさんのことが好きなのに・・】
【・・・夢じゃないだろうね・・?】
アーニーは呆然と呟いた。
【それはボクのセリフです。ロイドさんみたいに素敵な人が僕を好きになってくれたなんて・・・信じられない・・】
冬夜の言葉を信じられない思いで聞いていたアーニーは、大きく息を吐き出すと嬉しそうに微笑んだ。
【冬夜・・・一つ提案だ・・・恋人になったのだから、私のことはこれからファーストネームで呼んでくれるかい?】
アーニーの言葉に冬夜は頬を染めた。
【・・アーネストさん・・】
【堅苦しいな。アーニーって呼んでくれよ】
【アーニー・・】
冬夜が照れたように名前を呼ぶと、アーニーは再びカウンターから身を乗り出して、先ほどとは比べ物にならないくらい濃厚なキスを贈った。
【冬夜が私の恋人になってくれたよ】
アーニーが得意げに言うと、バートは目を瞠った。
【ワーオ! よかったじゃないか。おめでとう、アーニー】
【これが冬夜だ】
アーニーは携帯で撮った画像を見せた。
【なかなかキュートなコじゃないか。ところで、どうやったんだ?】
先を越されて悔しいが、身近な成功例を参考にして自分もホーリーを恋人にできたらと、バートは目論んだ。
【それが、冬夜がバースデープレゼントに何が欲しいって訊いてきてくれたので、ダメ元で君が欲しいって言ったんだ。まさか受け入れてくれるなんて思わなかったけど】
バートのブラウンの瞳が、希望に輝いた。
【そうか。バースデープレゼント・・その手があった。今度逢う時にさり気なく切り出してみよう】
【ホーリーと上手くいくといいな。がんばれよ。バート】
【あぁ、上手くいったら4人で遊びに行こう】
バートは胸がワクワクするのを感じた。
「聖夜・・・あのさ・・玉砕しないで済んだ・・・」
いつものように、おやすみと挨拶した後に、今夜はそっと耳打ちされて、聖夜は目を瞠った。
「え・・と・・そーなんだ? おめでとう・・・やっぱり俺の言った通りになったじゃん」
聖夜は驚いたが祝福した。
「うん・・写真見せてあげる。これが彼だよ」
ケータイで撮ったという画像を見せられて、聖夜の心臓がドキンと跳ねた。
『バート!? うそだろ・・・』
思わず叫びそうになって、聖夜は口を押さえた。
「どう? カッコいいでしょ」
ノロケる冬夜に聖夜は頷くのが精一杯だった。
ベッドに入っても、頭がガンガンするように気がして、なかなか寝付けなかった。
『バートが冬夜の恋人だったんだ・・・・』
知らない間はよかったけど、もう冬夜のいないところでバートに逢ってはいけない。そう思うと聖夜はなんだかとても淋しくなった。
『楽しかったのにな・・・One on One』
なぜか泣きたくなって、聖夜は枕に顔を押し付けた。