冬夜の顔をまともに見られない。不可抗力だったとはいえ、冬夜の恋人とキスしてしまったのだから。
『なんで俺にキスなんか・・・』
バートに触れられた口唇が熱を持ってうずくような気がする。
聖夜は泣きたくなるような気持ちでベッドに倒れこんだ。
「おい・・・どーしたんだ。前よりヒドイじゃん」
登校するなり殿村に背中を叩かれて、聖夜はよろめいた。冬夜も顔色が悪いと心配していたが、腹が痛くて全然眠れなかったのが原因だからとそう言えば、いぶかりながらも納得していた。
本当の原因は言えるはずなかった。
「冬夜のことか?」
「違うよ・・・ちょっと眠れなかっただけ・・ヘンな夢見ちゃってさ・・・」
実際、悪い夢だったとしか思えなかった。
「ふーん、お前でもそんなことあるんだな」
篠田が驚いたように言ったのも無理はない。聖夜は担任から居眠りキングの称号を与えられていたから。
予鈴が鳴って、みんなバタバタと席に着いた。
「ホントに全部夢だったらよかった・・」
小さな呟きは誰にも聞かれることはなかった。
日に日に聖夜の元気はなくなっていく。家族の前では元気を装っているけど、ずっと一緒にいた冬夜にはわかる。でも、聖夜に訊いても淋しそうに笑って否定するだけで、本当のことは何一つ話してくれなかった。
【僕どうしたらいいのか・・・】
途方に暮れて、冬夜はアーニーに相談していた。
【私のところもバートがゾンビのようになっているんだ】
【失恋・・してから?】
【そうなんだ。デカイ男が地獄の底まで落ち込んでるから、もううっとおしくて・・】
アーニーはおどけてそう言ったが、心配しているのがわかった。
【どうしたら元気になってくれるかな・・・】
【二人きりで過ごそうと思ってた私のバースデーだけど、4人でどこかに出かけてみようか・・気分転換くらいにはなるかもしれない】
【そうだね。いい考えかも】
アーニーの言うとおりに気分転換になって、バートと聖夜が元気になってくれたらいいと、冬夜は願った。
「え・・ 冬夜の彼とそのお兄さんと4人で?」
戻って早速聖夜に話すと、あんまり気乗りしない様子だった。
「いや?」
上目遣いで聖夜を伺うと、困ったように視線を泳がせる。
「いや・・じゃねぇけど・・・」
もごもごと言葉をにごす聖夜に冬夜は強引に誘った。
「きっと楽しいって。なんか最近の聖夜暗いから、気分転換しなきゃ。ネ?」
「う・・うん・・・まぁ・・」
全然行きたくなかったけど、あんまり断ると余計な詮索されそうなので、聖夜は渋々承諾した。
【冬夜の弟と4人で?】
思いがけない誘いに、バートは気乗りしなかった。
【そうだよ。いつまでもホーリーのことを未練たらしく引きずってないで新しい恋を探せよ。誕生日なんだから気分転換して、もう一度生まれ変わった気持ちになればいいじゃないか】
アーニーが心配してくれているのはわかる。だからバートは気が進まなかったが、渋々承諾した。