【・・そうか・・わかった。じゃあ、そこで待っていろ。迎えに行くから】
二人きりで出かけることになって、冬夜が車に乗った時、アーニーの携帯にバートから連絡が入った。
【バートさんから?】
心配そうに伺ってくる冬夜の頬にキスを落として、アーニーは微笑んだ。
【そう。ホーリーの誤解が解けて想いが通じたらしいけど、一体誰だったと思う? 冬夜の弟だったらしいよ】
「聖夜だからホーリーだったのか・・・・」
思わず日本語で呟いた冬夜に、アーニーはウインクした。
【ホーリーもバートを好きだったけど、冬夜の恋人だと思い込んでて、諦めようとしてたらしい。これから二人を迎えに行って、詳しいことはそれから聞こうか】
冬夜は信じられないような展開に、ただ呆然と頷いた。
「信じらんないっ!」
「ごめん・・・・」
眉を吊り上げる冬夜に、聖夜はただひたすら謝った。
「僕、ちゃんと言ったんだからね。なのに全然覚えてなかったなんて」
「いや・・・それは・・・だって、テレビ見てる時やゲームしてる時に言われてもさぁ・・・・」
「聖夜が自分で勝手に思い込んで自己完結しちゃうようなおバカだなんて思わなかったから、ホントに何があったんだろうって、心配してたんだぞ」
「ゴメン・・・」
聖夜が叱られた仔犬のようにシュンとなったところで、見かねたバートが口を挟んだ。
【ホーリーも反省しているようだから、そろそろ許してやってくれないかな。もう目的地に到着するし】
恋人と同じ顔のバートにお願いされて、冬夜の頬が朱に染まった。
【あ・・はい・・】
「わかんねぇよ。英語でしゃべるなよ」
聖夜が拗ねて頬を膨らませた。
「ホーリーもスグに話せルようにナル。バートにベッドの中で教えてもらえばイイ」
アーニーの冗談に、聖夜だけでなく、冬夜もフリーズした。
【ふーん。お前はそうやって冬夜にレッスンしたのか?】
バートがニヤッと笑って尋ねた。
【そんなことしてませんっ!】
真っ赤になって冬夜が否定したが、アーニーはニヤニヤと意味深に笑った。
「信じてんじゃないっ! 聖夜」
アーニーの冗談を信じて、冬夜と同じように聖夜も真っ赤になっていたので、冬夜は悲鳴を上げた。
「俺、別に話せなくてもいいからっ!」
勢い込んで言った聖夜の言葉に、バートはあからさまにガックリしてみせた。
「ザンネン・・・さっそく今夜からレッスンしようと思ってタのに・・」
「わーっ! そんなこと言うなよ! バート」
「そうです! 二人ともひどいよ」
涙目になって抗議する二人にアーニーは大笑いした。
【お互いに苦労するな。バート】
アーニーの言葉に、バートは肩をすくめた。
4人で楽しく食事をしてからバート達を家に送り届けて、アーニーと冬夜は予約を入れていたシティホテルにチェックインした。
【やっと二人きりになれたね・・・】
ドアが閉まるなり抱き締められて、耳朶を優しく噛みながら囁かれると、冬夜の身体は電流が流れたかのように跳ねた。
【怖い?】
そう優しく訊かれたけど、冬夜は返事できずにアーニーの胸に顔を埋めた。
【優しくするから・・冬夜を私にくれるかい?】
冬夜は返事をする代わりに、アーニーの背中に腕を回してギュッと力を込めた。
その瞬間、冬夜の視界がグルッと反転したかと思うと、アーニーに横抱きにされていて、そのまま花嫁のようにベッドルームに運ばれた。