「滋さん。ホントに星野を殺っちゃったんすか?」
「かもな」
放課後の生徒会室。
昨日の今日で彼方は学校を休んでいるし、安達は安達で不機嫌の絶頂で、仕事がはかどらないしで、花巻は胃が痛くなりつつあった。
執行部の他の面々も触らぬ神に祟りなしとばかりに、黙々と働いていた。
「安達生徒会長はいらっしゃるかしら?」
どんよりとした空気が立ち込めるのを切り裂いたのは、鈴を転がすような女の子の声で、その場にいた全員がドアの人影に釘付けになった。
「君は・・・」
安達が何かを言おうとした途端、その少女、遥は駆け寄ると安達の頬を平手打ちした。
その瞬間、遥をココまで案内して来た生徒以下、白蘭のクイーンにフラフラついてきたヤジ馬達からどよめきが起こった。
「よくも私のカナをあんな目にあわせてくれたわねっ。許さないわ」
打たれた左の頬をさすりながら、安達は不敵な笑みを浮かべた。
「恋人の仇討ちに来るとは、中々勇ましいお嬢さんだな」
「何寝ぼけたこと言ってんのよ。カナは私の弟よっ!」
遥は叫ぶと、呆然としている花巻の胸にすがりついた。
「司。私、悔しい」
泣きじゃくる遥を抱きとめながら、花巻は呆けた顔を安達に向けると、安達も狐につままれたような表情をしていた。
「おと・・うと・・?」
安達がやっとのことで搾り出した声は、裏返っていた。
「しかし、松宮さん。君は・・・・」
「両親が離婚して別々に引き取られただけよ」
「遥。じゃあ、君と星野は・・・」
「双子よ」
遥の答えを聞いた安達はあんぐりと口を開けて、未だかつてないほど間抜けな顔になった。
「知らなかった・・」
花巻の呆然とした呟きに、遥は涙を拭いて答えた。
「言ってなかったもの。でも、近いうちにちゃんと紹介するつもりだったのよ」
「ちょっと待ってくれ。花巻。お前、クイーン・・松宮遥さんとはどういう関係なんだ?」
唖然、呆然としている当事者達を差し置いて、ヤジ馬の一人から質問が飛んだ。
「恋人よ。いけない?」
遥の答えに、ガックリと肩を落としたヤジ馬が一人、また一人と去っていって、残されたのは固まってしまっている執行部メンバーのみとなってしまった。
「そう・・あれを見られてたのね・・・・」
今日はもう仕事にならないので、生徒会メンバーを帰した後で安達と花巻は、遥と話をする為に残っていた。
「夕べ、電話しようと思ったんだけど、別れ話を持ち出されるのが怖くてできなかったんだ」
花巻はがっくりと肩を落としている。
「勘違いの上早とちりしたってのか・・・」
呆然としたまま安達が呟いた。
「そうよ。わかったならもう金輪際カナに近づかないで」
遥にバッサリ切り捨てられて、安達の瞳に傷ついたような影が宿った。
「あ、そうそう、忘れないウチに渡しておくわ。これ、カナが貴方にって」
遥はポケットから取り出した細長い包みを安達に手渡した。