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「イヤだっ! 二度と傷つけないって約束したじゃないかっ!」
「傷つけようと思ってる訳じゃないだろっ! 愛し合いたいんじゃないかっ!」
「だって、怖いんだもん!」
「カナに何するのよっ! 離れなさいよ! 強姦魔!」
 星野家のリビングで、今日も繰り広げられる光景に、花巻は大きなため息をついた。
「いい加減諦めて抱かれろよ。カナ。でないと、執行部の仕事が停滞するんだよ」
「司のバカっ! 私よりこの強姦魔の味方するつもり!?」
 遥の怒りの矛先が自分の方に向いたので、花巻はブンブンと首を振った。
「そんな訳ないだろ・・宇宙で遥だけ愛してるのに・・・」
 花巻はキャンキャン喚いている遥を抱き寄せると、口唇を塞いだ。
「滋さんとカナのは痴話ゲンカなんだから、ほっとけ。どうせ犬も食わないんだから・・・」
「つか・・さ・・・・」
「あんまりカナ達にばかり構ってると、俺がスネるぞ」
「ごめんなさい・・・」
 遥は素直に謝った。
「俺の部屋に行こうぜ。このところのゴタゴタで、しばらく遥を抱いてないから、俺もうエネルギー切れだ」
「っ・・司ったら・・・・」
 真っ赤になった遥は、それでも大人しく花巻に手を引かれてついていった。
 花巻はドアを閉める直前に振り返って、呆気に取られている彼方と安達に言った。
「羨ましいだろー。ザマミロ」
 その子どものような言葉に、彼方は思わず吹き出した。
「そっか・・・エネルギーなんだ・・・」
「彼方・・・?」
「抱き合うことがエネルギーになるんだ?」
 彼方の言わんとしていることに気付くと、安達はコクコクと頷いた。
「そうだよ。だから俺のエネルギーはエンプティ状態なんだから、彼方が満タンにしてくれなきゃ・・・」
「・・・」
 頬を染めて俯いた彼方を抱き上げると、安達はベッドに直行した。
「俺を信じてくれ・・・乱暴にしたりしない・・・・もう、彼方が欲しくて欲しくて死にそうなんだ・・・」
 安達の切羽詰った想いに、彼方は心が揺さぶられた気がした。
「僕は・・・どうしたらいいの?」
「何もしなくていい・・・・ただ、俺を感じて・・・」
 シーツに優しく沈められて、彼方は覚悟を決めて目を閉じた。


「いや・・・も・・ヤ・・・だ・・・」
 強過ぎる快感は時には苦痛になる。彼方は一方的に何度も達かされて、身も世もなく泣き出した。
「ダメだ・・・まだ足りない・・・全然足りないよ・・・・・」
 安達の指が、彼方の双丘の奥に忍び込む。慎ましく閉じられた蕾は彼方が放ったもので濡れていた。
「ひぁっ!?」
 襞をなぞられて、彼方の背筋を電流が走りぬけた。そのまま指先が潜りこんでくると、あのときの恐怖がフラッシュバックした。
「や・・・・や・・・やめ・・・・」
 彼方の身体が強張ったのに気付いた安達は、指を引き抜き彼方の頬を両手で包み込んだ。
「彼方・・彼方・・・俺を見て・・大丈夫だから・・・」
「し・・・しげる・・さん・・・?」
「俺を怖がらないでくれ・・・彼方・・・」
 悲しそうな安達の顔に、彼方は身体の力を抜いた。
「ごめん・・・ちょっと思い出しちゃった・・・でも、もう大丈夫。続けて・・・」
 彼方が笑顔を見せると、安達は細心の注意を払って彼方の身体を拓くことに専念した。
「ヤだぁ・・・ソコっ・・・」
 頑なな蕾の奥を弄っていた安達の指が、スイートスポットを探り当てた途端、海老のように身体を弾ませて、彼方は悲鳴を上げた。
「あぁ・・ココか・・・」
 逃げられないように圧し掛かって、ソコばかり執拗に攻め始める。