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 かあさんはとうさまと一緒に天界に行くことになった。伴侶なんだから天界人でなくてもいいだろうってことで、許可を取りつけるのに時間がかかったんだそうな。
 当然2人の子どもである僕も一緒にって言われたけど、僕は天界になんて行きたくなかった。ラナやグレアムに逢えなくなるのがイヤだったから、だから、はっきりとそう言った。
「僕はカーネリアンに残りたいです」
 その言葉に、かあさんは困ったような表情になった。
「でもね、セラフィ。かあさんがいなくなったらマリュールには住めなくなるわ」
 そう言われて改めて思い出された。
 僕はウィッチでも天使でもないんだってことを。
「俺のところに来ればいい」
「グレアム…」
「本当は伴侶として来てほしいけど、急がないから」
 僕はちょっと迷ったけど、グレアムの申し出を受けることにした。
 だって、カーネリアンに残るにはそれしか選択肢がないんだから。
「ちょくちょく顔を見に来るから」
 かあさんはとうさまに連れられて天界へと上って行った。

「淋しいか?」
 僕の顔を覗き込んでグレアムが言った。
「全然… 全く逢えなくなった訳じゃないから」
「行こうか…リシュールに」
 グレアムに手を差し出されて、僕は頷いて右手を預けた。
「セラフィ…もう逢えないの?」
「ラナ…」
 ラナの目には涙が光ってた。
「今までのようには無理だが、来年のナイトで逢える」
 グレアムの言葉に、ラナは何度も頷いた。
「セラフィ・・元気で・・幸せになってね」
「うん…ラナもね。マナやおばさんにもよろしく言っておいて・・」
 最後にラナを抱き締めた。
「さあ、急ごう。大分暗くなってきた」
 グレアムはなんとなく不機嫌に見えた。
「じゃあ…」
 名残惜しいけどいつまでも森にいる訳にはいかない。ラナが帰ろうとしたら・・
「ラナさん!」
 グレアムのもう一人の従者が、ラナの前に駆け寄るとひざまづいた。
「ア…アーサー…あなたなの?」
「今年のナイトでは勇気がなくて言えなかったけど、来年は絶対に伴侶にと申し込みますから」
 そう言ってアーサーさんは、驚いて目を瞠って固まってしまったラナの手を取ると、うやうやしく口づけた。
 ラナはみるみるうちに真っ赤になって、縋るように僕のほうを見た。
「ラナ、おめでとう」
 僕が頷くと、照れくさそうに微笑んだ。
「来年のナイトで逢えるのを楽しみにしてるわ」
 そう言ってラナは、普段使わない時には小さくネックレスにして首からぶらさげているほうきを取り出してまたがると、あっという間にマリュールに戻って行った。