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「キャッ! くすぐったいです〜」
 お互いに洗いっこをしたんだけど、ケインはドコを擦ってもくすぐったがって身を捩った。
「ダメだよ。ちゃんと洗わないと」
「だって、セラフィ様ったら、ちゃんとしてくれないじゃないですか〜」
「え?」
 僕はちゃんと置いてあったスポンジで擦ってるのに、と思ってよくよく聞いてみると、力が弱過ぎてくすぐったいんだって。
「そんなに優しく擦るのは、赤ちゃんにだけです〜」
 そうか。リシュールはウィザードばかりだから、何でも力任せなんだな。
「泡を洗い流したら泳ごうか?」
「はい!」
 僕達ははしゃぎ過ぎて、様子を見に来たフレディさんに叱られてしまった。

「ケインまで一緒になって、どういうことだい?」
 ついハメを外して軽はずみなことをした所為でケインが叱られたので、僕はフレディさんに謝った。
「フレディさんごめんなさい。ケインは悪くないんです。僕が誘ったから、だからケインはイヤだって言えずに…」
「セラフィ様…」
「ケインのお尻をぶつなら、僕も一緒に・・」
 僕が決死の覚悟でそう言ったら、フレディさんはプッと吹き出した。
「お尻をぶつなんて、そんなことしませんよ。着替えたら、用意ができてますから食事にしましょう」

 グレアムとフレディさんは、まだ仕事が残ってるとかで、一人で食事をするように言われた。
「心細いだろうけど、もう少し辛抱してください。今グレアムさまは必死で仕事を片付けてらっしゃいますから」
 運ばれてきた食事は、とても僕一人で食べきれる量でなく、ケインにも一緒に食べてくれるように頼んだ。
「こ・・こんなご馳走、いただく訳にはいきません」
 ケインは固辞したけど、食事を残すような行儀の悪いことはできないからと説得して、何とか一緒にテーブルについた。

 食事が済んでしばらくはケインといろいろ話をしたりしてたけど、今日一日いろいろあり過ぎて疲れたのか眠くなってきたので、ベッドに入ることにした。
 本当はケインも一緒に寝られたらよかったけど、今夜はグレアムのベッドに寝なきゃならなかったので、ケインを誘う訳にはいかなかった。
「おやすみ。ケイン、また明日ね」
 そう言って、ケインを抱き締めて桃のような頬にキスをした。
「セ、セ、セラフィ様?」
 ケインが真っ赤になって俯いてしまったので、僕にもお休みのキスをしてくれるように言った。
「おやすみのキス、ですか?」
「そうだよ。リシュールではおやすみのキスしないの?」
 ケインがコクンと頷いたので、それはマリュールだけの習慣なのだとわかった。
「じゃあこれから、僕とケインだけはしようよ」
 僕が提案すると、ケインははにかみながらも僕の頬におやすみのキスをしてくれた。