その日一日、ケインと部屋で大人しくしていたら、普通に動けるようになってきた。
『具合はどうかな? ごめんね。僕が薬を間違えちゃったばかりに、つらい思いをさせたね』
 窓から入ってきた青い小鳥は、僕の指にとまると、そう言って謝った。
「フレディさん・・・」
『調子が良さそうなら、王が逢いたいっておっしゃってるけど、どうかな?』
「あ・・・逢いたいって、今からですか?」
『そうだよ。食事でもしながら話がしたいみたい。そんなにかしこまらなくても、大丈夫だよ』
 ど、どうしよう・・・こうなったらケインに助けを求めることはできないよね。僕一人でなんとかしなきゃ・・・
「え・・・と・・・行きます。どうしたらいいですか?」
『迎えに行くから待ってて』
 そう言うと青い小鳥はキラキラと光の粒子になって消えた。
「お待たせ」
 待ったと思えないほどすぐにフレディさんは現れた。
「衣装は純白がいいよね」
 フレディさんはつぶやくと、僕の目の前でひらりと手を翻した。
「あれ・・?」
いつの間にか僕は、足首でゆるく絞られたパンツと、ゆったりとしたシャツの上からベルトを巻いた真っ白な服を着ていた。
「似合ってるよ。セラフィ」
 ケインが褒めてくれた。
「ケインもそう思うだろ。やっぱりこのコは白が似合うってね」
 フレディさんの言葉に、ケインはコクコク頷いている。
 二人がかりで褒められると、僕はなんだか恥ずかしくなってしまった。

「あ・・あの・・お招きありがとうございます・・・」
 僕はひざまづいて礼をとった。
「よく来てくれたね」
 王は気さくに、緊張する僕の手を取って立ち上がらせ、歓迎してくれた。
 グレアムも凄いオーラをまとっているけど、王はやっぱり格が違う。
 見た目は口ひげがあって、ちょっと怖いのに、笑うと細くなる目が優しい。
「グレアムが無体なことをしたようで、心配していたんだよ」
「あ・・・」
 僕がグレアムに何をされたか、ご存知なんだ?
「いつまで俺のセラフィの手を握ってんですか。いい加減離してくれませんか」
 振り返ると、仏頂面のグレアムと、その横で笑いを堪えてるようなフレディさんがいた。
「そんな狭量だとすぐに愛想を尽かされてしまうぞ」
「わたしも同感です」
 王とフレディさんにいいようにあしらわれて、グレアムはますます不機嫌になった。
「腹減った。メシにしようぜ」

 最初は緊張していて、ご馳走の味がわからなかったけど、王はグレアムと同じように、いろんな話をしてくれて、僕をリラックスさせてくれた。
「セラフィ、君の母親はルピネルだと聞いているが・・・」
「はい。今はとうさまと一緒に天界にいます」
「そうか・・」
 王は何かを思うように、遠くを見つめた。

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