「やぁ、おはよう。セラフィ」
「お・・・おはようございます。マーシャルさん」
マーシャルさんは今日も綺麗だ。僕は思わずじっと見つめてしまった。
「セラフィ?」
「ご・・・ごめんなさいっ!」
反対に覗き込まれて、僕は反射的に謝っていた。
「本当にカワイイねぇ。フレッドが気にかける訳だ」
小さな子どもにするように僕の頭を撫でながら、マーシャルさんは微笑んだ。
「マリュールではどんなことしてたの?」
いきなり仕事モードになったマーシャルさんに訊かれて、僕も気を引き締めた。
「主に薬草を摘んでました。調合はまだ習い始めたばかりで・・・・」
僕の説明にマーシャルさんは頷いた。
「じゃあ、ケインが来たら今日はみんなで薬草を摘みに行こう」
マーシャルさんは『お弁当を持って行こう』なんて、子どもみたいにウキウキはしゃいでた。
「今日は薬師仲間の集まりじゃなかったんですか?」
フレディさんにそう言われて、マーシャルさんの綺麗な顔に影が落ちた。
「そうだった・・・すっかり忘れてた・・・・」
「薬草摘みには私がついて行きますから、ご心配なく」
「残念だけど、今日のところは仕方ない・・・フレッドに任せるよ」
別にフレディさんについてきてもらわなくても、マリュールにいる頃は一人で薬草摘みに出かけてたのに、なんだか過保護だな。
「あの・・・僕とケインで行けますけど・・マリュールにいる頃は、一人でやってたことだし・・・」
「ダメだよ。こんなにお弁当作ってもらったんだから。ケインと二人じゃ食べきれないでしょう?」
そう言ってフレディさんが指差したテーブルの上には、大きなバスケットが二つも置かれていた。
ケインがやってきてから、僕たちは出発することにした。マーシャルさんから摘んでくる薬草とそれらが生えてる場所のメモを貰った。
「気をつけて行ってくるんだよ」
「はい。行ってきます」
フレディさんが、道中リシュールを案内してくれて、僕はちょっとピクニック気分を味わっていた。
「今日はグレアムも来ると思うよ。パトロールの途中で脚を伸ばしてくるはずだから」
到着した場所は、以前グレアムが連れてきてくれた所で、僕はマーシャルさんのメモ通りの薬草を一心不乱に摘んだ。フレディさんとケインは僕の摘んだ薬草を、魔法で纏める作業をしてくれた。
日当たりのいい場所でお弁当を食べて、また仕事に戻ろうとしたその時、なんだか嫌な感じがした。
「フレディさん・・途中だけど戻ったほうがいいです。嫌な感じがするんです・・・」
僕の言葉にフレディさんは頷いてくれて、直ぐに荷物をまとめてくれた。
「嫌な感じってどんなの?」
僕が急にそんなことを言ったから、ケインは訳がわからなかったんだろうな。
「背中がチリチリするんだ。以前魔物が出た時もこんな感じがしたから・・・」
僕が説明し終わるのと同時に、目の前に二体の魔物が現れて、僕とケインに掴みかかってきたんだ。
「セラフィ! ケイン!」
フレディさんが魔法で魔物を攻撃するけど、飛び退いて巧くかわされる。僕は翼を広げてケインを包み込んだ。
「大丈夫・・・・すぐにグレアムが来てくれるから・・」
僕はケインを安心させるためにそう言って小さくうずくまった。
フレディさんの指先からは氷の刃が出て魔物への攻撃を続けている。僕はケインを抱きしめて震えてるだけで、何もできないのが悔しかった。
「うわぁっ!」
フレディさんの叫び声に顔を上げると、魔物が捨て身で放った一撃が、フレディさんの肩を射抜いていた。
「フレディさんっ!?」
フレディさんが左肩を押さえて膝をつくのが見えた。魔物達はフレディさんを倒して気を良くしたのか、攻撃対象を僕らに変えてきた。