「極上の精気・・・寄越せ・・」
魔物が僕らに飛びかかってきて、もうダメだと思った瞬間、物凄い衝撃波が一体の魔物を吹き飛ばした。
「セラフィ! 大丈夫かっ!?」
「グレアム! フレディさんがっ!」
もう一体の魔物はグレアムと一緒にいた人が倒したみたい。気づいたときには全てが終わっていた。
「フレデリック!」
「大丈夫・・・ちょっとしくじっただけだ・・」
グレアムの呼びかけに答えるフレディさんは痛みに顔を顰めていたけど、意識もはっきりしてて、命に別状はないみたいだ。
「アーニー、他に魔物がいないか、辺りを探って来るからフレディを頼む」
グレアムが駆け出して行ったけどもう背中はチリチリしないので、近くに魔物はいないはずだ。僕は安心してケインを包んでいた翼を解いた。
「セラフィ・・・」
「もう大丈夫だよ。魔物はみんなやっつけてもらったから」
泣き出しそうな顔をしているケインを安心させようと僕はそう言ったんだけど、ケインはポロポロ涙をこぼした。
「泣かないで・・・ケイン・・・本当にもう大丈夫だから・・・・」
ケインをそっと抱きしめて涙を拭いてあげても、後から後から涙は溢れてきた。
「困ったな・・・ほら、ケイン・・早く泣き止まないと、ケガしてるフレディさんに心配かけちゃうことになるよ」
そう言うと、ケインの涙はピタッと止まった。
「フレデリック様、ケガしたんですか?」
ケインが恐る恐る見やった先では、フレディさんがアーニーさんに抱かれてぐったりしていた。
「大丈夫だよ・・ケイン・・心配いらない・・」
フレディさんはケインを安心させる為にそう言ったのに、血だらけのフレディさんを見たケインは大声を上げて泣き出した。
「フレッド!? 一体その傷はどうしたんだ?」
グレアムの瞬間移動で僕たちは、マーシャルさんのとこにフレディさんを連れて行った。マーシャルさんはひどく驚いたようだけど、すぐにテキパキと指示を出した。
「アーネスト、フレッドをベッドへ」
アーニーさんがぐったりしているフレディさんをベッドに運んでいる間に、僕は洗面器に水を汲んできてマーシャルさんの脇に置いた。
「これはひどい・・・骨が砕けてる・・」
一目見ただけで酷い状態なのが僕でもわかった。フレディさんは失血の所為で顔色がなくなっていて、意識もほとんどなくなっている。
魔法で治せたらいいのに、人に生き死にに関わる魔法はない。グレアムもアーニーさんもケインも呆然と、マーシャルさんの治療を見守る以外何もできなかった。
「ごめんなさい・・・僕がもっと早く魔物の気配に気づいてたら、こんなことには・・・」
悔しくて情けなくて、僕は治療するマーシャルさんの手伝いをしながら、涙が溢れてくるのを止められなかった。
「えっ・・?」
それに最初に気づいたのはマーシャルさんだった。
「セラフィ・・・君・・・」
マーシャルさんの言葉に目を開けると、フレディさんの傷口がゆっくりとだけど塞がっていくのが見えた。
「え・・・?」
顔を上げると、マーシャルさんが呆然と僕の顔を見つめていた。