「うわっ・・な・・何だ・・!?」
グレアムが辺りを見まわしている。空から純白の羽根が無数に降ってきたんだ。
「セラフィ・・お前・・!?」
グレアムに抱き起こされた僕は、自分の背中で大きな白い翼がゆれているのに気付いた。
「お前…何者なんだ・・?」
「え…? ナニ・・コレ・・?」
「あっ! 待て! セラフィ!」
訳がわからなくてパニックになった僕は、グレアムの静止もきかずにその場を逃げ出した。
グレアムの拘束魔法はかけられなかったのか、すんなり家に帰りついたけど、僕の姿を見るなりかあさんは悲鳴を上げた。
「どうしてこんなことになってるの? セラフィ!」
僕は真実を話さざるをえなくなった。
「お世継ぎっ!?」
グレアムがカーネリアン王の世継ぎ?
世継ぎだからって、現在の王の息子って訳じゃない。世継ぎの力を持った子どもが生まれるとマリュールの大魔女の水晶玉が輝いて知らせてくれるらしい。
「だからあれほどウィザードの森には近づくなって言ったのに…」
かあさんは僕の話を黙って聞いてたけど、両手で顔を覆って泣き崩れてしまった。
グレアムに裸にされて、されたことだけは曖昧にごまかした。だって、恥ずかしくて言えないよね。
僕がしたことでかあさんをこんなに悲しませるなんて思ってなくて、僕も一緒になって泣いてしまった。
「真実を話す時が来たってことなのかしらね・…」
しばらくして泣き止んだかあさんがポツンと呟いた。
真実って何?
「セラフィ・…ですか?」
ナイトの前日、グレアムは側近で幼馴染のフレデリックにセラフィの素性を調べるよう頼んでいた。
「あぁ、今年16で明日からのナイトに出て来るんだ」
フレデリックは記録を調べてみたが、当然セラフィの名前を見つけることができなかった。
「登録されてませんが・…」
フレデリックの答えに、グレアムは眉を顰めた。
「そんなはずないだろう。いつもウィッチの森に薬草を摘みに来てるんだから」
「そう言われましても… 母親の名前がわかればもう少し詳しく調べられますが・・」
「聞いてない」
「では、明日会われたら聞いてみてください。でも、調べてどうするんです?」
フレデリックの問いに、グレアムはニッと笑って答えた。
「伴侶にする」
「…は?」
フレデリックの顔が一瞬タガがはずれたように呆然となったのに、いつも小言を言われ続けているグレアムは、してやったりとほくそ笑んだ。
「何か問題でもあるか?」
グレアムの問いに、フレデリックは慌てて首を振った。
「滅相もございません。毎年のナイトでグレアム様にウィッチを独り占めされて、あぶれては悔し涙を流していたウィザード達はもろ手を上げて歓迎することでございましょう」
フレデリックの皮肉に、グレアムは苦笑しながらも無礼な物言いを許した。
「明日が楽しみだな…」
「伴侶を発表されると、泣き崩れたウィッチを慰める為に、ウィザード達が張り切ることでしょう」
カーネリアンの繁栄のためには喜ばしいことだと、フレデリックは喜んだ。
しかし、ナイトにセラフィが現れることはなく、不機嫌の絶頂でグレアムは誰とも契ることなく、大酒を食らって十日十晩酔いつぶれてフレデリックをハラハラさせた。