うそつき・・・・
いつまでも こんなふうに
優しい気持ちのまま
二人 いられたらいいねって
言ってたよね
なのに何故?
今ひとりぼっち
僕を残し一人逝ってしまった君のうそを
今はまだ許せずにいる
心は君に囚われたまま
僕の時は あの日から
ずっと凍りついたまま
「すっげ・・ぇ・・・・」
恵夢が奏でるバラードの、流れるようなメロディーを聴いていた灯は、そう一言つぶやくと黙り込んでしまった。
「どうかな? ちょっと陰気かなと思ったんだけど、時間がなかったからさ・・・」
先生の判定を待つ子どものように、頬を紅潮させて恵夢は灯の反応をうかがった。
「すげぇよ・・・・メグ。すげぇ! 俺、なんか感動しちまって上手く言えないけど、イイよ。コレ。メロディーがきれいで、なんかたまんねぇ」
恵夢の両手を握り締めて、灯は目をウルウルさせていた。
「あ・・・ありがと・・・・そんなに誉められるとは思わなかったよ。じゃあ今度はトモの曲も聴かせてよ」
「お・・おぅ。メグのみたいにきれいなメロディーじゃないけど、頑張って作ったんだぜ」
ギターをかき鳴らして、灯は彼らしいポップなラブソングを歌った。ボーカルに自信があると言う言葉は伊達じゃなく、高過ぎず低過ぎずよく伸びる声質で、耳に心地よかった。
「じゃあ、明日クラブ説明会の後で、この2曲を持って乗り込んでやろうぜ」
こぶしを握り締めて一人で熱くなってる灯をなだめるように、恵夢は頭を撫でた。
「ハイハイ。ドウドウ。ヤクザの出入りじゃないんだから、乗り込むなんて言わないの」
「チェッ、子ども扱いするなよな」
プーと頬を膨らませる灯に『そんなトコが子どもだっての・・・・』などと思いながらも、灯の曲に伴奏をつけるべく、恵夢はピアノに向かった。
『キレイな手をしてるなぁ・・・・』
鍵盤の上を滑る、恵夢の長い指に目を奪われた灯は、思わず自分の節高で無骨な手を眺めた。
顔を上げると今度は少し伏し目がちにピアノを弾いている恵夢の横顔に目が釘づけになった。
『よく見ると顔もキレイじゃん・・・・』
きれいとか美人だなんて男にとって誉め言葉にはならないなんて言ったけど、恵夢に関しては充分に誉め言葉になるよな、などと、灯は恵夢に見惚れていた。