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店主の
前立腺がん治療記

 
  店主の前立腺癌治療記
 










 目次
〇 前立腺がん発見のきっかけ (健康診断)
〇 前立腺がんとPSAについて
〇 前立腺がんの病期 (ステージ)
〇 最初の泌尿器科受診とMRI検査
〇 針生検を受ける
〇 ガンの確定検査結果までに調べた事
〇 小線源療法 (ブラキセラピー) に関して
〇 小線源療法を行える病院探し
〇 参考となるサイトと書籍の一部
〇 針生検の結果 「前立腺ガンの告知を受ける」
〇 滋賀医科大学への問い合わせ
〇 転移検査と再度の岡本先生への連絡
〇 初めての滋賀医科大学病院での診察
〇 二度目の滋賀医科大学病院での診察
〇 入院前の検査
〇 入院
〇 密封小線源療法 (ブラキセラピー) の手術
〇 手術後
〇 退院
〇 退院後の生活
〇 手術後1ヶ月目の検診
〇 1ヶ月検診後の生活
〇 前立腺ガン治療でお悩みの方が最初にすべき事
〇 良い病院と医師にめぐり合う為に
〇 前立腺ガン治療で必ず知っておくべき事
〇 3ヶ月目の検診

〇 3ヶ月検診の後
〇 6ヶ月目の検診
〇 小線源療法の判り易い説明
〇 6ヶ月経過後の排尿状態とPSA値
〇 9ヶ月検診と、その後の排尿状態
〇 腺友倶楽部との懇親会
〇 インフルエンザの影響
〇 新しい治療法の出現?
〇 1年目の検診
〇 クライオ治療
〇 待機療法
○ 当サイトの読者から
〇 1年6ヶ月目の検診
〇 当サイトの読者との面会と滋賀連絡会
〇 外照射を受けた友人の話
〇 全摘出手術後にPSA再発した元同僚の話
〇 尿道フレアとユリーフ錠
〇 2年目の検診
〇 2年6ヶ月目の検診
〇 3年目の検診
〇 3年6ヶ月目の検診

〇 4年目の定期検診
〇 4年6ヶ月目の定期検診
〇 5年6ヶ月目のPSA値と晩期有害事象の話
〇 患者さんの奥様からの相談電話
〇 小線源療法と二次ガンのリスク
〇 6年6ヶ月目のPSA検査
〇 放射線治療の進化
〇 IMRT治療を受けた友人の状況
〇 西郷輝彦さん死亡のニュースを見て
〇 7年6ヶ月目のPSA値とEDに関して
〇 8年6ヶ月目のPSA値



 このページは当店の本業である釣りには関係が無い内容です。 ここには前立腺ガンを患った店主が、自分自身にとって最善な治療法に辿り着くまでの経緯と、自分が受けた滋賀医科大学での密封小線源療法 (ブラキセラピー) の治療体験、そしてその後の経過を記した前立腺ガン治療記を記載しております。 患者の方々がお書きになった前立腺ガン闘病記や体験記は多くありますが、興味のある方には当治療記も是非お読み頂きたいです。

 私は医者や専門家ではないので何の保証もできず責任も取れませんが、このサイトを御覧になっている方の中に前立腺ガンを患い、または疑いのある方がおられる場合、その方々の不安解消や再発・副作用の心配なく安心して受けられる治療法選択の参考となれば幸いです。

 なお、この治療記は2015年から記載を始めているので、その後の医学的常識や治療方法の発達により記載内容が時代にそぐわなくなっている場合も起こりますので御了承願います。

 
〇 前立腺がん発見のきっかけ (健康診断)

 2014年の秋に市の健康診断を受けに近くの内科開業医を訪れた際、「オプションの前立腺検査はどうされますか?」 とナースに尋ねられたのが前立腺ガン発見のきっかけである。 60歳という節目の年齢であった事と、亡くなった父が前立腺ガンを持っていたので検査を受ける事にした。 色々な検査を終えて 「これで終わりです」 と言われたのだが、前立腺の検査らしきものを受けた気がしないので尋ねたところ、「血液検査ですから、先ほどの採血で終っていますよ」 と言われ、1週間後には結果が出るが検査キットを持っている病院であれば即日結果が判るとの事でした。

 過去に健康診断で一度も問題が無かったという気の緩みからか、翌週の診断結果を聞きに行くのを忘れており、検査から2週間後に医院を訪れました。 胸のレントゲン・心電図・血液検査・尿検査の結果、通常の健康診断では中性脂肪値がほんの僅かに高いだけで他は全て正常だったのですが、「前立腺ガン検査のPSA値が8.54とチョット高いです」 と医師に告げられました。 「3割位の確率でガンが見つかるグレーゾーンの数値なので、専門の泌尿器科で精密検査を受けてください」 とも言われ、近くの私立総合病院の泌尿器科を紹介して頂いた。

 病院から帰ってパソコンでPSA値なるものを調べ、初めてその意味を理解すると同時にガンに対する不安を現実のものとして感ずる様になり、ここから前立腺ガン治療への道が始まりました。

 
〇 前立腺がんとPSAについて

 前立腺ガンとPSAの詳細に関しては、素人の私が述べるより様々なサイトや書籍で調べて頂く方が確実なのですが、この先が読み易い様に最低限の説明だけは書いておきます。

 まず前立腺ですが、膀胱のすぐ下側で尿道を取り巻いているクルミ大の臓器です。 排尿や射精に関係する男性にだけある臓器で、精液に含まれる前立腺液を分泌し、この前立腺液の中のタンパク質にPSA(前立腺特異抗原)という酵素があります。

 なぜ前立腺ガンができるのかは良く判っていませんが、男性ホルモンが関係している様です。 前立腺ガンは成長が遅い為に50歳以上の患者が多く、お亡くなりになってから前立腺ガンが判る例も少なくない (若くても発症する前立腺肉腫という珍しいガンもある)。 ただ一定以上になると急速に成長するらしく、他の臓器や血管・リンパ腺・骨が集中する股間部にあるので転移し易いという怖い面もある。 この為、何らかの自覚症状が出た時には既に転移している場合もあるので、やはり人間ドックや定期健康診断などの際に検査して早期発見・早期治療を心掛ける事が重要になります。

 本来PSAは血中に存在しない物質なのですが、前立腺ガンになると血中に流出するので腫瘍マーカーとして使われます。 ただ前立腺肥大などでも血中にPSAが含まれるのでガンを確定するものではありません。 検査によって出たSAPの数値によってガンの可能性が推測され、

 ・ 4未満        一応正常とされるがガンの疑いはゼロではない
 ・ 4以上 10未満   グレーゾーンと呼ばれ、3割位の確率でガンがある
 ・ 10以上 20未満  5割位の確率でガンがある
 ・ 20 以上       ガンの確率が5割以上となり、転移の恐れもある

とされています。 ただ最近では、40〜50歳代の人のグレーゾーン下限を2〜3位までに引き下げた方が良いという考え方になっている様です。

 早期発見の為に、男は50歳を過ぎたら毎年検査を受けるべきであり、特に直系親族に前立腺ガンを患った人がいる場合は40歳過ぎたら検査した方が良いです。 賛否両論ありますが、余命年数が短い75〜80歳位になっても検査で異常が無ければ、その後に前立腺ガンの疑いがでても人生に影響があまり無いから検査をしなくとも良いという考え方もあるそうです。 知らなければ精神的負担が無いし、知ってしまえば治療を受ける事での体力的負担も増えるので、余命が短い老齢の方は本当にガンであっも成長の遅い前立腺ガンなら知ら無い方が良いという事の様です。 ただ、あくまで検査を続けて異常が無かった人が老齢になった際の事ですので、誤解無き様に。

 
〇 前立腺がんの病期 (ステージ)

 前立腺ガンに限らず、病気の治療は病期 (ステージ)を考慮せねばなりません。 そこで前立腺ガンの病期に関しても少し述べておきます。

 病期を分類する基準としてガンの悪性度の割合があります。 ガンには悪性度が低くて正常細胞に近い高分化ガンから悪性度が高い低分化ガンまであり、これらを5段階に分けます。 細胞検査で最も多かった程度のガンと、2番目に多かった程度のガンの5段階区分の数値を足したものをグリソンスコア(GS)と呼び、悪性度の指標となっています。 たとえば悪性度が中位の3である中分化ガン一番多く、悪性度がやや高い4が二番目に多ければ、グリソンスコア7 (3+4)となります。 ただ、同じグリソンスコア7でも(3+4)と(4+3)では悪性度が異なる事も覚えておいてください。 グリソンスコアの他にも、生体検査で打った針の何本からガンが検出されたかの陽性率や、ガンの部位と広がり方等も分類の基となります。

 前立腺ガンの病期分類にはABCD分類・TNM分類・リスク別分類があますが、前立腺ガンに関する書籍やサイトではリスク別分類が一般的になっているようです。 リスク別分類は低リスク・中リスク・高リスクの3段階分類と、中リスク・高リスクを更にA・Bに分けた5段階分類があります。 それぞれの分類に関しては、調べて頂ければすぐに確認できるでしょう。 とりあえず、ここではPSA値とグリソンスコアを基にした5段階のリスク別分類を記しておきます。

 ・ 低リスク
   PSA値が10未満でグリソンスコア6以下
 ・ 中リスクA
   PSA値が10以上20未満でグリソンスコア6
    又は PSA値が10未満でグリソンスコア7
 ・ 中リスクB
   PSA値が10以上20未満でグリソンスコア7
 ・ 高リスクA
   PSA値が20以上 もしくは グリソンスコア 8以上
 ・ 高リスクB
   リンパ腺・骨・他の臓器などへ転移がある

 ガンが前立腺内に留まっているものを限局性ガンと呼び、ガンが前立腺の皮膜外まで浸み出している事を浸潤と言います。 単に皮膜外に出ただけなら皮膜外浸潤と呼び、周辺の組織にまでガンが広がったものは局所浸潤ガン→周囲浸潤ガン→転移ガンと進行していきます。 浸潤は上記リスクとある程度は比例すると思えますが、必ずしも合致するとは言い切れない様です。

 
〇 最初の泌尿器科受診とMRI検査

 私が紹介された総合病院の泌尿器科を訪れたのは、健康診断結果を聞いてから数日後でした。 担当の医師からは、PASの数値的にはグレーゾーンなのだが、グレーゾーンの中では高めの数値なのでガンの可能性が少し高いかもしれないと言われました。 とりあえず直腸側からの触診と腹側からの超音波検査を受けましたが、それらでは特に異常が見当たらないとの診断でした。 しかし、恥骨側にガンがあると判らないとの事で、翌週にMRI検査を受ける事になりました。

 MRI検査は動かず横になっているだけなので、特に苦痛も何もありませんでした。 検査結果は1週間後の診察の際に判るのですが、直系親族に前立腺ガン患者がいる人は同じ前立腺ガンを発症する確率が高く、PSA値からもガンの可能性を感じていたので、ネットで数多くのサイトを調べて前立腺ガンに関する知識を付けておく事にしました。 

 1週間後にMRI検査の結果を聞きに行くと、画像の1枚に白く光っている部分があると告げられ、それを見せてもらった。 やはり恥骨側の部位にあって大きさは1cm位だろうとの事で、ガンの可能性はかなり高いらしい。 詳しくは細胞を調べないと確定できない為に、細胞を取る針生検を受ける事を勧められた。 針生検は直腸側から針を刺す方式と会陰部(睾丸と肛門の間の部位)から針を刺す方式があるそうで、この病院では直腸側からの方式であるとの事だった。 ネットで調べていた時に 「針生検は寝ているガンを起こしてしまう」 「直腸側からの針生検は感染症を患う場合がある」 等と一部に否定的な内容の記事があったので、とりえずは考慮しますと返事しておきました。

 
〇 針生検を受ける

 針生検とは、針を使った生体組織検査 (バイオプシー)の略語です。  針生検に関しては前記の様な否定的な意見もあるのですが、細胞を調べてガンである事を確定したり病期を判断しなければ治療方針を決める事ができないので、グレーゾーンの患者には他に疑う要因が無くとも針生検を行う病院が多い様です。 調べたところ、針生検で前立腺が傷付くとしばらくの間はPAS値が上がるそうですが、ガンが見つからなくとも針生検から間をおかずにPSA検査をして数値が上昇しているからと再度の針生検を勧めるヤブ医者が存在したらしく、これが過剰診療になるとして否定的な意見が出てきたのだと思えます。 よって、PSA値が非常に高い場合だけでなく、定期検査毎に数値が上昇している場合や、私の様にMRI検査の結果からでも前立腺ガンの疑いが濃い場合は迷う事無く針生検を受けるべきだと判断し、翌日に病院へ行って針生検の申し込み手続きをしてきました。

 なお、私は多少痔の気があるのですが、痔の疾患がある人は直腸側からの針生検で、針を刺した部位の出血が多くなる事があると担当医に言われました。 実際の前立腺ガン治療でも直腸内に器具を挿入する事が多く、検査や治療・手術の際に下剤・浣腸などもあるので肛門への負担は多くなります。 よって痔の疾患がある人は、予め症状を改善させておく方が良いでしょう。

 針生検は日帰りで行う病院と万一の感染症等を考えて念の為に1〜2日入院させる病院があり、私の行った私立総合病院は1日の入院でした。 入院は申し込みから2週間後でしたが、入院の為の各種血液検査・レントゲン・心電図測定などを申し込んだ日に行い、病院事務局からは 「もし感染症等で入院が長引いて治療費が高額になっても困らない様に、高額治療費制度を使えるようにしておいて下さい」 と教えられた。 私の場合は国民健康保険なので、その日のうちに市役所へ行って国民健康保険限度額適応認定書の交付を受けてきた。 これは今回の検査入院では使わなかったが、ガン治療の本番では使う事になったので予め用意しておいて無駄ではありませんでした。

 針生検の当日は午前中に入院して浣腸やら点滴を受け、午後に泌尿器科の治療室で針生検を受けました。 産婦人科での妊婦さんの様に治療台の上で股を開いた状態となり、超音波で画像を映しながら針を打つ生検銃 (バイオプシーガン)なる物を直腸に挿入して行うのだが、局所麻酔の為に痛みは感じません。 針を打ち込むパチンパチンと言う音が聞こえる事と、何となく股間に違和感を感ずるだけであり、治療室に入ってから出るまでに30分程度で終りました。 打った針は10本で、前立腺の大きさにもよるだろうが10〜12本なら平均的本数の様である。 少ないと8本で多いと16本位とされているが、少な過ぎではガンにヒットする確率が低くなり、多すぎても必要以上に身体にダメージを与えるだけなので、予め何本打つのか説明を聞いたうえで針生検を受けるべきと思えます。

 病室に戻ってからは点滴を受けながらしばらく安静にするだけでした。 排尿に問題が起きていないかを調べる為にトイレで尿瓶を使って尿量をチェックする他は何もなく、夕方には軽い食事を摂る事もできて翌日の午前中に退院しました。 針生検当日でも特に痛みを感ずる事はなく血尿も起こりませんでしたが、退院後1〜2週間位は股間に微妙な違和感が残り、しばらくの間は精液に血が混じりました。 針生検の体験記はサイトを探してもあまり見かけませんが、まあこの程度が普通の様です。

 
〇 ガンの確定検査結果までに調べた事


 針生検による確定結果がでるまでに2週間位あり、ガンでない事を祈りつつも可能性が高いと感じていたので不安は高まっていきました。 ガンが確定した場合の事を考えて既に前立腺ガンの治療に関してかなり調べていたのですが、不安解消の為にも徹底的に前立腺ガン治療法を調べる事にしました。 医師・病院・患者のサイトを中心に学術論文・医療機器メーカーのサイトから怪しい民間療法のサイトまで300以上を調べてみたところ、転移が無い前立腺ガンの治療には全摘出手術・放射線治療・ホルモン療法・待機療法が代表的であり、根治の可能性も十分にある事が判ってきました。

 私が前立腺ガンである場合、PSA値から予想する病期分類だと浸潤の無い低リスクか中リスクAの可能性が高く、悪くとも中リスクB程度だろうと考えていました。 そこで、更にその病期に適した治療法に絞って調べてみたところ、全摘出手術・外部照射の放射線療法・内部照射の放射線療法が候補として考えられました。 治療法に関しては病期分類の前提条件が異なれば選択肢も変わりますし、患者によっては他の病気等の理由で行えない治療法もあるので、詳しくは専門のサイトや書籍で調べて確認して頂き、以下の記述はあくまで参考としてお読み下さい。

・ 全摘出手術

 前立腺の全摘出手術に関して調べたところ、通常の外科手術でもロボット支援手術のダビンチであっても低・中リスクの患者の非再発率が70〜75%程度であり、根治する可能性が非常に高いとは言えない事が判りました。 更に入院期間が長く、排尿機能等への影響も大きいので治療後のQOL (クオリティ オブ ライフ ・ 高い生活の質)が望み難いというデメリットもあった。 ガン細胞が前立腺の外側へ浸潤している恐れがある場合、再発を起こさぬ様に前立腺周囲の組織を多く切除すればQOLが低下し、QOLを重視して少なく切除すればガン細胞が残って再発する危険性が高まるという事が起こります。 妻の知り合いの御主人が再発予防の為に周辺細胞も多めに切除され、仕事を持つ50代の年齢だがオムツの生活で大変であるとも聞いていました。 私の場合はあえて全摘出手術を選ばねばならない理由が無かったので、私の選択肢からは外しました。

・ 放射線治療 (外部照射)

 外部照射の放射線治療は文字通り身体の外側から放射線を当てる治療法で、コンピューター断層撮影を基にして多方向からガンに放射線を照射する3D-CRTが中心であるが、現在は更に発展したIMRT (強度変調放射線治療) を導入する病院も増えてきており、保険適応もある。 しかし、いずれも確実にガンを根絶するには放射線量が不足しているとも考えられており、呼吸するだけでも動いて位置が変わる前立腺へ正確に放射線を照射できるかの問題もあった。 この為、実績がある技術の高い病院ならば低リスク前立腺ガンに対する非再発率は90%台だという記事も見たが、治療実績が少ない技術不足の施設やリスクが高い患者の場合は60%以下となる場合もある様だった。 前立腺以外の直腸や膀胱などに放射線が当る事はどうしても避けられず、その影響によるQOL問題もありました。 また治療の為に土曜・日曜を除いて1〜2ヶ月間毎日通院せねばならないので、私一人で店を営んでいる個人経営者としては通院も負担になります。 これらから判断して、私にとってのベストな治療法とは思えませんでした。

・ 放射線治療 (内部照射)

 内部照射の放射線治療は、身体の中に放射線源を入れて内側から放射線を当る治療法であり、HDR (高線量率組織内照射法)とLDR (低線量率組織内照射法) の2種類があります。 HDRは主に中リスク・高リスクの前立腺ガンに行われている治療法であり、LDRの方は主に低リスク・中リスク行われる治療法で密封小線源療法 (小線源療法・シード療法・ブラキセラピー・ブラキ) と呼ばれています。

 HDRは何本もの注射針の様なニードル(針)を前立腺に刺入し、その中に高線量の放射性物質を何度か通して、ガンに短時間で高い放射線を照射する治療を2日間に分けて行う治療法である。 リスクの高い前立腺ガン患者に対して外部照射との併用及びホルモン療法も加えたトリモダリティで行われる治療法だが、日本国内では実施している施設が少ない様である。 ちなみに、お笑い芸人の「間 寛平」氏は地球一周のアースマラソン中に前立腺ガンが見つかり、病期が中リスクB位だった様でHDRと外部照射併用の治療を受けたそうです。

 LDRとも呼ばれる密封小線源療法もニードル(針)を前立腺に刺入する事ではHDRと同じですが、その中を通して非常に弱い放射線を出す小さなカプセルを前立腺内へ永久的に埋め込み、1年近くをかけてジックリと放射線を当て続ける治療法である。 低リスク・中リスクAであれば非再発率90%以上ともされており、QOLが高く健康保険の適応もある。 私の予想の病期であればこのLDR・密封小線源療法 (以下は小線源療法、またはブラキセラピーと記します) の方になるだろうと思い、またこの治療法を行う医療施設が増えているという事なので、小線源療法を治療法選択の第一候補として考える事にしました。

・ その他

 すぐに根治治療をせずにガンの進行具合の様子を見る待機療法があります(現在は名称が変わっている筈です)。 余命が短い高年齢でPSA値も低ければ選択肢に入れる可能性はありますが、私の年齢とPSA値からだと病期が進行して根治が困難になるリスクが高いと思われるので選択肢から外しました。

 ホルモン療法は男性ホルモンを抑制して前立腺ガンの成長を抑えたり弱らせるものであり、根治させる治療法ではない為に選択から外しました。 もしガンが進行しているならば他の治療法と合わせて行う場合もあるでしょうが、年齢的・体力的に他の治療が受けられないとか転移がある為に根治を望めない場合を除いては積極的に受けるべき治療ではないと思えました。

 健康保険が効かない最先端医療とか高度先進医療と呼ばれる重粒子線治療や陽子線治療もあるので調べてみたのですが(現在は保険適応になっている)、3D-CRTやIMRTと同様に外部照射なので正確にガンへ照射できるのかの問題があると思えました。 非再発率に関して調べると、再発が極めて少ない治療後2年位までのデータが多いので疑問を感じ、5年経過後のデータを載せている医療機関もあったのですが全摘出手術と同程度の非再発率でした。 やはり、前立腺ガン患者らが作るサイトにも 「予想以上に再発が起きていると思える」 という内容の記事があったので候補から外しましたが、この時に 「たとえ高度先進医療と言われる治療法であっても、病気の種類や部位によっては最善治療となり得ない場合がある」 という事を学びました。

 HIFE (ハイフ ・高密度焦点式超音波療法) は超音波を集束照射する事で90℃前後の熱を発生させて、熱に弱いガン細胞をやっつける治療法である。 まあ、身体の中で電子レンジを作動させる様なものと考えれば良いでしょう。 低・中リスクでの非再発率は85%位らしいが、放射線治療と異なり再発しても再治療が何回もできるメリットがあるそうだ。 ただ、その治療を行う病院が少なくて実績やQOLのデータを探しても不足しており、治療の有効性を十分に検討できませんでした。 調べている時点では保険適応外でもあったので、何年か先であれば選択肢に入れるかもしれませんが今回の私としては候補から外しました。

 免疫療法も話題になっているので調べましたが、根治する確証は全く得られませんでした。 100人に1人位はガンが完全に無くなる人が居るらしいが、ガンが小さくなるのが2〜3割位までで、大半は現状維持か効果がなくガンが進行していった人らしい。 将来的な可能性は感ずるので、末期ガンや転移等で根治療法が望めずに抗ガン剤治療位しか施せない方ならば試す価値はあるのかもしれない。 但し、他に根治療法が選択できる方であれば、治る確証の無い治療に健康保険適用外の高額医療費を払ってまで治療を受ける価値があるのかは疑問に感じました。

 胃ガン等では治療をしないのにガンが消滅してしまう人が100人に1人程度は存在るらしい。 当店のお客様で発見から半年後に胃を半分切除した方なのだが、切除した胃の細胞を調べたら何故かガンが消えてしまっていたそうだし、友人の知り合いも胃ガンが見つかってから1年後に消滅していた方がおられる。 この様な事があるので、効果の無い怪しげな治療法でも僅かだが完治してしまう人が出現する。 その事だけを取り上げて話題となる事が多いのだが、完治した人がいるのは事実でも100人1000人に1人か、それより低い確率かもしれず、その治療法の効果であるという確証は何も無い。 それ故に、興味を持っても確立された治療法以外のものを無闇に信じ込まない様にせねばならないと思います。

 ガンの治療に関して調べていると、非再発率の他に生存率のデータを見る事があります。 あくまで生存率の為に死因が他の病気・事故でもカウントされてしまうらしく、私は参考程度のデータとして見ていました。 生死のデータなので、極端な言い方をすれば治療を受けた患者の半分が5年後に再発しても、全員が生きておれば5年後の生存率は100%となります。 それを考えると完治が望めない末期ガンの治療法であれば生存率は重要になるのですが、完治する可能性がある病期であれば生存率よりも非再発率のデータを重視して根治を望む治療法を調べて決めるべきだと思いました。

 
〇 小線源療法 (ブラキセラピー) に関して

 私にとっての前立腺ガン治療法の有力候補となった小線源療法 (ブラキセラピー) に関して更にネットで詳しく調べたところ、シードと呼ばれる放射線源のカプセル50〜100個位を前立腺に埋め込むもので、どんなに前立腺が動こうとも常にガンへ放射線を照射し続ける事ができて、しかも直腸や膀胱へ不必要に当る放射線量も少ないという治療法でした。 ガンが存在する部位に放射線源を留置すれば一番強い放射線がガンへ直接当り、周辺臓器は放射線源から離れているので放射線の影響を受ける確率が低くなるメリットもあります。 放射線治療は大きな機械で身体の外部から放射線を当てるイメージが強く、当然の様にガンへたどり着く前に不必要な部位に放射線が当ってしまうものだと思い込んでいたので、小線源療法を知ったときは 「目からウロコ」 状態でした。

 適正な数のシードを正確に埋め込む治療を施せば、外部照射よりも確実に根治できる線量の放射線をガンに当てる事が可能となる。 この為に非再発率は極めて高くなり、低リスクであれば小線源の単独療法でも98%以上を誇る医療機関があるとの記述も見つけました。 中リスクになると皮膜外浸潤の可能性もあり、より高い線量を必用とする為に外部照射の併用が基本となるそうです。 無論、中リスクであっても小線源療法単独での根治治療が可能なのですが、その場合は小線源療法としては高線量となるシードを最適位置に正確に埋め込む必要があり、より技術の高い病院で治療を受けねばならない事も判ってきました。

 放射線源となるシードは長さ4.5mm・太さ0.8mm位のチタン製のカプセルで、その中に放射性物質のヨード125を含ませた銀が封入されている物です。 注射針の様なニードルを会陰部から前立腺に何本も刺し、そのニードルの中を通してピストンで押し出す様にしてシードを留置してくるのです。 超音波によってモニターへ映し出された画像を確認しながら放射線の照射域を医療用コンピューターで計算し、泌尿器科医と放射線科医がコンビを組んで手術を行います。 手術と言っても切開するわけではないので患者への身体的負担は非常に少ないのですが、モニターの画像を頼りに小さくて動きやすい前立腺の中に50〜100個ものシードを正確に埋め込むのは非常に高い技術を要する事は容易に考えられます。 それでも、「ブラキなんかは簡単でどんな医者でもできる」 と言い放つ泌尿器科医師が存在するらしいです。 だからこそ自分自身で詳しく調べ、それぞれの治療法の専門的知識のある病院でセカンドオピニオンを受ける必要があるのだと思います。

 ヨード125の放射線は強く作用する照射距離が線源から5mm位と短いので、他の臓器への影響が非常に少ないという特徴があります。 更に半減期が約2ヶ月と短いのも特徴であり、10ヶ月位かけてガンをやっつけてくれますが、1年後には放射線はほぼ出なくなるので完全に無害となります。 シードと呼ばれるカプセルはそのまま体内に留置されるのですが、骨折の接合材や人工骨にも使われるチタンは身体への影響が全く無いとの事です。 なお、ブラキセラピーのブラキとはギリシャ語が語源の「短い」という意味で、照射距離が短い放射線を用いる事から付いた名前だそうです。

 放射線量はグレーという単位で表現され、小線源療法では140〜150グレーが基準だった様ですが、最近の技術の高い医療施設では確実に根治する180〜190グレーを目標としているそうです。 この放射線量の何グレーかとか、他の照射法との線量比較の生物学的効果線量(BED)とか、非常に専門的な話になると素人の私では上手く説明できませんので、これらについては専門書や医療関係のサイトで確認願います。

 
〇 小線源療法を行える病院探し


 小線源療法は1970年代から海外で研究されており、1990年代中頃には技術的な基礎ができたのですが、日本においては法律上の問題で2003年から行われ始めた治療法です。 私が前立腺ガンの治療法を調べていた2014年には小線源療法を行う病院が全国的に増え始めていたのですが、やはり治療実績の多い病院を探す必要があると思いました。 私の住む愛知県では4施設ありましたが、調べたところでは 「年数は長いが年間の治療実績数があまり多くない」 「小線源療法よりダビンチに主力をおいている為か、実績を調べてもよく判らない」 「年数も年間実績数もあるものの、非再発率のデータを調べたがサイトでは見つからない」 「まだ導入して間もない為に、実績が少ない」 という結果でした。 その時点のデータからだと、病期が最初期の低リスクならば問題ないだろうと思えましたが、中リスクの場合だと何れの施設もプラス要素がもう少し欲しいと感じました。

 私の住居は愛知県ですが県境の在住ですので、隣県の岐阜県も調べてみました。 調べた当時の岐阜県では3施設あり、その中の2つはまだ実績が少なかったのですが、一番実績のある岐阜大学病院が 「低リスクには他の治療法を用いず全て小線源療法で治療する方針」 との事でした。 年間の治療実績数が多いとは言えないものの非常に力を入れている事が判ったので、もし私が前立腺ガンで治療を受ける場合は候補の一つとして考えても良かろうと思いました。

 小線源療法の実績が多い医療施設の代表格に東京慈恵会医科大学や国立東京医療センター等がありましたが、私の住む愛知県からは遠方の医療機関ばかりなのがネックでした。 ところが私がバス釣りで数十年も通い続けた琵琶湖がある滋賀県の滋賀医科大学病院が高い実績を誇っている事が判ったのです。 岡本圭生という先生が担当されており、他の前立腺ガン関係のサイトを調べても御名前が度々出てきており、高い実績を出されているそうだ。 そこで、私が前立腺ガンであると確定した場合は滋賀医科大学の岡本先生へ小線源療法による治療の相談をする事に決め、ともかく針生検の結果を待つ事にしました。

 
〇 参考となるサイトと書籍の一部

 ・ブラキサポート
 ・腺友ネット
 ・前立腺がんの小線源療法 (日本メジフィジックス株式会社)

 ・前立腺ガン 最善医療のすすめ 藤野邦夫 著 (実業之日本社 )
(最近は増刷されていないので本屋で入手し難くなっていますがAmazonで中古品が入手可能です。 また、キンドル版がかなりお得な値段で読めます。
トップページ一番下のアマゾン
をクリックして本のタイトルを入れれば直ぐに検索できます。)

 上記以外にも参考となるサイト・書籍は多くあるので、調べてみてください。

 
〇 針生検の結果 「前立腺ガンの告知を受ける」

 針生検の結果を聞きに総合病院の泌尿器科へ一人で行くと、診察室へ入ると同時に担当の医師から 「お一人ですか、奥さんは一緒ではないのですか?」 と言われ、その時点でガンだったと判り、「やはりガンでしたか」 と聞き返しました。 予め病期や治療法に関して調べまくっていた為なのか、不思議な事に強いショックに襲われたり不安に落ち込む様な事はありませんでした。

 担当医師は簡単な説明を始められたが、こちらはネットで調べた内容ではあるが専門外の医師より詳しいのではないかと自分で思えるほどの予備知識をつけていたので、すぐさま先生を質問攻めにした。 「ヒットした針は何本ですか? グリソンスコアは? 陽性率は? TNM分類は? ガンの位置は? 浸潤の有無は? etc.・・・ 」 と矢継ぎ早に聞き、「まずは転移の検査ですね、何時・どのような検査をするのですか?」 と尋ねた。 結局、転移の恐れが無い程度ではあるが、数日後に造影剤を使ったCTを撮り、その結果をみてから治療法を決める事になると言われました。

 ガンがヒットしたのは針生検の針10本中3本で、グリソンスコアは7(3+3が2本、3+4が1本)でした。 ガン細胞の陽性率や採取された位置関係も含め、前立腺の外側への浸潤が無い中リスクA程度のガンであるとされ、私の予想範囲内の病期であった。 妻にはガンの告知を受けた事を病院から電話で連絡したのだが、ある程度の覚悟はあったと思うがやはりショックだったらしい。 ただ、私自身としては既にその病期なら小線源療法で根治可能であると考えていたので、心配しなくとも大丈夫だと告げて帰宅した。

 
〇 滋賀医科大学 への問い合わせ

 滋賀医科大学サイト内にあった「小線源治療を希望される患者さんへ」 のページ末尾に、担当の岡本先生への問い合わせ先としてメールアドレスが記載してありました。 そこでガン告知を受けた日に、病期に関して自分で判った範囲の全てと、小線源療法による根治可能性などに関しての疑問や知りたい事を質問メールとしてパソコンから送ってみたところ、タイミン良くメールを読んで頂けた様で直ぐに返信メールを頂戴致しました。

 とても丁寧な返信内容で、全ての質問に対し詳しくてお答え頂きました。 また、私が伝えた病期であれば 「小線源療法単独で十分に根治可能と思えます」 とも書かれており、非常に安心感を持ったので、CT検査の結果が出た後に診察を受けたい旨を再度メールでお伝えしておいた。 思い返すと、この時点が既にセカンドオピニオンだったと言えるだろう。

 とりあえず心配性である実家の母以外の家族にはガンの事を伝えておいたのだが、妻のお義母さんから 「NHK教育テレビで前立腺ガンの特集番組が放映される」 と教えて頂いた。 番組はどこかのホールで行われたフォーラムと治療を受けた方の実体験談で構成されており、フォーラムには多くの前立腺ガン患者と家族や医師が参加していました。 患者の会の代表と各治療法の専門医が何人か壇上におられて説明やトークをなさっていたのだが、小線源療法の専門医としてその壇上に滋賀医大の岡本先生その人であり、実体験者の方の中にも岡本先生の患者さんがいました。 一緒にテレビを観ていた妻は、私が診察・治療を受けようと考えている医師がこの様なフォーラムや特集番組にも出ておられる医師である事を知って少し安心した様子でした。

 
〇 転移検査と再度の岡本先生への連絡

 転移の検査には骨シンチや血液検査など様々な検査があるらしいのだが、私の病期であれば内蔵とリンパ節に転移が無いかを調べるだけで十分らしく造影剤を使ったCTだけであった。 CT検査は造影剤の影響で少し身体が火照る様な感じがあった他は苦痛も傷みも無く40〜50分で済んだ。 待ち時間に偶然にも警察官時代の同期生の友人に会ったのだが、彼は心筋梗塞の疑いでCT検査を受けに来ていたそうで、お互いに年を感じた (友人はその後、幸いにも心筋梗塞ではないと診断されたそうだ)。

 CTの数日後に検査結果を聞きに行くと、担当の先生から転移は無かったと告げられた。 転移はまずあり得ないとは言われていたが、ひとまず安堵する。 「摘出手術しますか? 放射線治療を御希望ならなら市内にIMRTを導入している施設があるので紹介しますが・・・」 と尋ねられたが、私は小線源療法を選択して滋賀医科大学での治療を考えている事を伝え、決まれば紹介状を書いて頂きたいとお願いした。

 早速その日に岡本先生へメールを送り、転移が無かった事と診察を受けたい旨を連絡したところ、 「小線源療法外来に予約を入れておきましょうか?」 との返事を頂いたので、迷う事無くお願いした。 その小線源療法外来というのは毎週1回ある小線源療法の治療希望者への専門外来診察なのだが、その曜日が偶然にも私の店の定休日と同じであり、とても都合が良かったです。

 その後、生検標本のプレパラートやMRI・CTの画像等の必用資料のリストをメールで送って頂いた。 翌日そのリストを書き出して紹介状と一緒にお借りする事を総合病院の方へ依頼してきたが、担当医師は 「その様な専門分野で名の通っている医師が、個人からのメールに直接対応してくれる事は殆ど有りませんよ」 と驚いていました。 

 岡本先生とは、「すぐに連絡が付き、ご親切なメールでの交信ができた」 「偶然にも先生が出演されているTV番組がその時期に放映された」 「初診の日がこちらの定休日で非常に都合の良い日程」 と、物事がスムーズに進んでいった。 妻は 「運命的なものを感ずる」 とさえ言い、私のガンに対する不安がどんどん減っていく様子なので、それが何よりも嬉しかったですね。

 
〇 初めての滋賀医科大学病院での診察

 診察の予約をしてあった日は、大荒れの天気になると前日からニュースや天気予報で騒いでいる日でした。 高速道路が通行止めになる恐れもあったので早めに出発したのですが、運良く予報ほどは荒れず余裕をもって病院に到着する事が出来ました。

 午前中に外来受付で紹介状と資料を渡してから数十分待っていると、予約時間より早かったが呼ばれて初めての診察を受けました。 岡本先生は、「メールで相談なされた愛知県の方ですね? 詳しく調べないと断言は出来ませんが、頂いた資料を今見る限りではブラキの単独療法で対応できると思います。」 と仰ってくださった。 その後、小線源療法に関する資料や映像を沢山見せて頂いたが、ほとんど既に調べて確認している内容であったので、私は治療法に関する説明がほぼ不要な患者だった様です。 とりあえずPSA値測定の血液検査とレントゲン撮影を受け、午後から再度診察を受ける事になったので、病院の最上階にあるレストランで琵琶湖を眺めながら妻と昼食をとって午後の診察を待ちました。

 午後の診察ではPSA値が7.146と健康診断時より下がっている事が判ったが、PSA値は測定機器により差があり、長時間自転車に乗って前立腺を刺激したり射精したりすると数値が上がるので、同一医療施設で同じ条件で測らないと数値にバラつきが出る様である。 今回の岡本先生の診察では、「1〜2年位なら転移の恐れが無い程度なので慌てる心配はありません。 次回の診察までに細かく調べて検討しますが、まずブラキ単独の治療で問題ないでしょう。 万一があっても外部照射を併用すれば根治できます。」 と断言して下さったので、その時点で正式に小線源療法 (ブラキセラピー)の治療をお願いしました。

 
〇 二度目の滋賀医科大学病院での診察

 二度目の検査は私1人で病院へ行きました。 今回も血液検査を行ったが、SPA値は7.841と1回目よりは低く2回目より高い数値であったが、外的要因でも数値が変わる事を聞いているので気にはなりません。 詳しい検査結果から、間違いなくグリソンスコア7の中リスク病期であり、浸潤もないという診断でした。 中リスクとなる要因はグリソンスコアのみだったので、リスクをA・Bに分けると軽い方の中リスクAである。 国際ガン連合 (UCII) のTNM分類だと 「T2a・N0・M0」 であり、日本病理学界と日本泌尿器学会のABCD分類だと 「B1」 にあたる病期で、世間一般で初期だの末期だのと言い方があるが、それならば初期と中期の間位でしょう。

 岡本先生は、低リスクはもちろんの事、中リスクもAだけでなく多くの中リスクBの患者さんまで小線源療法単独で治療なさっているそうだ。 ただし、小線源療法単独でリスクが高くなっている患者の前立腺ガンを確実に根治させる為には、小線源療法としては高線量のシードを極めて高い精度で前立腺に埋め込む技術が必要になります。 医学的には素人の私ですが、岡本先生の治療は小線源療法であっても密封式高線量組織内照射法と言うべきものである様に思えました。 私と同じ様な中リスクの患者の場合は、他の病院だと小線源療法単独ではなく外部照射を併用するのが一般的です。 当然の様に外部照射の影響で直腸・膀胱に対する副作用のリスクは増えるだろうし、時間的・経済的な負担も増します。 それを考えると数ヶ月間ほぼ毎日の様に前立腺ガン関係のサイトを調べまくった結果での選択が間違いでなかったと確信しました。

 私が診察を受けた時点で、岡本先生は小線源療法単独及び他の治療法を併用したトリモダリティを含めて10年間で600例以上の治療を行われ、その中で再びPAS値が上がって再発と診断した患者さんが10人おられるそうですが、それは極めて少ない非再発率になります。 神様ではないのですから非再発率のデータが100%でないのは止むを得ない事ですが、小線源療法単独が適応できる低リスクや中リスクの患者ならば、ほぼ100%の確率で根治可能と考えても良いのではないかと思えます。

 さて肝心の私の方は翌年春に入院して治療する事に決まりましたが、1〜2年は転移するような事はないから心配ないと断言されていたので、待つ日々も不安無く過ごせました。 手術費用は本来なら100万円を超えるのですが、保険適応があるので3割負担なら30万円台となり、更に前述の高額医療費制度を利用すれば本人の収入にもよるが数万円〜十数万円程度になります。 詳しくは入院窓口で相談すれば概ねの費用を計算してくれるので安心です。

 
〇 入院前の検査

 手術の2週間前に、前立腺の大きさ・形状等を確認して治療に必要なシードの数を決める為のプレプランニングという検査を受けました。 直腸側からの超音波による画像をモニターへ映し出して岡本先生とコンビを組む放射線科の河野先生とで行われるのですが、ほんの数十分で終わります。 この検査による前立腺のデータは医療用コンピューターに取り込まれ、計算された結果で必用な数のシードをアメリカへ発注するのである。 日本で使われるシードの放射線物質はヨード125で放射線の半減期が約2ヶ月と短い。 つまり一定の期間以上保存しておくと使えなくなる為に、前回の診察時に 「発注以降に手術が予定通りできないとシードが賞味期限切れになって使えなくなる場合があり、その際は保険も効かず実費負担となる可能性があるので手術予定日にインフルエンザ等で寝込まない様にしてください」 と言われていました。  ですので、手術までの2週間は体調に十分注意せねばなりません。 そこで1ヶ月前の診察以降は外出時に必ずマスクを着用し、食事による栄養補給まで気を配っていました。 また、手術前は市販の風邪薬などを含めて薬の服用が制限されるので、もし他の病気で常用する薬がある場合は予め先生と相談する必要があります。

 この日の検査の際に生まれて初めて尿道カテーテルなる物を入れたのだが、あまり気持ちの良いものではありませんでしたね。 「ガスを注入」 との声が聞こえていたが、これは検査時に前立腺が動かない様にする為に、カテーテルからガスを膀胱内に入れて膨らませたのだと思える。 なぜならば、検査後トイレで排尿した際に残っていたと思われるガスが出て、まるでペニスでオナラをしたみたいな非常に変な感覚の体験をしたからである。

 
〇 入院

 入院は私自身が車を運転して妻と一緒に病院まで行きましたが、治療後の2日間は放射線管理の関係で自由に病室への出入りができない事もあり、妻には乗っていった車で夕方に帰宅してもらった。 午前中に入院手続きをして直ぐに病室へ案内される。 小線源療法の入院は個室が原則なのだが、個室利用の差額費用は入院初日分だけとの事であった。 要は放射線管理の関係で強制隔離状態となるので、手術後は患者の都合での個室利用ではないという訳です。

 指定された時間に病棟の浴場でシャワーを浴びて身体を清潔にし(入浴も可能だった)、その後ナースが会陰部の除毛をしました。 若くて可愛いナースが電気シェーバーの様な物で毛剃りしてくれるのですが、チョット恥ずかしい気がしますね。 軽い夕食後から経口腸管洗浄剤なるものを飲みます。 大腸検査を受ける際に飲まれた経験のある方もおられると思うが、スポーツドリンクの様な味の液体2リットルを2時間位かけて飲むもので、はっきり言えば下剤です。 排便の最後はほぼ透明な液体しか出なくなるが、効き目が長いのでトイレに行かずに熟睡できたのは深夜でした。 ちなみに私が飲んだ腸管洗浄剤には製造メーカーが「味の素」製薬と書かれており、「味の素」が薬を作っている事を初めて知って少し驚きました。

 翌朝からは絶食で、ダメ押しの浣腸があった。 前立腺の画像を映しながら手術するので、その際に僅かでも便が残っている事による画像への影響をなくす為だそうだ。 浣腸してから3分位は我慢して下さいと言われ、トイレで立っていると良いですよとも言われたが、前夜の腸管洗浄剤の影響もあって1〜2分位が限界であり、トイレで立っていてくださいと言われた意味もよ〜く判りました。

 
〇 密封小線源療法 (ブラキセラピー) の手術

 手術当日は予定通りの午後1時頃に点滴を受けながら歩いて手術室に入りました。 、いわゆる手術室のイメージとは異なって前立腺の治療室といった雰囲気の部屋であり、前回の検査をしたのと同じ部屋と思われるので緊張はなかったです。 入室して直ぐ腰に半身麻酔の注射を打ち、十数分後には横になって手術の準備が始まりましたが、麻酔の為に動けず何も出来ないので 「マナ板の上の鯉」 状態であった。

 医療機器メーカーからの見学者が1人来ていたので、先生が説明しながら準備を始められた。 岡本先生と河野先生の間では、B(ラージビー)の〇〇(数字)、f(スモールエフ)の〇〇等の様なアルファベットの大文字・小文字と数字の言葉が交わされていたが、これは前回の検査時にも聞いており、シードを埋め込む位置関係の事の様だ。 いつ始まるのかと思いながら僅かに見えるモニターの画面に目をやると、シードを埋め込むニードル(針)が既に前立腺に何本も刺入されており、まるで竹林の様に映っていた。 既に手術が始まっていたのに痛みも無く全く気付かなかったのであり、麻酔が効いているから当然なのだろうが、やはりチョット驚きました。

 岡本先生は、アメリカのマウントサイナイ医科大学を中心に開発されたリアルタイム術中計画法を採用し、更にそれを発展させた独自の治療プログラムによってシードの埋め込みを進めていきます。 万一にも皮膜外浸潤があっても前立腺の皮膜から飛び出しているガンはせいぜい1〜2mm位であり、シードから発せられるガンに有効な放射線の照射距離が短くとも、皮膜ギリギリの辺縁域にシードを埋め込めれば問題なくガンを根絶できる。 しかし、モニター画像を頼りに皮一枚の部位にシードを埋め込むのは難しく、深過ぎれば浸潤したガンに放射線が強く当らず、浅過ぎれば皮膜を破ってシードが前立腺から抜け落ちてしまう事が起こる場合もあります。 この辺縁域へのシード挿入は再発や転移の可能性を無くす為の肝心な部分であり、完璧な治療プログラムと確実な医師の腕が組み合わせが重要なのだと思いました。

 手術開始から1時間ほど経過した頃に、「難しい外側は終わりましたよ、あと少しですから」 と声を掛けられ、それから数十分後に 「終了しました、完璧ですよ」 と岡本先生から告げられた。 先生と握手してからストレッチャーに乗せられ手術室を出たが、室内の時計で入室から退室までほぼ2時間と確認していたので、実際の手術時間は1時間半位だったと思えます。

 その後はストレッチャーで移動してレントゲンとCTを撮りに行き、撮影後に病室へ戻りました。 病室ではナース達が、「シード何本だったの?」 「93本よ」 などと会話していた。 本やネットには60〜80本のシードを埋め込むのに概ね1時間半と書かれていたので、同じ位の時間で90本以上を正確に埋め込む岡本先生と河野先生のコンビの技術は完成の域に達していると思え、手術結果に不安を持つ事は一切ありませんでしたね。 なお、病室に戻ってすぐに 「手術は無事に終了したよ」 と、携帯電話から妻へメールを送った事は言うまでもありません。

 病室へ戻っても麻酔の効果がまだ残っている為に数時間は寝返りがうてず、また翌朝までは身体を起こさない様にと言われたのですが、実はここからが私自身としては一番辛い時間の始まりでした。 酷くはないのですが私は腰痛持ちでしたので、同じ体勢で長時間横になっているのは非常に苦痛でした。 なんとかベッドの柵に掴まって寝返りがうてる様になっても腰痛は直ぐには収まらず、熟睡できたのは前夜と同じく深夜でした。 本当はNGだと思うのですが、個室なのでイヤホンを使わずボリュームを小さくしたテレビを0時過ぎまで観て気を紛らわせていました。

 
〇 手術後

 手術翌日の朝には身体を起こすだけではなく歩く事も許され、軽い朝食を食べる事もできました。 部屋は放射線管理区域になっているので勝手に室外には出られませんが、その代わり食事のお膳の上げ下げは全てナースが行ってくれるし、飲み水が欲しければナースコールして冷たい飲料水をペットボトルに汲んでくる様にも頼めるので何の不自由もありませんでした。

 昼頃にはレントゲンを撮りに歩いて行き、その後に岡本先生の診察を受けて尿道カテーテルを抜いてもらい、私の身体から出る放射線量測定と部屋の中にシードが抜け落ちていないかのチェックを受けました。 身体から出る放射線については不安に感ずる方もおられるだろうが、身体の前後からは値が測定できるのに、横側からだと骨盤に遮られて測定値ゼロになってしまう程の僅かな量である。 その為、通常の生活では周りの人に対しての放射線の影響は全くと言って良いほど無く、念の為に数ヶ月は赤ちゃんを膝の上で抱く事や妊婦さんの近くに長時間いない様にする位である。 このチェックの後で病室の放射線管理区域は解除されたが、翌日の退院までは勝手に部屋を出ない様に言われました。

 夕方には点滴も終了し、食後の薬を飲むだけとなります。 身体的には針生検の後の様な違和感が股間にあるだけで、特に痛みなどは無いので助かります。 なるべく歩く様にと言われていたのでテレビを観たり本を読むだけでなく、ウロウロと室内を歩き回ったり翌日の退院に備えて持ち物を片付け始めて時間を潰し、夜は完全に熟睡できました。

 極稀に前立腺から尿道へとシードが抜け落ちる事が起こり、そのシードが尿と一緒に排出される場合があるので、入院中の排尿はトイレに流さずに容器に溜めますが、もし退院後にシードが排出された場合は可能であれば採取保管しなければなりません。 その保管専用の鉛製容器を渡されますが、殆どの患者が1年後に未使用容器を返却する事になるらしいです。 但し、1年以内に他の病気や事故で死んだ場合は放射線管理の関係で遺体から前立腺を摘出せねばならず、万一の際に遺族は火葬せずにブラキの治療を受けた病院へ連絡する必要があります。

 退院後の注意事項は殆ど無く、通常の生活で構わないとの説明を受けました。 前述した赤ちゃんや妊婦さんに対する配慮が必要ではありますが、神経質になる必要も無いとの事でした。 毎日身近で生活する妻が1年間で受ける放射線量は、アメリカまでの飛行機旅行1〜2往復間で宇宙から降り注ぐ放射線を浴びる量と変わらないらしく、毎晩同じベッドで寝ていても問題ないのだそうだ。 心配性の方は放射線防護用のパンツを病院で購入できるのだが、4万円位とかなり高価な物です。 私はペットの世話をする時に膝の上に動物を乗せることがあるので、ネットショッピングで下腹部用のエプロンタイプの放射線防護衣を1万円位で購入しましたが、医療従事者向けにしか販売していない業者が多いので探すのにチョット苦労しました。

 体内に金属が埋め込まれているのですが、歯の詰め物と同じで空港の金属探知機には反応しない程度だそうだ。 ただ、放射線の検査を受けると反応して出入国を止められてしまう事があるので、手術後1年位までの海外旅行の際は病院からシードを埋め込んでいる証明書を発行してもらっておく必要があります。

 
〇 退院

 入院から4日目の午前10時半頃に無事退院となりました。 まず、退院手続きを済ませてから病院の1階にあるコーヒーショップで4日ぶりのコーヒーを飲み、妻には歩いて退院できるから迎えは不要と言ってあったので電車を乗り継いで帰宅する事にしました。

 病院からバスでJR瀬田駅へ向かい、在来線で京都まで行って新幹線に乗り換え、12時半過ぎに名古屋駅に到着したので昼食としてホームで名物の 「きしめん」 を食べ、JR在来線と名鉄電車を乗り継いで午後2時頃には帰宅しました。 少し休憩した後に自分で自動車を運転して紹介状を書いてもらった総合病院へ向かい、岡本先生からの治療に関する報告書を渡してプレパラート等の返却をしてきました。 その後は普通に店で接客し、閉店して夕食を摂った後は留守中に入った釣竿修理の仕事を午後11時過ぎまで行い、全く普段通りの生活である。 私自身も妻も、ガンの治療で入院して退院したばかりとは思えないというのが実感でした。

 退院した日の夜に岡本先生宛に御礼と現在の状態に関してのメールを送っておいたところ、「手術後のレントゲン・CTの写真から調べた放射線量分布はパーフェクトで、線量は確実にガンをやっつける190グレー以上ありますから間違いなく根治します」 と、嬉しく頼もしい内容の返信を頂きました。 つまり、シードが前立腺全体にバランス良く埋め込まれ、前立腺の内部だけでなく外側もスッポリと放射線で覆っているという事です。 これはガンへ確実に放射線を照射し続けていると同時に、他の臓器へ必要以上に放射線が当っていないという事でもある。 しかも外部照射では不可能な線量を確実に前立腺全体へ照射しているので、これが非再発率の高さと副作用の低さの理由なのだろうと感心してしまった。

 
〇 退院後の生活

 退院後の生活は基本的には何も変わりませんでした。 入浴の制限はありませんでしたが、会陰部が内出血している様で紫色となって腫れぼったいので、1週間だけ湯船に漬からずシャワーで済ませ、また飲酒と刺激物を食べる事も1週間は自主的に控えました。 二十歳の頃から吸っていたタバコですが、健康診断の結果を聞きに行った時に買い置きのタバコの葉 (私はここ数十年基本的にパイプタバコしか吸いませんでした) が切れており、異常無しの診断が出るまで買わずに休煙する事にしていました。 ところがガンが見つかった為に喫煙を休止し続けてる事にしただけで、決して禁煙宣言していませんが多分このまま休煙が続いていくでしょう。

 排尿に関しては尿の出始めに多少の血尿が起こりましが、これは1週間ほどで収まりました。 退院初期の頃は気になりませんでしたが、2週間目位から尿の出方が悪くなった事を感じ始めます。 これは放射線の影響で尿道が炎症を起こす為で、排尿に勢いがなく時間がかかり、尿の途切れや残尿感もあり、特に夜間や起床してすぐの排尿の際に強く感じました。 また、夜中に1〜2回トイレへ起きる様にもなりました。 排尿障害の程度と症状が続く期間には個人差がある様ですが、通常は1〜3ヶ月目に強く起こり易いそうです。 中には半年〜1年位まで尿が出難い状態が続く人もいるらしいのですが、最終的には収まる症状との事なので不安はありませんでした。

 当分の間は、前立腺肥大による排尿障害と同じ薬 (ユリーフ錠) を朝夕の食後に毎日飲みます。 それでも尿が出難くなって十分に排出されない為に残尿感があり、それが頻尿へとつながる様である。 そこで、念の為に自宅以外では機会あるごとにトイレに行く事にしました。

 いきなり排尿が困難になる様な症状が現れたら心配になりますが想定内でしたし、生活に大きな支障をきたす事も無いので非常に困る様な事はありませんでした。 ただユリーフ錠の副作用として下痢・軟便があり、排尿の際に下半身の力を抜いたり力んだりすると肛門の方が危うくなる事が何度かありました。 そこで僅かでも便意がある場合は、たとえ排尿だけのつもりでも大便器の方を利用する事にしていましたが、それも2ヶ月目位から然程気にならなくなっていきました。

 運動については、本やサイトの記事で1ヶ月位は過激な運動を避けた方が良いと書かれていたので筋トレ等は自粛し、散歩と称して近所の川で鯉とナマズ狙いの釣り歩きをする程度としました。 また、念の為に自転車の使用は控えましたが、サイクリングなどで長時間乗らなければ問題は無い様です。

 多くの患者さんが男として気になるのが男性機能に関してではないでしょうか。 小線源療法 (ブラキセラピー) で勃起不全 (ED) となる確率は他の治療法と比較して非常に低く、手術から5〜10年経過後に性機能を保持できる確率は70〜80%位とされています。 患者さんは60〜70歳台の年齢で治療を受ける例が多いのであり、その術後5〜10年となれば年齢的にEDが起きても不思議ではないので、70〜80%位という数値は小線源療法による影響が無いに等しいと思えます。 放射線の直接的影響ではない精神的な理由によるEDも起こり得るでしょうが、優秀なED薬が増えている様ですから心配無用でしょう。 なお、退院直後から行為に及んで試してみるのはNGであり、4週間後からOKとされます。 また、万一にもシードが体外に排出されても問題が起きない様に、最初の5〜6回はコンドームを使用する様にと指示されます。

 本やサイトには 「小線源療法での治療を受けると精液が減少する事がある」 と書かれていましたが、先生からは 「性行為は可能ですが精液は全く出なくなるので、子供を作る事をお考えならば治療を受ける前に精子を保存しておく必用があります」 と言われていました。 これは小線源療法としては高線量の放射線の影響で精液の一部を作る前立腺の機能が無くなる為だと思います。 精液は出なくとも性行為は可能ですし、60歳過ぎて子供を作る予定の無い私としては実質的影響の無いリスクとして考えています。

 注意せねばならないのが、直腸への影響が少ないといってもゼロではない事です。 直腸壁の前立腺側の細胞が放射線の影響で脆くなる事があり、その場合に大腸検査の生検などで直腸を傷付けたり出血部を焼いたりすると直腸に穴があいて塞がらなくなってしまう恐れがあるそうです。 万一にも起こると永久的な人工肛門にせねばならない可能性もあり、放射線治療を受けている事を知らない病院で大腸検査を受ける事などは危険なのです。 もし大腸や直腸の検査等を受けるならば、治療から数年間は必ず放射線療法を受けた病院で行うか、その病院と連絡を取り合ってもらう必要があるとの注意書きを渡されます。

 
〇 手術後1ヶ月目の検診

 通常だと退院後の1週間目に泌尿器科での検診を受ける様なのですが、退院時の状態に問題がなく自宅も遠いという事で、放射線科の検診がある1ヶ月後まで来なくても良いと言われていました。 無論何かあれば直ぐに連絡して診察を受ける事になるのですが、排尿状態も閉尿が起こる等の大きな問題は起きず、無事に1ヶ月目の検診を受けました。

 何か問題があったかと言えば、1ヶ月検診で受けるMRI・CT撮影の為に数日前から飲んだ薬の副作用で、軟便・下痢になった事でした。 前述のユリーフ錠の影響も重なって数日間は頻繁にトイレに行かねばならなくなり、病院へ行く日は念の為に高速道路のサービスエリア・パーキングエリア全で停まって行きました。

 午前中の岡本先生による1ヶ月検診は特に変わった事も無く、「PSA値が最低値になるのには2〜5年位はかかり、その間に数値が一時的に上がる事もありますが、最低値になった以後に数値が上がらなければ再発ではないので気にする事は無いです。 排尿問題に関してはピークでしょうが、重篤な症状は無いので薬だけもう少し出しておきましょう」 と言われただけで終わってしまい、私が午前中の最後の患者だったので後は昼過ぎまで先生と雑談をしていました。

 午後からは血液検査とレントゲン・CT・MRIの撮影を行い、最後に放射科の河野先生の診察を受けました。 当日のレントゲン写真を見せて頂いたところ1本のシードが前立腺から抜けて少し離れた部位に移っていましたが、それ以外は完璧との事でした。 シードが1〜2本抜けるのは稀な事ではなく、5本位までなら抜けても治療に影響しない様に考えてシード埋め込んであるので全く問題ないと説明を受けました。 さすがに10本も抜けると問題があるらしいのですが、その様な事が起こった例は無いそうです。 またシード1本ずつの放射線量は微量なので、移動してしまっても体内の他の部位に影響はないのだそうだ。 この件に関しては予備知識として知っていたので、「たった1本しか抜けなかったんだ」 という印象でした。 CTとMRIによる検査の結果説明は3ヶ月目の検診の際と言う事で、この日の診察は全て終わりました。

 
〇 1ヶ月検診後の生活

 1ヶ月検診以後の排尿問題に関しては、尿の出難さ・途切れ・頻尿の感覚があるので非常に良い状態とは言えませんでしたが、自分自身が症状に慣れてきた為か然程気にならなくなりました。 無理に水分補給を制限したりせず 「尿意がある時は我慢をせずにトイレに行く」 「外出時はトイレに行ける状況なら尿意が然程無くともとりあえず行っておく」 「時間がかかっても排尿の都度しっかりと尿を出しておく」 を原則にしておけば、然程に困る事はありません。

 また、毎日飲んでいる薬の影響は軟便の他には何もなく、こちらも特に困る事はありませんでした。 薬による他の副作用として 「めまい・立ちくらみ・口の渇き・鼻づまり」 等の症状があるそうなので、貧血気味の方や鼻炎の方だと影響があるかもしれません。 私の場合は、いずれの症状も感じると言えば感じましたが、薬の注意書きを読んでいなければ単なる体調としか思わない程度でした。

 私と岡本先生とは個人的に自動車と安全運転の話などで何回かメール交信をしており、その際に 「先日の検査で調べた放射線分布は完璧であり、問題が何もないので必ず根治しますよ」 との嬉しい連絡も頂きました。 放射線の照射域と線量をコンピューターで計算して最適なシードの数と配置を決め、手術後はレントゲンやCTでシード位置を確認して目に見えない放射線が正確かつ十分に照射されているかという治療の良否を確実に判断できます。 これにより精神的に安心感が非常に高まり、肉体的にも生活に大きな支障が起こらないので、前立腺ガンを患って入院治療を受けたという実感が薄らいできており、これこそがQOLの高さだと言えるのでしょう。

 
〇 前立腺ガン治療でお悩みの方が最初にすべき事

 私は自分が前立腺ガンを患ってから本やサイトで色々と調べてみたのですが、その結果として転移が無ければ十分に根治できるという事が判りました。 但し、最善の治療法を選択しないと再発やその後の転移の恐れがあり、またQOLが低くて尿漏れ等で一生悩む事になる可能性がある事も判りました。 患者にとって必用な事は、医師の言葉を最初から全て鵜呑みにしない事です。 無論、初めに診察を受けた泌尿器科医が非常に優秀な医師の場合もありますが、泌尿器科の医師全てが前立腺ガン治療の専門家ではないからです。

 そこで思い付くのがセカンドオピニオンですが、 まずは自分の病期を正確に把握し、事前にネットや本で徹底的に前立腺ガンの治療法に関して調べておく事が重要です。 次に、自分自身にとってのメリット・デメリットを考えて最適と思える治療法を選び出し、その治療法を行っている病院をリストアップします。 医療関係のサイトから調べていけば、比較的簡単に探す事が可能でしょう。 各病院のサイトなどから治療実績を調べますが、ネットで調べても見つからなければ直接病院へ問い合わせてみましょう。 もし問い合わせても何の回答してくれない様な病院であれば、そこは候補から外しても良いでしょう。

 実績で重要なのは治療した数だけでなく、治療後の非再発率のデータだと思います。 治療した患者さんの数が多くとも、再発する患者も多ければ意味ありません。 非再発率のデータを全く出さない病院や、実績年数が長いのに治療後2年位の非再発率データしか出さない病院には疑問を感じます。 逆に治療実績数が然程に多くなくとも、治療後の追跡調査をしっかりと行って非再発率のデータを開示いる病院の方が遥かに優れている可能性があると私には思えます。 実績年数が短い病院でも、医師が他の病院で非常に高い経験を積んでいる事もあるので、良く調べてみましょう。 私自身も、小線源療法は高い技術と経験が重要であると判ってからは、「小線源療法を行っている病院や医師であっても、その中身は全て同じではない」 という考えを持って調べました。

 可能な限り調べてから、条件的にベストと思われる病院においてセカンドオピニオンを受診しましょう。 セカンドオピニオンの診断内容と治療方針が自分の期待通りの根治可能性・QOLの高さであれば、安心して最善の治療を受けられる事になりますし、遠方にお住まいの為にその病院でを治療受ける事が困難な場合でも、相談する事で他の良い医療施設を紹介してもらえるのではないでしょうか。 しかし、診断内容や治療方針が自分で調べた内容と明らかに異なり納得がいかない場合は、医師に質問し、何度でも調べ直しましょう。 なお、もしも医師がデメリットに関しての質問に答えず、「説明しても判らないだろう」 「俺は医者だぞ、素人は黙っていろ」 という態度であれば、その病院からは早々に退散すべきと思います。

 
〇 良い病院と医師にめぐり合う為に

 私の場合はセカンドオピニオンを受けたのが滋賀医科大学の岡本先生であり、診察結果から先生による小線源単独療法を受けるのが最善と確信して治療を受ける事を決めたのですが、それに至るまでは治療法に関して徹底的に調べました。 ネットで調べて気になった内容のサイトは全て 「お気に入り」 に登録して何度も読み返し、不必要と感じたら抹消して新たに気になるサイトを追加登録する事を繰り返し、常時50〜60の前立腺ガン関係のサイトが登録されていました。 そうして調べた結果で辿り着いたのが岡本先生でした。 最初の問い合わせメールを送った際に多くの質問をしたのですが、それに対して十分に納得できる返答を頂いたので、その後の診察は安心してお任せできました。

 岡本先生は、前立腺ガン治療の世界的権威であるアメリカのマウントサイナイ医科大学のネルソン・ストーン教授を3度も日本にお招きして直々に指導を受け、その技術を更に発展させておられます。 それを広めて多くの前立腺ガン患者に施したいと、小線源療法を実施する病院や導入を考えている病院の医師に御自身の技術を惜しみなく伝授なさっているそうです。 無論、前述の東京慈恵会医科大学や国立東京医療センターなど、レベルが高くて実績もある病院が他にも日本にはあり、それらの病院から技術を受け継いだ医師が在籍する病院もあるでしょうから、とにかく良く調べてください。 但し優秀な医師が在籍する病院を見つけても、その先生が担当にならない場合もあるので注意したいですね。
 
〇 前立腺ガン治療で必ず知っておくべき事

 ガン治療の研究は日々進んでおり、前立腺ガンも副作用が無く長期間使用できるホルモン剤等の研究がなされています。 しかし、これを書いている2015年現在のホルモン剤では根治不可能な上に副作用や1種類の薬が数年の使用で効かなくなる等の欠点があるので、他の治療が体力的に耐えられない患者さんや転移のある患者さんに施されるか、ガンの勢いを弱めてから手術・放射線治療を行う際に用いられています。 その様なホルモン治療を 「とりあえずホルモン治療をしておきましょう」 と言って安易に行う泌尿器科医も多いらしい。 安直で不必要な治療は百害あって一利なしの可能性も否定できませんから、もし現在診察を受けている医師からホルモン療法を勧められた場合は、まず自分の病期を十分に把握し、その病期の場合に本当にホルモン治療をする必要性があるのかを調べて判断するべきと思います。 無論その時点でセカンドオピニオンをお考えになる事も重要ですね。

 患者として治療法を調べた私個人の意見としては、低リスクの前立腺ガンであれば小線源療法による単独療法を、中リスクは小線源療法単独か外部照射の併用で、高リスクでも転移が無ければ小線源療法・外部照射にホルモン治療も含めたトリモダルティを治療法の選択肢に入れて考えるべきと思います。 無論、何らかの理由により小線源療法を施せずに他の治療法に頼らねばならない患者さんもおられるでしょうが、治療法の選択肢として必ず入れるべきでしょう。 身体は自分のものですから、医師に勧められた治療法を疑いも無く受け入れるのではなく、しっかりと調べて十分に納得した上で最善の治療を受けて頂きたいですね。

 前立腺の全摘出の場合は手術後に再発しても放射線治療が受けられると言われますが、根治療法として最初から放射線治療を受けるのと同じだけの線量を照射する事はできません。 放射線治療も一度行うと、再発した場合に追加の放射線治療を受ける事は困難とされています。 ホルモン療法を続け過ぎるとその薬が効かなくなり、その後の治療に困る事が起きます。 つまり、前立腺ガンは最初の治療で確実に根治を望む必要があり、後に困る事が無い様に最初の治療法選択が極めて重要なのです。

 「どんなに最先端の医療であっても根治が望み難い治療法なら、その費用で怪しげな壷でも買って拝んでいる方がマシですよ!」 と言った医師がいます。 一度治療を施した前立腺ガンは再発すると根治させる為の再治療が極めて困難になるので、最初に根治の可能性が低い治療法を選ぶ位ならダメだと気付いてからでも良い治療法を選び直せる 「壷を拝んでいる」 方が患者のリスクは少ないという意味でなのですが、これは正論だと思います。

 冒頭で書いた通り、私は医者でも専門家でもないので何の保証もできませんし責任も取れませんので、ここに書いた内容も鵜呑みする事なくあくまで参考の一つとしてお考え頂きたい。 ただ、選択した治療法がその後の人生に多大な影響を及ぼすので、その意識を持って治療法と病院を選ぶ事が最も重要であるという事だけは断言できます。

 これを書いている現在の私は全く不安を感ずる事なく生活しています。 悩んで不安な日々を過ごしたのは、自分が受けるべき治療法を見つけ出すまでの数ヶ月でした。 その間は毎日深夜までパソコンとにらめっこして治療法を調べまくったのですが、結果として私にとって最善の治療法と医師に辿り着く事ができたのであり、今となっては非常に有意義な時間だったと思います。 信じれる治療が受けられると決まった時点で病気への不安がほとんど無くなり、それ以上に家族が不安を感じなくなっていった事が非常に嬉しかったですね。

 
〇 3ヶ月目の検診

 今回の検診では前回受けたレントゲン・CT・MRIによる診断結果を聞き、放射線科の河野先生からは 「放射線分布には全く問題が無いので、転移が無いという前提であれば前立腺癌は完全にやっつけられます」 と告げられました。 こんな書き方をすると、「転移や再発可能性が少しはあるの?」 と思われる方も居られるでしょうが、岡本先生からは 「転移はありませんから、300年経っても再発しませんよ」 と言われております。 年齢的に私の余命は30年位が妥当と考えられますので、その余命の10倍生きても再発しませんよと言われているのであり、これほど力強い言葉は無いと感じました。

 河野先生からは、排尿の薬の副作用による軟便に関して 「軟便くらいの方が良いですよ」 と言われました。 これは放射線の影響を受けている直腸の為には、「便秘等による硬い便よりもずっと良いです」 という意味なのだと思われます。 そう考えると、軟便は副作用ではなく必然性のある薬効とも思えてきました。 とりあえず岡本先生から6ヶ月目の検診までの薬を処方して頂きましたが、その頃には排尿問題はなくなっているだろうとの診断を受けて3ヶ月診察を終えました。 

 正直言って、この頃には自分も妻も意識の中から前立腺ガンの事が消えてしまっており、あとは排尿問題が落ち着いてしまえば完璧なQOLと言える状態にまでなっていました。 日中のトイレ回数は徐々に減ってきており、就寝前に水分を取り過ぎない様にしておけば夜中にトイレへ起きる事も無くなってきたので、あと一歩というところですね。

 
〇 3ヶ月検診の後

 小線源療法 (ブラキセラピー) を受けた患者のPSAは最低値になるのに治療から2〜3年位かかり、人によっては1〜5年位と幅があるらしいです。 最低値になるまでの間にPSA値が上がるバウンスと言う症状が起こる事があるが、それは一時的なもので全く問題ないそうだ。 今後の私は定期的にPSAを測定して値の推移を調べ、経過観察するだけと言っても良いでしょう。

 治療後5年経過した時点でPSA値が0.2未満まで下がっておれば99%の患者が10年後でも0.2未満を維持しているそうなので、10年目までPSA値が上がらなければ完治したと断言できるでしょう。 もしPSAが最低値から再び上昇するPSA再発が起きても、ガン細胞を確認できる局所再発になるとは限りませんし、PSA再発から更に何年か経過せねば病理学的に判りません。 まず有り得ない事ですが、私に局所再発が起きるとしても遥かに先の事で、その頃には再発に対する治療法も進歩しているでしょう。

 と、まあ一般論を書きましたが、自分自身は岡本先生と河野先生による小線源療法の治療で根治すると確信しており、再発などに関しては全く気にもしていません。 これは先生達の治療実績データが証明しており、それ故に私は再発の可能性を微塵も感じていないからです。

 
〇 6ヶ月目の検診

 小線源療法の手術後6ヶ月目の検診を受けましたが、シードから発せられるヨード125の放射線量は半減期が約2ヶ月なので、計算上では手術時から1/8位の放射線量にまで減少した事になります。 まずは岡本先生の検診を受けましたが特に何も無く、後述しますが小線源療法に関してのお話を色々と伺って終わりました。 排尿関係の薬はそろそろ不要になるのですが、万一調子が悪くなった際に病院へ行く時間がないと困るので念のために1ヶ月分だけ処方して頂き、現在残っている分は服用量を半分に減らして様子をみる事になりました。

 岡本先生の診察は午前中で、PSA検査の為の採血を受けてから午後に放射線科の河野先生の診察だったのですが、何故かこの日の病院は各科の外来共に非常に混雑していて血液検査の採血も60人待ちでした。 そこで受け付けだけしておいてレストランで食事をし、その後に検査部へ戻っても採血に十分間に合いました。 当然の様に検査は遅れるので、通常なら当日判るPSA値も河野先生の診察が終わる時間でも判りませんでした。 前にも書きましたがPSAは数年間かかって最低値に下がり、それまでの間は一時的に数値が上がるバウンスという減少が起こる事もあり、現時点ではPSA値を気にする事は無いので次回の検診で聞く事にしました。

 河野先生とも排尿状態と薬に関して話をしましたが、私の状態は非常に良いとの事でした。 6ヶ月検診の頃には車をノンストップで数時間運転したり、映画館で普通に2時間以上の映画を見ていたのですが、そこまで回復が早い患者は少ない様です。 特にコーヒー好きの私はコーヒーを飲みながら長距離運転や映画鑑賞をするのですが、コーヒーには利尿作用があるのトイレは近くなり易い。 そのコーヒーを飲みながらの運転や映画鑑賞の話をしたところ、河野先生は 「それは凄いですね」 と言っておられた。 という事で、このサイトの排尿関係に関しての記述は非常に良い状態の患者の例としてお読み頂き、患者さんによっては排尿状態の回復がもう少し長引く事もあるともお考えください。 もっとも、私でもコーヒーを飲みながら2時間以上の映画を見終ったら、速攻でトイレに駆け込みましたがネ!

 
〇 小線源療法の判り易い説明

 6ヶ月検診での岡本先生から聞いた小線源療法の話は非常に理解し易く、予備知識の少ない方でも良く判ると思うので紹介しておきましょう。

 まず、小線源療法で放射線を受けた前立腺は、ガン細胞も正常細胞も本来の前立腺として機能する細胞ではない単なる繊維細胞になってしまうのだそうだ。 単なる繊維細胞で何の機能も無いのであるからPSAは当然出なくなり (それに伴い精液も出なくなる)、ホルモンの影響を受けたりしてガンに変化する細胞ではなくなる事でガンが根治するという事です。

 岡本先生と河野先生で行う治療法は、小線源療法としては高線量となるシードを前立腺の外側ギリギリにムラなく埋め込むので、前立腺の周囲1cm位までもの範囲に十分な放射線を当てており、この範囲内では完全にガン細胞は無くなってしまう。 つまり、その範囲の細胞を全て切り取って、新たに単なる繊維細胞に入れ替えたと考えれば良いのだそうだ。 それは全摘出の外科手術よりも広範囲であるのでガンを取り残す様な事はなく、しかもガン細胞をを傷つけてガンを飛び散らせる事も起こらないのです。 前立腺の細胞は放射線の影響を受け易いが、それと比較して尿道や膀胱は放射線に強いので、ある程度の影響を尿道や膀胱が受けてもシードからの放射線量が減れば排尿問題も無くなってくると言う事でした。

 これだけ聞くと前立腺のガンは全て取り去ったと同じ様に消滅する事になる筈なのに、なぜ再発という事が起こるかの疑問を持たれる方も居られるでしょうし、私も疑問に思いました。 岡本先生によれば、先生の小線源治療を受けた前立腺に再度ガン細胞が発生する事は起こらないので、再発とはガン細胞が残っていたと言う事なのだそうです。 ところが前立腺とその周囲の細胞は完全に繊維細胞に置き換わってガン細胞は残っていないので、再発というものは治療前に既に転移があった場合しか起こり得ないと言う事でした。 つまり、前立腺ガンに関しては転移さえなければ低リスク・中リスク・高リスクに関係なく根治可能であるのだと岡本先生は仰っておられました。 なお、この話を聞いた時点での岡本先生が小線源療法で治療した患者数は約650人で、PSA値が再び上昇してPSA再発とされた方は 11人だそうです。 非再発率を計算すれば98%以上という驚異的な数字である事を考えれば全て納得できるでしょう。
 
 
〇 6ヶ月経過後の排尿状態とPSA値

 6ヶ月検診後から排尿の薬である 「ユリーフ錠」 は朝夕の服用から、1日1回の夕食後だけに減らしましたが、特に排尿状態には変わりが無く順調でした。 1日1回の服用を20日ほどを続けてから、今度は1日半に1回服用 (3日で2錠) する事を試してみましたが、殆ど異常なしと言える状態でした。 体調により寝起きで朝一番の排尿の際に出難さを感ずる事がありましたが、それでも毎日2回薬を服用していた手術後3〜4ヶ月目程度なので気になる事はありませんでした。 もうしばらく服用を続けた後に完全に薬の服用を中止してみる予定です。

 検診から3〜4週間目位に、岡本先生からメールで検診時に測定結果が聞けなかったPSA値が送られてきました。 手術2ヶ月前は7.845だったPSA値は治療後1ヶ月目が7.230、3ヶ月目が3.731、そして今回の6ヶ月目が2.781と順調に下がっていましたが、最低値まで至るには数年かかります。 私の場合は 「再発する事が有り得ないので単なる参考値ですが」 との先生からのコメントが附されており、お忙しい中でも患者に対して気遣いして頂けるのはとても有り難い事でした。

 この時に頂いたメールには 「滋賀医科大学付属病院の最新治療がわかる本」 と言うものが刊行される事と、プレリリース・刊行記念行事に関してのお知らせを頂きました。 本には 「心臓血管外科手術」「ロボット手術」 と共に、巻頭特集で 「前立腺ガンの小線源療法」 が取り上げられており、その内容がメールにPDFで添付されていたので見ましたが、非常に簡潔で判りやすい内容でした。 バリューメディカル社から出版され、価格は¥1580 (2015年10月現在の消費税込み価格)で、本を扱うネット通販でも入手できますが取寄せ商品となる為に少し時間が掛かるらしいです。
 
 
〇 9ヶ月検診と、その後の排尿状態

 9ヶ月目の検診は、泌尿器科での岡本先生の検診も放射線科での河野先生の検診も5分ずつ程度であり どちらの先生からも 「順調ですね!」 と言われた位の内容なので、特に書く事が何もありませんでした。 PSA値も2.39まで下がっており、今後は2〜5年位かけて最低値へと下がり続けるのを観察する事になります。

 今回の検診の約1ヶ月前から排尿の薬を全く摂らない様にしていましたが、最初の頃は体調によって全く問題ない日もあれば、非常に尿が出難い日もありました。 尿が出難いのは朝起きた時や長時間トイレに行くのを我慢した際に多く、尿が出始めるのに30秒以上かかったり、尿が十分に排出されずに1時間も経つと再びトイレに行きたくなる事もありました。 放射線科の河野先生からは、「これから徐々に良くなっていきますから問題ないです。 ただ、稀に1年以上経過してからでも急に排尿状態が悪くなる事があるので、念の為に薬はまだ持っていてください。」 とだけ言われました。 以前に岡本先生からも聞いていたので、排尿の薬は1日2回摂取しての半月分を確保してあり、1〜2錠は常時携帯する様にしています。

 この項を書いているのは9ヶ月検診から約1ヵ月後なのですが、この頃には排尿状態が格段に良くなっており、尿の出難さを感ずる事は殆ど起きなくなっています。 排尿の薬として処方されていたユリーフ錠は副作用の1つとしてとして下痢・軟便があります。 その為、私は薬を飲んでいる頃だと急に便意をもよおしてトイレに行きたくなると我慢するのが難しく、危うく粗相しそうななった事が何度かありましたが、その不安からは開放されてきました。

 この排尿改善薬のユリーフ錠のもう一つの副作用として、逆流性射精や尿道に精液が流れ難くなって正常な射精ができなくなる事があるそうです。 前にも書きましたが、岡本先生の密封小線源療法を受けると前立腺の細胞が単なる組織細胞になってしまい、精液を作る工場を破壊する事になるので精液が全く出なくなると告げられていました。 もっとも治療後直ぐに出なくなるのではなく、極めて少量しか出なくなって最終的に全くでなくなるのですが、まだ治療後間もなく多少の精液が出る頃でもユリーフ錠を摂っていると、その影響で全くでなくなってしまう様です。 ところがユリーフ錠の摂取量を減らしたり摂らなくなると、微量ですが時折精液が出るようになります。 これも何時は全く出なくなるのでしょうが、人によっては子供を作れる可能性を感ずる方が出てくるかもしれません。 これに関して岡本先生に尋ねたところ、「子供を作れる可能性はまず無いですね。」 との事なので、やはり治療後に子供を望む方は事前に精子を保存しておく必要があるでしょう。 余談ですが、ユリーフ錠は精液が出に難くくなるという事で、効果については否定的な意見の医師も多い様ですが一部の医院等で早漏防止薬として処方される事があるらしいです。 
 
 
〇 腺友倶楽部との懇親会

 2016年2月に、私の元へ一通のメールが届きました。 それは参考サイトとして御紹介した腺友ネットを運営する前立腺ガン患者の会である腺友倶楽部会員の方からで、腺友倶楽部サイト内に当治療記が参考となったという書き込みがあり (http://6307.teacup.com/cap87090/bbs/t1/41)、それで私を知ったとの事でした。

 人のお役に立った事を知って、非常に嬉しかったです。 メールの主たる内容は、腺友倶楽部の代表である 「ヒゲの父さん」 こと武内さんが名古屋に来られるので会員で集まって懇親会を催すが、会員でない方の参加も出来るので私にも参加を誘ってくださるものでした。 私は「しがらみ」を持たない様にする為に、色々な団体や組織に加入することを極力避けており、腺友倶楽部にも加入しておりません。 ただ腺友ネットの記事は何度も読ませて頂いておりますし、直接に他の前立腺患者の方とお会いしてお話を聞く機会は今までにない事なので、お誘いを受けて参加させて頂きました。 私の知り合いの前立腺ガン患者の方二人も一緒に参加させてもらう事ができ、大変お世話になりました。

 当日は十数名の会合となり、自己紹介はそれぞれの病期や治療法を語るというもので、非常に参考となりました。 ホルモン治療が副作用で辛かったという話も有れば、逆にホルモン治療の副作用が良い方に出て髪の毛がフサフサになったという話もありました。 ですが、全摘出手術をしたがPSA再発があり、追加の放射線の外照射治療を受けたがPSAが下がらないという方も居られ、やはり最初の治療が非常に大切であると仰っておられました。 また、身体の痛みから精密検査を受けたところ既に骨盤に転移がある事が判った50歳代中頃の年齢の方が居られました。 若い頃に発病するとガン細胞も若く成長が早いので、やはり早期発見・早期治療の為に50歳になったら毎年PSA検査を受けるべきで、肉親に前立腺ガン患者がいる場合は40歳代から検査を受けるべきである事を実感しました。

 最初の治療選択で悩まれる方が多いのはもちろんでしょうが、転移やPSA再発がある患者の方の悩みや不安はそれ以上のものがるあと思いました。 患者の会やサポート団体は女性の乳ガン患者では広がりを見せており、マンモグラフィによる検査の啓蒙活動も盛んになっていますが、前立腺ガンはまだまだです。 腺友倶楽部もただの任意民間団体では医療機関・行政との関係で弱い為に今後はNPO法人として活動していく事になるそうで、今回の懇親会ではその報告もありました。 自分1人や家族だけで心配しながら悩むより、同じ悩みを持つ者同士で話をしたりアドバイスを受ける事は非常に良い事と言えますので、この件について読者の皆さんにもお伝えさせて頂きました。 
 
 
〇 インフルエンザの影響

 前述した腺友倶楽部の懇親会へお誘いを受けて出席させて頂いた日の前日に名古屋のフィッシングショーを観に行っていたのだが、どうやらそこでインフルエンザに感染してしまったらしい。 懇親会の時に腰の筋肉が痛んで立ち上がるのも辛く、警察官時代に逮捕術全国大会の県代表選手要員として訓練していた頃の古傷が痛んでいるのだと思っていたのだが、どうやらインフルエンザが筋肉痛を引き起こしていた様だ。 懇親会の2日後には発熱し、私の前立腺ガン発見の端緒となった健康診断を受けた医院での検査で、A型インフルエンザと確定しました。

 病院へ行ってタミフルを処方してもらったのですが、熱が上がりだしたタイミングなので薬が良く効き、酷い高熱は出ずに済みました。 38度台前半の熱が2日ほど続いただけで治まってくれたのですが、その間は排尿状態が非常に悪くなりました。 尿が出始めるのに30秒〜1分位かかったり、十分に排尿できずに膀胱に残る量が多い為か排尿から1〜2時間も経過せぬうちに尿意を感じ、夜中に数回トイレに起き出したりもしました。 ですが体調が回復すると共に排尿状態も回復し、タミフルの服用が終わる頃には元通りになりました。

 私は排尿の薬を服用する事無く治まりましたが、一番酷い時は服用も考えました。 元々排尿状態が然程に良くない方の場合は、インフルエンザなどの高熱の影響で排尿状態が悪くなったら、無理に我慢をせずに早めに排尿の薬を使うべきでしょう。 と言う事で、普段は排尿の薬を必用としなくなった方でも、いざと言う時の為に有る程度の量の薬は常備しておく必要が有ると感じました。


〇 新しい治療法の出現?

 2016年3月に発売された週刊誌に前立腺ガンの新しい治療法があるとの記事が載っていました。 東京慈恵会医科大学の泌尿器科で、ガンを冷凍してやっつける治療法が行われているという内容で、「ガンの確定検査結果までに調べた事」 の項で書いた熱でガンをやっつけるHIFEとは真逆の治療法である。 小線源療法の様に会陰部からパイプ状のものを刺し込み、超低温のガスなどを入れて前立腺をマイナス40度まで冷やす事を何度か繰り返してガン細胞を壊死させてしまうらしい。 その際に尿道まで超低温で壊死すると大変なので、ここにはカテーテルを入れてお湯を通して保護するのだそうで、数時間の治療時間らしい。 冷却用のパイプは均一に前立腺内へ刺入する必要があるだろうから、小線源療法の実績が高い医療機関なら行う事ができるだろう。

 ガンを超低温に冷却してやっつける治療法は既に他のガンで行われており、それを前立腺ガンにも応用した治療法で、小線源療法と同じ様に3泊4日程度の入院で済むらしい。 まだ十分な実績が確立されていないので、現在は放射線治療を受けた後に再発した患者さんのみに試験的実施している段階の様だ。 当然まだ保険も効かないだろうし、最初の治療法として使えるものではないが、十分でない線量の放射線治療を受けた為に再発してしまった患者さんには朗報かもしれない。 放射線治療を受けた患者さんは、再発すると今までならホルモン治療や抗がん剤治療しか選択肢がなかったのに、薬による副作用の心配はない治療法も加わったとのだと言えそうだ。

 ガン治療は日進月歩であるが、この治療法も完全に確立するまでに多くの症例が必用でしょうし、更に保険適応となるまでにも長い年月が必用となります。 それ故に現段階では最初の治療法の選択肢に入れれるものではありませんが、放射線治療後にPSA再発が起きてしまった方や、十分な根治実績がない医療機関で放射線治療を受けてしまった為に再発を心配なさっている方には希望の一つになるかもしれません。 ただ最初の治療法選択でお悩みの方は、現時点で根治の可能性が最も高い治療法を選ばねばならない事に変わりありませんので、そこは十分に理解して頂きたいですね。


〇 1年目の検診

 前立腺ガンの小線源療法による放射線治療から1年目の検診を受けに行ってきました。 岡本先生の方の診察では、「排尿状態も順調の様ですし、5年後のPSA値は大事ですが数年間のPSA値は参考程度なので、次の検診は半年後で良いです。」 と言われ10分程で終わりました。 岡本先生の検診後にPSA測定の血液検査をしたのですが、今回はここ数回より少し上がり3.192であった。 詳しく知らない方だと心配になる事かもしれませんが、小線源療法の治療後1〜2年で下がっていったPSA値が一時的に上がるバウンスという現象が度々起こる事を知っているので特に気になりません。 これは放射線内部照射の治療では比較的多く起こる原因不明の症状です。 バウンスが起きたり他の治療法でもPSA値の変化が気になる方は多く居られると思いますが、その様な方は以下のサイトを御覧になると良いかもしれませんね。
 DIPEx Japan (デイペックス・ジャパン)
お読みなると判りますが、小線源療法でのバウンスは珍しい事ではなく、最低値より2以上数値が上がらなければPSA再発を考えて悩む必要はないです。

 岡本先生の話では、年齢が若いほど放射線の影響を受けた細胞がまだ元気なので、PSA値の下がり方が老齢の方より遅い傾向があるとの事でした。 身長・体重を測定する時にナースから 「まだお若いですね」 とも言われていたので、どうらら前立腺ガン患者としては61歳は若年と言えるらしい。

 更に岡本先生からは、「ガンが残っている場合、つまり転移があると小線源療法を施しても施術後1〜3ヶ月目の急激なPSAの低下が起こらないので、あなたのPSA値グラフの様な数値変化にはならない。 つまり、このグラフの変化が転移の無かった事を証明しています。」 とも言われました。 そして、施術後のCT・MRI・レントゲンなどで調べたシードの位置から割り出される放射線分布が完璧であれば、それで根治が保証されるのだとの事でした。

 放射線科の河野先生の診察でも、「PSA値は多少上下しながら下がっていくので問題ありません。 放射線の分布は完璧ですので、万一の転移さえなければ完治します。」 と言われました。 河野先生は毎度同じ様な言い方をされますが、たぶん河野先生は技師的な思考の方ではないかと感じています。 放射線の影響が及ぶ範囲に関しては絶対の自信がお有りになるが、治療全体と言う事ではやはり岡本先生主導と言う事なのでしょう。 岡本先生と河野先生の関係は、プロ野球で言うと監督とコーチの様な関係に思えました。

 施術後1年経過したので、シードから放出される放射線はほぼゼロとなりました。 これで事故や他の病気で死んでも、放射線管理の為に火葬前に前立腺を手術で取り出す必要がなくなりました。 人間、何時・何が起きるか判りませんので、余分な心配事が減るのは有難い事です。 また、排尿時に万一シードが排出された場合に採取保管する鉛の容器も未使用で返納してきました。 こんな面倒臭い事は日本独自らしく、放射線管理に関する法律が異常に厳しい事が理由の様です。 福島県の原発事故における除染や居住・立ち入り制限の基準値が厳しすぎると言う声もありますが、原因は同じところにあるのだと思えますね。


〇 クライオ治療

 クライオ治療とは、二つ前の項に記載した 「新しい治療法の出現?」 で書いた治療法の事であり、冷却療法とも言われる様です。 この治療法に関して岡本先生から色々とお聞きしたのですが、確実に根治させる治療法では無いが15〜20年位前からアメリカで行われており、放射線治療後に再発した場合の治療としては一定の効果が有るとされているそうだ。

 つまり、単に日本では行われていなかっただけであり、それを日本でも行うようになった事を週刊誌が記事にしたという訳ですね。 記事では放射線による副作用もなく短期入院で済む夢の治療法を期待させる様な内容とも思えましたが、前立腺ガン患者が多い為に治療に関して日本よりも先を行っていたアメリカにおいて既に15年以上前から行われており、あくまで放射線治療後における再発時の治療法の一つであって、根治療法としては未だに確立されていないという事の様です。

 陽子線治療や免疫治療もでしたが、少し話題になると週刊誌やテレビ等のマスコミが過剰と思える報道を行い、多くの患者さんに現実以上の期待を持たせてしまう場合があります。 確立されていない治療法であっても、今後の研究開発で素晴らしいものになる可能性がある事も事実だとは思います。 ただ、何度も書きますが前立腺ガンは最初の治療法の選択が極めて重要であり、その最初の治療で根治を望まなければならないのです。 やはり、何でもよく調べるという事は大切ですね。


〇 待機療法

 最近の岡本先生は小線源療法の治療を中リスク以上となった患者さんに施し、基本的に低リスク段階の方には待機療法を考えておられるらしい。

 昔は前立腺ガンであったのに気付かず、寿命でお亡くなりになってからガンであったことが判る方も多かった様だ。 つまり進行が遅く大人しいガンであれば、何もせずにそのままにしておいても大丈夫であり、治療による身体的負担を余分に掛ける必要は無いのである。 岡本先生は中リスクや高リスクでもある程度までなら小線源療法単独だけで根治させれる自信がおありであり、低リスクであれば慌てて治療せずにガンの進行具合を観察してからでも十分に間に合うのだそうだ。 そして進行が遅い大人しいガンであると判断できれば、余分な治療を施さない方が患者にとって良い選択になると仰った。

 ちなみに、開業医から低リスクの前立腺ガンと診断されてホルモン治療を勧められて受けた方が、副作用が酷いので小線源療法を希望して岡本先生の所へ行かれたという例を私は存じ上げています。 その方は、まずホルモン剤の効果が無くなって本来の状態に戻ってから治療の必要性を判断しますと言われ、診断を半年以上待ったそうです。 ホルモン剤によりPSAは一旦大幅に下がっていたですが、薬の効果が切れて数ヵ月経過してもPSA値が上がる傾向がみられません。 結果的に岡本先生の判断は、現時点では小線源療法を施す必要は無いので経過観察となったそうです。

 最近ではPSA検査を受ける方が増えた事や小線源療法に関して世間一般の認知度が高まった為か、小線源療法の治療を希望する患者さんが急増しているらしく、その中には低リスクで最初期の方も多く居られるようだ。 当然の様に治療を必要としない程度の患者さんに小線源療法の治療を施せば根治率は100%だろうし、他の治療法でも同じ様な事が言える。 ゲスな考え方をすれば病院は儲かるし、経験の少ない医師でも失敗せずに経験が積め、さらに非再発率の実績も上がるので 「美味しいお客」 とも言える患者さんになってしまう。 その様な事にならない為にも病院・医師選びは重要であり、良く調べてセカンドオピニオンを受ける必要があるのです。

 この待機療法の基準と言うものは数値的に決まったものではありませんが、治療技術の高い医療機関であれば多少ガンが進行した後でも根治治療が可能なので待機療法のPSA基準値などをある程度高い設定で考える事が可能でしょうし、治療技術がまだ低い医療機関であれば低く考えざるを得ないでしょう。 ただ転移するなど手遅れになりはしないかの不安を持たれる方も居られるでしょうから、やはり他の治療法と同じく信頼できる医師から詳しく説明を受けて判断すべきである事には変わりないと思います。

 なお、待機療法は現在ではPSA監視療法と言われているらしいです。


○ 当サイトの読者から

 私の店のメールアドレス(個人経営の店ですので、私個人のアドレス兼用です)に、1通のメールが届きました。 それは、この 「店主の前立腺癌治療記」 をお読み頂いた方からのメールで、前立腺ガンの疑いがあり、私と同じ様にMRI検査を受けた後に針生検を受けられ、現在は針生検の結果待ちという方でした。

 メールには、「店主の前立腺癌治療記は大変参考になりました。病院のWebページより患者目線で書かれていた内容なので、とてもありがたかったです。」 と書かれておりました。 更に、「治療記のおかげで、セカンドオピニオンが必要になるような場合でも、その病院を決めることができました。 ありがとうございました。 とりあえずお礼が言いたくてメールを送らせていただきました。」 と、こちらが恐縮してしまうほどの内容で、泣けてくるくらい嬉しかったです。

 正直、この治療記をとれだけ一生懸命書いても金銭的には1円の得にもならず、また読む方が居なければ単なる自己満足にしかなりません。 ですが、今回の方以外にも参考になって助かったと何人かの読者の方からメールやお電話を頂いております。 以前の自分と同じ様に前立腺ガンに対する不安を抱えて悩んでおられる方々のお役に少しでもたてている事が実感できて、自分の考えと努力は無駄ではなかったという喜びを感ずる事ができてます。

 この治療記も半年ごとの定期健診結果位しか書く事が無くなってきております。 されど、治療から数年後に副作用が残っているのか等を心配なさる読者の方には、それも重要な内容です。 ですので、今後も書ける事は機会あるごとに書いていきますので、一度お読み頂いた読者の方も思い出したらこのサイトを覗いてみてください。


〇 1年6ヶ月目の検診

 2016年9月に小線源療法の治療から1年6カ月目の検診を受けに行ってきました。 最近の私の体調は、暑い8月の頃を中心に1ヶ月ほど排尿状態が悪くて治療後2〜3ヶ月目のような状態でしたが、この検診の頃にはだいぶ回復しました。 排尿の薬を服用必要は無かったですが、治療後1〜2年は排尿状態が悪くなる事があるので1ヶ月分位の薬を持っておく様にと先生がおっしゃった意味が良く分かりました。

 今回の検診はいつもだと岡本先生が先なのですが、非常に混んでいたので急きょ放射線科の河野先生の診察を先に受ける事になりました。 岡本先生の患者さんは午前中だけで40人を超す人数だったので、河野先生に 「岡本先生が過労になるのでは?」 と尋ねてみると、「岡本先生は超タフでサイボーグの様な方だから大丈夫ですよ」 と笑っておられた。 どんな仕事であれ、健康で体力がある事が一番重要だと感じさせられましたね。

 どうちらの先生の診察も特に問題は無く、PSAはバウンスで上がる事もあれば下がり方が非常に遅い方も大勢いるので心配なしとの事でした。 岡本先生のパソコンのカルテを見せて頂くと、シードの放射線域は前立腺と周辺に100%照射されており、放射線量は完全にガンをやっつけるのに推奨される180グレイを超える200グレイ以上とのデータが記載されていた。 前立腺とその周辺部に対して十分以上の放射線が当たっているのであるから、これで根治しなければ放射線治療自体がガンに効かないという事になってしまうほど完璧な治療と言えそうです。

 診察当日は採血の時間が遅かったので診察時にはPSA値が判らず、後日連絡しれ教えて頂いた。 今回は3.36で、半年前の3.19より少し高いが、測定の誤差などもあるので変化なしとの診断となりました。 先生からはPSA値の下がり方が遅い人も多いと聞いておりますし、どちらにせよ5〜6年後には0.1以下位にまでなっているだろうから現時点でのPSA値を然程気にする必要はないと教えて頂いています。 また転移があれば治療後半年位の間にPSA値が急激に下がると言う事が起きないので、その期間で急激に下がっている私は転移は無いと断言されているので安心しきっています。 ただ色々なサイトを見てみると僅かなPSA値の上下で一喜一憂しておられる方も多い様であり、気にし過ぎて心の病になりかけた方の話も読んだ事がります。 根拠を示さずに大丈夫だと言われても不安になる事はありますが、確実な科学的データを示して大丈夫だと言われている場合は、治療後のPSA値は単なる参考程度の意味しかないと考えてもよいでしょう。


〇 当サイトの読者との面会と滋賀連絡会

 岡本先生の診察を受けて小線源治療を選択された当サイトの読者の方から、一度会って話がしてみたいとの要望がありました。 都合よく病院のある滋賀県瀬田市在住の方で時間都合も良かったので、1年6カ月目の診察後に病院の喫茶室で会ってお話しする事になりました。 サイト読者の方と直接お目に掛かるのはこれがお二人目ですが、多少でも病気への不安解消や安心できる治療法選択のお役に立てていることが判り、とても嬉しかったです。

 今回の診察時には岡本先生から 「滋賀連絡会」 http://siga.syousengen.net/ という岡本先生の治療を受けたり受けようとお考えの方の交流サイトがあると教えて頂きました。 しがらみを嫌って各種団体に加入する事を避ける性格な私ですが、折角教えて頂いたので翌日加入登録して自己紹介を書き込んでおきました。 すると直ぐに2人会員の方が、「店主の前立腺癌治療記を何度も読んでいます」とか「役立ちました」という内容の書き込みをなさってくださいました。

 これらの事は、とても嬉しい事です! 一文の儲けにもならず、自分自身の病気と言うマイナス面のプライベートを曝け出す事は自己満足・自慰行為とも言えるのですが、それが人の役に立っている事を知った喜び、しかも御本人から役立ったという声を届けて頂いて感謝感激です。 今回の「1年6カ月目の検診では診察内容に大きな変わりがありませんでしたが、別の意味で非常に多くのものを得る事が出来た健診となりました。


〇 外照射を受けた友人の話

 私の友人の一人が、9ヶ月ほど前に地元の私立総合病院で前立腺ガンの外照射放射線線治療を受けていました。 友人の治療後なかなか会う機会が無かったのですが、先日久しぶりに会って話が出来ました。 この友人には私が小線源療法を紹介してお勧めしたのですが、精密検査を受けた病院で外照射を勧められてそちらを選択された方です。

 友人は約1ヶ月外照射治療で通院したそうですが、やはり前立腺以外の部位に当たる放射線の影響で治療が半分位進んだところで直腸に炎症が起き、痛みの為に放射線量を予定より下げるなどの措置が取られたりしたそうです。 治療後はPSA値の下がり方が少し遅いという事でホルモン剤の服用が治療に含められ、その後は順調に下がって現在のPSAは0.台にまで下がっているそうです。 ただホルモン剤の影響で胸が少し大きくなって性欲が無くなり、排尿の方は夜中に3回位はトイレに起きて日中も2時間位に1度はトイレに行く必要があるらしいです。 特に排尿の薬は処方されていないそうで、映画館で映画を観ている時に途中でトイレに立たねばならないのが困ると言っていました。

 ちなみに私は快調だった排尿状態が治療後約1年半で一時的に少し悪くなっていましたが、悪くなってから2ヶ月ほどで回復してきており、寝起きの排尿や長時間我慢したした後の排尿に時間がかかったり、1週間に1回くらい夜トイレに起きる位になっています。 排尿の薬は全く服用しませんでしたし、特に日常生活に影響は無かったです。 素人考えですが、PSA値が一時的に上がるバウンスと連動しているのではないかとも思えるので、一度先生に尋ねてみたり他に詳しい治療記を書いている方が居られないか調べてみたい気がします。

 私は岡本先生・河野先生による小線源療法を全面的に信頼しています。 ですが、「再発はしません、根治します」 「転移はありえません」 と先生に言われても、私の様にバウンスが起きたりPSA値の下がり方が遅いと、「本当に根治するのだろうか?」 とか 「本当に転移はないのだろうか?」 と心配になる方は居られるでしょう。 また私の友人の様にPSA値が0.台にまで下がっても、外照射の放射線量を予定より下げた事やホルモン剤投与がが追加された事、良好とは言えない排尿状態が続く等が起こる場合もあり、それが不安になる方も居られるでしょう。

 大事な事は、治療法を最終的に決めるのは患者本人だという事です。 「我、事において後悔せず!」、真剣に悩んで自分がその時に正しいと考えて選択したならば後悔する必要はありません、それが人生です。 その為にも治療法選択のお手伝いが出来る様にこの治療記を書いているのであり、僅かながらであっても自分が経験して感じたことは今後も書き綴っていきます。


〇 全摘出手術後にPSA再発した元同僚の話

 私の警察官時代の元同僚の何人かと合う機会があり、その中に前立腺ガンで全摘出手術を受けたという方が居られました。 その方は全摘手術をすれば完璧に治る様な説明を受け、セカンドオピニオンを受ける事もなく外科治療を受けられたのですが、残念な事にPSA再発が起きてしまったそうです。

 その方は摘出外科手術を受けた病院が信じれなくなり、他の病院で再発に対しての外照射放射線治療を受ける事にし30回の照射を受けましたが、それでもPSA値は徐々に上がっているとの事でした。 現在のPSA値が1.4位で肺や骨への転移は無いそうでが、まだ私と同じ60台前半の年齢なので将来的にはホルモン治療や抗ガン剤治療が必要になるかもしれません。

 全摘出手術を受けた方とジックリ話す機会が今まであまり無かったのですが、今回は色々な事が聞けました。 少し驚いた事は、小線源療法を受けた私に対し 「ペニスが小さくなる事は無かったですか?」 と尋ねられた事です。 前立腺は尿道を取り巻いている臓器なので、全摘出手術では尿道ごと前立腺と周囲の組織を切り取り、ペニス側と膀胱側の切った両端の尿道を繋ぎ合わせます。 この為、手術直後は普通であったペニスが次第に膀胱側に引っ張り込まれて小さくなっていくらしいのです。 更にPSA再発によって外照射放射線治療を受けた影響で尿道や周辺の細胞に弾力がなくなり、余計にペニスが体内に引き込まれて更に小さくなってしまったそうです。 ただ今のところ小さくなっても男性機能は何とか保持されているそうですが、いずれは外照射の放射線が当たった血管の問題で勃起障害が起こるらしいとの事でした。

 あと、放射線治療から2年半後に直腸からの出血があったそうです。 これは外照射の放射線治療を受けると起こる事らしく、通常は治療後1〜2年で起るのが遅かったとの事です。 ともかく、他所ではなかなか聞けない貴重なお話を伺う事ができました。

 トイレに関してはやはり排尿間隔が短く夜中に4回位はトイレに起きるとの事で、ほとんど夜にトイレに起きる事が無かった私を羨ましく思われ、やはり良く調べてセカンドオピニオンを受けるべきだったと少し悔やんでおられました。 

 私の少し悪くなっていた排尿状態ですが、まだ寝起きや長時間我慢したした後の排尿に時間がかかっていますが、夜にトイレへ起きる事はありません。 現在は小線源療法の手術から1年9ヶ月で、約1年前から排尿の薬は服用していません。 これを書いている前日の夜に映画館へ映画を観に行きました。 会場へ入る直前にトイレへ行っておいたので、約2時間の映画(バイオハザード・ファイナル)を観て帰宅するまでトイレに行く事はありませんでした。 まだ排尿状態が快調とは言えませんが、時間をかけてでも十分に排尿する事を心掛ければ極端な水分補給制限をする必要もなく、利尿作用のあるコーヒーなども飲み過ぎなければ映画鑑賞には支障がない程度です。 なお、1ヶ月前に映画(デスノートU)を観に行った際は、今回より調子が悪かった上にMサイズのコーヒーを飲みながら観ていた影響もあって、上映中に一度トイレに行く羽目になりました。

 外出先でトイレに行く際に、サービスエリア・ショッピングセンター等の人の出入りが多いトイレだとなかなか時間をかけて排尿し難いものです。 そんな時は小用便器ではなく大用の個室の方が気にならなくて良いでしょうね。 ただ洋式だと逆に排尿し難いという声もあり、私自身も和式では感じないのに洋式ではそれを感ずる事があります。 という事で、落ち着いて用を足せないトイレでは、和式の大便器を利用するのが良いと思います。 参考にしてください。


〇 尿道フレアとユリーフ錠

 私の少し悪くなっていた排尿状態がまだスッキリしないので、万一の為にストックしてあった排尿の薬(ユリーフ錠)を服用してみる事にしました。 何しろ1日2回飲んでも1ヶ月分あるので、とりあえず夜に1回1錠を試しに飲む様にしてみた。 すると翌日から排尿状態が少しずつ良くなり、3日目くらいから悪くなる以前の状態に戻り快調になってきました。

 岡本先生にその事を連絡してみると、「それは尿道フレアと言うべきもので、通常はユリーフ錠を1ヶ月位服用すれば消失する症状です」 との回答をしてくださいました。 つまり今まで私が薬を飲む程ではないと言いながらグズグズと調子が悪いのを我慢していたのは誤りだったという事ですね。 この様な場合の為に薬を保管していた訳ですから、排尿の調子が悪ければ早めに薬を飲んで直ぐに治せば良かったのであり、「俺ってバカ・・・」と思いました。 放射線治療を受けるとその後1〜3年位の間は排尿状態が悪くなる事があるので、もう1年位は薬をストックしていた方が良さそうだと考えています。 とりあえず1ヶ月服用を続けて、その後はまた数ヶ月毎に排尿状態を報告しましょう。

 岡本先生からはアメリカの前立腺癌治療研究財団のホームページと、他の治療法と小線源療法による治療での非再発率比較データのグラフ資料のページについてお教え頂きました。 これを見れば小線源療法や小線源療法と他の治療法との併用法が如何に優れて非再発率が高いかが判ります。 病院の違い・医師の技量・患者の状態はそれぞれ異なるので同条件での比較データではなく、同じ治療法でも非再発率に幅がありますが全体的な治療法での差異は見取れます。
 ・ 米国 前立腺癌治療研究財団のホームページ
を開いて、ページの一番下の 「COMPARE」 の項をクリックするとLow・Intermediate・Highの低リスク・中リスク・高リスクごとの各治療法による非再発率のデータグラフが載っており、各グラフをクリックすればそれぞれ拡大して見れます。 同様なグラフは岡本先生の前立腺癌小線源治療学講座のサイトにも載っていますし、各医療系サイトや本でも見る事ができますが、興味がお有りであれば参考にどうぞ。 当然の様に全文英語ですが、Seedsが小線源療法でSeeedsAloneが小線源単独療法です。


〇 2年目の定期検診

 2年目の定期検診に行ってきましたが、今回も特に変わったことは有りませんでした。 ただ、放射線科の河野先生がインフルエンザでお休みになられて急きょ休診となってしまい、泌尿器科で岡本先生の診察だけを受けてきました。 岡本先生は、「ハッキリ言って治療後5年は検診など無しでも良い位なのですが、こちらも経過のデータを記録しておく必要があるだけです。 半年に1回雑談をしに来る程度の気持ちで構いませんよ。」 と仰り、午前中最後の患者だったので診察の大半は雑談していました。

 尿道フレアによる一時的に調子が悪くなった排尿状態は既にほぼ回復しており、それについても 「治療後2〜3年は起る事があるので、問題はありませんが薬だけは持っていてください。」 との診断でした。 薬はまだある程度の量が残っていた事と、無くなれば近所の泌尿器科へ行って処方してもらえば良いとの事なので、当日は処方してもらいませんでした。

 1年目の検診時からバウンスで微妙に数値が上がっていたPSAですが、今回はバウンスで上がった前回・前々回よりは低い3.187で、誤差を考えればここ1年はほぼ同じ3前後位の値て推移しておると言えるようです。 これがあと数年かけて徐々に下がって最低値になるのですが、岡本先生によれば若い人ほど前立腺の細胞も若くて元気な為なのかPSA値の下がり方は遅いとの事です。 摘出手術だと転移や取り残しが無ければ手術後のPSA値はゼロとなり、外照射も治療後半年〜1年でPSA値は1以下にまで下がるらしいのです。 その為に小線源療法でのPSAの下がり方に不安を感ずる方も居られる様で、摘出手術や外照射を受けられた知人が居られる場合に多いみたいです。 実は今回の2年目検診の直前に外照射を受けて1年目の友人 (外照射を受けた友人の話の項で紹介した方です) に会ったのですが、やはりPSAは1以下の0.台を保っているとの事なので、正しい知識が無ければ私も不安を感じていたかもしれませんね。

 この友人は排尿困難になる事は無かった様ですが、放射線が当たった膀胱の細胞が硬く弾力が無くなって多くの量の尿を貯めれなくなったらしく、相変わらずトイレの間隔が短くて夜に何度もトイレに起きねばならないのが困ると言っておりました。

 話しは変わりますが、岡本先生から 「高リスクの前立腺ガンに対する小線源療法を主にしたトリモダリティの成績に関する新たな論文を完成させた。」 とお聞きしました。 私自身は中リスクでしたので、この治療記は高リスクの方の治療には参考にならない部分も多いのではと思えますので、高リスクで小線源による治療をお考えの方はこの論文をお読みになると良いかもしれませんね。
  ⇒ 高リスク前立腺ガンへのトリモダリティ成績の論文
詳しく紹介したいところですが英語の論文であり、英語の苦手な私には荷が重いです。 ですので、私の様に英語が苦手の方は翻訳ソフトでも御利用になって読んでみてください。 なお岡本先生は、転移があっても骨盤内の小さなリンパ節なら何とかなるとの手ごたえを感じていると仰っておられました。

 余談ですが、1ヶ月前に横浜市大の先生や若手4人が岡本先生の指導を受けに来られていたそうです。 岡本先生は御自身の治療技術を広めようと努力しておられ、現在は滋賀医科大学でしか受けれない様な高線量の小線源療法を全国各地で受けれる日が来るかもしれませんね。 今回の検診を受けた段階で岡本先生が治療なさった患者数約900人中、PSA再発が確認されたのは僅か13人だそうです。 計算すると非再発率は何と約98.5%となり、しかも高リスク患者さんをも入れてです。 この治療が全国で受けれるようになるにはまだ時間はかかると思われますが、期待しましょう!

 なお、私が滋賀医科大学の岡本先生による小線源療法に関して初めて調べたのは、これを書いている時点より約2年半前でした。 調べて判ったのは現時点より3〜4年ほど前のデータで、治療数約600人に対して10人のPSA再発を確認したとの事でした。 小線源療法を施した方にPSA再発が起こる場合、再発が確定するのは治療後2〜5年位の事が多い様です。 逆に考えれば治療後1〜2年だと非再発率はほぼ100%であり、年数を経過しないと正確な非再発率が判らない事になります。 ですので当時の総治療者数600人に対して現在のPSA再発13人で考える位が、より正確な非再発率と言えると思います。 それで計算しても非再発率は約97.8%となるので、極めて高い非再発率と言い切れるでしょう。

 
〇 2年6ヶ月目の定期検診

 2年半目の定期検診に行ってきました。 今回は泌尿器科が混雑していたので放射線科の河野先生の診察を先に受けました。 河野先生からは 「バウンスが起きていた様ですが、そろそろ落ち着く頃でしょう。 ただバウンスは1度とは限らないのでまた起こる事がありますが心配ありません。」 と言われた位で簡単に終わってしまい、それから2時間ほどの待ち時間の後、やっと泌尿器科で岡本先生の診察です。 岡本先生からも 「変わりはないですね。 5年後のPSA値は根治したか否かの判断の為に重要ですが、それまでのPSA値は全く気にする必要は無いです。 一応データを取る為に来て頂いていますが、治療後のPSA値の下がり方から転移は有り得ないと判断できますし、完璧にシードを挿入してあるので全く問題ありません。」 と毎度の調子でお話を聞いてきました。

 今回の岡本先生の話では、限局性ガンと浸潤ガンを区別しての治療はナンセンスだと言う様な事を仰っておられた。 「ガンが前立腺の被膜付近にあれば、小さなガンであっても浸潤の可能性があり、限局性と断言できるものではない。 それ故に常に浸潤の可能性があるとして、どんな場合でも前立腺の周囲5mm位までに十分な放射線を当てるのです。 だから再発などと呼ばれるガンが残っている様な事態が起こらなくなるのです。」 との事でした。 この治療記でも何度か書きましたが放射線治療は1度行うと追加治療が困難になります。 ですので最初の治療で完璧に根治させるだけの放射線量と照射範囲を確保するのは当然の事と思えるのですが、残念ながらそうではない医療機関も多い様ですね。

 また、一般病院でグリソンスコア7 (3+4) の中リスクと診断された方で、小線源療法を希望したにも関わらず医師から 「グリソンスコア7では小線源療法はできない。」 と言われ、総合病院にてダビンチによる摘出手術を受けたのですが再発してしまった方もおられるようです。 グリソンスコアだけで見れば私と同じであり小線源療法が受けれない筈がありませんが、まだ泌尿器科医の間でも小線源療法に関する正しい知識を十分に持たれていないという事が悲しい現実の様です。

 昨年、滋賀医科大学病院では岡本先生と河野先生のコンビのによる小線源療法が130件以上行われており、これは週に平均3件の実績ですね。 最近では前立腺ガンに対してロボット支援手術のダビンチやIMRT・陽子線治療の外照射による治療を行う病院・医療施設も多いですが、大都市圏であるにも関わらず小線源療法を行う病院が無かったり非常に数が少ない都道府県もある様です。 県境居住の方が隣県の病院へ行くことは珍しくはありませんが、遠く離れていたり複数の県を跨いでいるとなかなか簡単には診察に訪れる事が無いものです。 各都道府県で治療法が限定されたり偏っている事に疑問に思えるのは私だけでしょうか…。
 
 今回のPSA値は1.236で、今までに最も低かった治療後9ヶ月目の数値のほぼ半分であり、どうやらバウンスも落ち着いた様です。 先生からは治療後5年までのPSA値の上下は治療結果に関係ないので一喜一憂する必用は無いと毎度言われており、私自身も解っている事ですが、それでも数値が下がると気持ちがいいものですね! バウンスは放射線によって前立腺の細胞が壊される事で必然的に起こる様で、人によっては治療前よりも上がる場合があるそうです。 今回は治療前のPSA値が4台だったのに、治療後のバウンスで一旦6以上まで上がった後に低下していった例のグラフを参考に見せて頂きました。 ですので、私のバウンスは一般的なバウンス例の範囲内だそうです。

 今回の検診の頃の排尿状態も書いておきますが、極めてとまでは言い切れませんが快調です。 長時間我慢した後の出始めが少し悪い事と、時々尿の切れが悪いと感じますが、通常生活には何の支障もありません。 1年前は排尿状態が一時的に悪くなりだした時期で、その後は排尿の薬のユリーフ錠を時々服用する事もあったのですが、それと比較するなら絶好調と言っても良いのかもしれませんが。

 
〇 3年目の定期検診

 3年目の定期検診に行って来たのですが、岡本先生と河野先生の両方の検診後にPSA検査の採血をしているので、検査結果は次回の検診日にという事になったので今回は特に書く事がありません。 変わった事といえば、岡本先生の診察室が泌尿器科の方ではなく放射線科の方に移った事です。 まあ泌尿器科と放射線科の両方へ行く必要が無く、受付も1回で済むので楽になりました。


〇 3年6ヶ月目の定期検診

 3年半目の定期検診に行きました。 半年前に採血したPSA値は1.468で2年半前の1,236より0,232高かったのですが、これはバウンスというより採決時の状態による数値の上下する範囲内の様です。 前立腺ガン発見につながった健康診断時のPSA検査の際に調べた事なのですが、自転車に乗って股にサドルが当たって擦れる事でPSA値が上がったり、射精によってPSA値が上がる等、外的要因でPSA値は多少の上昇があり、PSAが正常値に戻るには週間ほどかかるらしいです。 と言う事で、前回と同じ程度と考えれば良い様であり、5年後・10年後に0コンマ台に下がっておれば良いので気にする事はないそうです。

 それよりも岡本先生の前立腺癌小線源治療学講座が来年度をもって閉鎖になる様です。 元々特任の講座は5年期限の様ですが、延長がされないそうで、今後の治療は滋賀大学病院の泌尿器科で行う事になり、2019年には岡本先生の講座では新規の患者さんが受け付けれない様になりそうです。 すでに治療を受けている患者さんは問題が少ないですが、色々と大変なようです。 一部の新聞でも報道されたのですが、以前に岡持先生の治療を受けようとして滋賀医大に来た人が、泌尿器科においてまだ小線源療法の実績が無い医師を担当させるなどしたとして訴訟問題に発展しており、これらが結構ややこしい事になっているみたいです。

 ある程度の情報は得ていますが、当事者ではないのでここで詳細は述べません。 どんな形であっても前立腺ガン患者の為には岡本先生の手による高度な治療が続き、また先生の指導によって小線源療法が得意な優秀な医師が全国に広まって欲しいと願っています。


〇 4年目の定期検診

 4年目の定期検診に行ってきました。 前回の血液検査を半年後に聞くというのには少し疑問もありますが、結果はPSA値が1.014まで下がっておりました。 放射線科の河野先生は 「半年前でほぼ1だから、今日の採血での検査結果では1以下になっていると思いますよ。 今日の検査結果をお知らせするのはまた半年後ですが…。 それから順調に5年経過しているから、来年からは1年おきのPSA検査で良いです。」 と仰ってくださいました。

 今回は検査結果の話しより、岡本先生が今年(2019年)で滋賀医大病院を辞められるという事と、患者さんがその後どうするかに関してでした。 岡本先生は大学病院側と様々な医療方針や運営問題で衝突する事があり、一部の患者さんが岡本先生の治療を望んだのに受けられなかった事で大学病院を訴えるなどの訴訟問題などもあり、それらが拗れたのが理由で病院を辞められる様です。 河野先生からは、「主治医は変わるが、岡本先生が居なくなっても滋賀医大病院で定期検査を受け続ける」 ・ 「まだどこの病院になるかわからないが、主治医を変えずに岡本先生が行く病院へ転院する」 ・ 「基本的には経過観察のための定期検診なので、御自宅近くの病院で定期検診を受けるようにする」 の3通りが提示されました。 現在の私は不安定な時期もあったがPSA値が順調に下がってきているし、排尿も殆ど問題が無いので、地元の病院で年1度の健康診断時にPSA検査を受ける事にしたいと伝えました。 河野先生は何事も100%は無いというお考えですが岡本先生は再発はありえず絶対完治すると仰っているので、万一があったらその時考えるという事で如何ですかと私が言ったら、河野先生は「それで良いでしょう」と答えられました。

 岡本先生の診察は大学病院側の問題を少し聞かされて資料を渡されただけで1分ほどで終了しましたが、それだけ私の治療経過が順調であると言う事なのでしょう。 半年後に病院側と岡本先生の関係が良い方に改善されていると有難いのですが、なかなか難しそうですね…。


〇 4年6ヶ月目の定期検診

 4年6ヶ月目の定期検診に行ってきました。 まず放射線科の河野先生の診察を受け4年目の検診時の採血での検査結果を教えて頂きました。 PSA値は0.379と過去最低の0コンマ台まで下がっており、バウンスによる上がり下がりがありましたが、ここへきて順調に下がり始めたようです。 主治医の岡本先生が滋賀医大を退職される事になっているので今回の検診が基本的に最後の滋賀医大病院での診察となります。 5年後からはPSA検査は1年ごとで十分と言われているので、近所の医院での年一度の健康診断の際に行う事とし、河野先生には治療データ資料用にと検査結果をメールで連絡する事にして最後の診察を終えました。

 1時間後に岡本先生の診察を受けましたが、毎度の様に 「問題ないですね」 の一言で実質の診察は終わりです。 岡本先生は2020年からは滋賀県大津市浜大津にある 「くどうクリニック」 という心療内科の病院を間借りするように泌尿器科を開き、前立腺ガンに特化した診察・治療をなさる様です。 私の場合は地元の医院でPSA検査をし、もし異常な上昇でもあれば御相談行くという事を前回お伝えしてありましたので、岡本先生の診察もこれが最後でした。

 以前に岡本先生からは、「小線源療法の治療後5年のPSA値は単なる参考で10年後までに上昇しなければ完治だ」 「あなたの場合は絶対に完治だからPSA検査をしても大して意味はない」 「ただ、治療データとして研究するために定期検診にきて採血してください」 と言われていた。 そこで河野先生に伝えたように地元の医院で検査したPSA値だけは御連絡しますと伝えたのだが、「そんなものには興味はないです」と、チョット驚くような返事が返ってきた。 滋賀医大の退職と新たなクリニックでの対応と忙しいだろうし、既に十分なデータがあるから絶対完治と確信している患者のでPSAデータを貰っても不要なのかもしれないが、さすがにその返事には「カチン」ときてしまった。

 岡本先生の治療を受けれなかった患者さんが大学病院を訴え、それが新聞に載った上に県議会でも取り上げられて政治問題化してから人が変わった様に感じる。 以前から口の悪さは判っていたが、それでも患者思いの良い先生だと感じていました。 あまりの言い草に怒った患者さんがお廊下まで聞こえる程の大声で怒鳴る事もあった聞き及んでいるので、非常に残念でならない。 願わくば岡本先生には新たなクリニックで以前の様に患者を診察治療し続けて頂き、滋賀医大に残られる河野先生には新しい小線源療法担当の泌尿器科医を岡本先生クラスの腕まで引き上げて頂きたい。 そして全国各地の医療機関から見学・研修に来られた医師たちが、高度な小線源療法を引き継いで多くのの前立腺ガン患者を救って頂きたいと思います。 私が治療法を調べ出した頃から5年ですので、その年に小線源療法を導入した医療機関でも既に数百件の治療実績があるかもしれません。 今後、小線源療法での前立腺ガン治療を希望される方は、各医療機関の実績を十分に調べて比較・検討なさってください。

 なお、この定期検診に前後して近所の医院で健康診断を受け、PSA検査の採血をしました。 滋賀医大病院の様に小数点以下3桁ではなく2桁までの数値ですが0.34と過去最低値で、少しずつですが順調に下がっています。 次回はこれから半年〜1年後の治療後5年〜5年6か月位のPSA値報告になりますかね?


〇 5年6ヶ月目のPSA値と晩期有害事象の話

 お世話になった岡本先生が滋賀医大を去ってしまったので以後の定期検診は受けておらず、昨年と同じ様にかかりつけの内科医院で受けた市の健康診断の際にPSA検査も受けてきました。 今回は小線源療法の治療後5年6ヶ月目のPSA検査となりますが、結果は1年前の0.34の約半分の数値である0.176でした。 治療後5年で0.2以下になる目標は達成され、今後10年目を迎えるまでPSA値が上昇せずに0.2以下を保てば完全に根治した事になりますね。

 滋賀医大放射線科の河野先生へ結果を報告したところ、「治療5年越えでPSA 0.176は良好な値ですね。 経時的に、この先さらに低値になろうかと思います。」 との嬉しい返事を頂きました。 滋賀医大では岡本先生が去った後、他の先生が小線源療法を担当なさっている様で、河野先生の話しでは、「当院では、いまも毎週 同じように 小線源治療を行っており、数ヶ月先まで患者さんの予定が入っております。 この調子で、ひとりでも多くの方を治療したいと思います。」 との事でした。 大変でしょうが頑張って頂きたいものです。

 話しは変りますが、この治療記を読んで頂いている小線源療法を受けられた方から先日メールを頂きました。 詳しい内容は書きませんが、治療後約3年になってから血尿が出たという事でした。 診察を受けた泌尿器科医からは、小線源療法のシードが何か悪さをしてるのかもしれませんねと言われたそうだが、その後連絡が無いので詳しい事はわかりません。 確かにシードは抜け落ちて尿と一緒に排出される例があるので、その際に尿道内で出血が起こる可能性はあるでしょう。 ただ、放射線治療はその毒性による晩期有害事象があり、治療後半年〜3年位に「排尿困難・頻尿・尿意切迫・尿失禁・尿路痛・血尿」等が起こる事があるとされています。 私が治療後1年半〜2年目位で一時的に排尿困難になって診断された「尿道フレア」というのがそれです。 小線源療法ではこの「尿道フレア」と呼ばれる尿道関係の事象が主ですが、稀に肛門の痛みや出血等もあるそうです。 外照射治療は直腸への影響が大きくなり易いので、小線源療法でも外照射を併用した場合は「直腸出血・直腸潰瘍・直腸痛・直腸炎」 が起こる確率はやや上がるらしいです。 何らかの有害事象は数%〜20%位の確率で起きるみたいですが重篤な合併症が起こる事は少なく、治療を必要とせず自然に治まる例が殆どの様です。 とは言えど血尿などが起こると心配になりますし、万一という事もあるので尿・直腸関係に変調をきたした際には素人判断はせずに必ず専門医の診断を受けましょうね。


〇 患者さんの奥様からの相談電話

  この治療記を読んだ方からの質問や相談のメールを時々頂く事はあるのですが、この度患者さんの奥さんから相談の電話を頂きました。 御主人が近々に小線源療法を受ける事が決まっているそうなのですが、やはり不安があるので電話を掛けてこられた様です。 私は単に自分自身が治療を受けた経験者と言うだけですので、あくまで個人的な意見として色々お話をさせて頂いた。

 治療を受ける予定の病院は2014年から小線源療法を導入しているそうで、7年実施しているので経験が浅いとは思えなかった。 御主人は生検12本中6本ヒットし、ガンの悪性度3が5本で4が1本のグリソンスコア3+4=7。 これだと中リスクAクラスなのだが、ヒットした本数が半分と陽性率が高いので、高リスク群に含まれるような説明を受けたそうである。 それでも外照射はせずに小線源のみで治療が可能で、転移の恐れのない病期だから慌てなくとも良いですと告げられているとの事でした。

 単にグリソンスコアだけなら私と同じであり、年齢も私が治療を受けた年齢とほぼ同じなので、問題は無い様に思えました。 気になったのは陽性率と小線源単独で中リスクの前立腺ガンを治療できるだけの技術・経験があるかどうかで、どうやら奥さんもこの点が心配だった様に感じた。 お話を聞くと、治療後5年目と病院での最長となる7年目の非再発率のデータを公表しているとの事で、まずその点では信頼できる病院・医師と思えた。 お聞きした非再発率を正確には書きませんが、低リスクで90%台前半、中リスクで80%台後半でした。 極めてとまで言えなくとも非再発率は高く、しかも、現時点での5〜7年目のデータという事は治療実績がまだ1〜2年目の時のものなので、かなり優秀だと感じました。 更にアメリカの某病院の専門医をお招きして直接指導を受けているだけでなく、以前に滋賀医科大学で私を治療してくださった岡本先生からも御指導を受けているという事だったので納得しました。

 私は医者ではないので何の保証も出来ないし責任も取れないとの前置きをした上で、お話を聞いた個人的な感覚では信頼できる病院と医師だと思えますとお伝えした。 事実、保証も責任を取る事も出来ないのだが、奥様の不安な気持ちを少し和らげることは出来たみたいです。 そんな奥様の電話越しの声を聴いて、女房が前立腺ガン治療の特集テレビ番組で滋賀医大の岡本先生が出演されているのを観て不安感が和らいでいったのと同じ様なものを感じました。 最終的に治療法を決めるのは患者本人ですが、家族、特に奥様は本人以上に不安で堪らない様です。 どんなに腕の良い医師と治療法であっても再発・転移の可能性は100%ゼロではありませんから、後悔しない最良の治療法を選択したとしても不安は残ります。 何度も書きますが私は一人の治療経験者と言うだけで、この治療記も御相談に対する対応も、治療には直接何の役にも立ちません。 ですが、その不安解消にチョットだけお役に立てた様に思えます。 私の責任の取れない素人相談が果たして良いかどうかは疑問の残るところですが、少なくとも女房はこの様な相談に乗る事に賛成しくれるので気が休まります。

 話しは変りますが、これを書いている時点で私は小線源療法の治療後6年になり、年齢もまもなく67歳になります。 排尿状態は治療以前と変わりなく、夜中にトイレに起きる事は1ヶ月に1〜2度もない程度であり、先日も映画館で「鬼滅の刃」をコーヒーを飲みながら途中でトイレに立つ事なく観てきました。 年齢的な男性機能衰退は感じますが勃起障害にも至っておらず、体調は極めて良好と言えますね。 正直言って自分が前立腺ガンを患った事を普段は完全に忘れています。 施術をしてくださった岡本先生はチョット残念な事がありましたが、今も滋賀医大で勤務されている放射線科の河野先生と、お二人には心から感謝しております。


〇 小線源療法と二次ガンのリスク

 この治療記を読んでくださった前立腺ガンの患者さんから二次ガンに関する相談のメールを頂きました。 これまで、この治療記では二次ガンに関する事を書いてきませんでしたので、今回はそれに関して書く事にしました。

 まず二次ガンとは何ぞやという事ですが、これは放射線治療を受ける事によって患部以外の臓器等が放射線を浴び、それが原因で新たなガンができるというもので、治療した部位に再度ガンができる再発とは全く別のものです。 ガン治療で使った放射線の為に別のガンができるというのは不思議な様にも感じますが、核実験や原発の事故による放射線被曝によってガンになるリスクが増える事は御承知の通りです。 レントゲン検査であっても過度に行えばX線の被曝によるガンのリスクが高まります。 つまり放射線によるガン治療と言うものは「諸刃の剣」と言えるのでしょうね。

 では放射線治療を受けたならば高い確率で別のガンが出来るのかと言えば、そうではありません。 治療する部位以外へ過度に放射線が当たらなければリスクは少なく、放射線治療はそれを考えて発展してきているのです。 要は患部に効率よく放射線を当てて、他の部位には当たらない様にする事が大切であり、内照射の小線源療法も、外照射のIMRTや陽子線治療・重量子線療法もその為に考えられているのだと思います。 その中でも小線源療法は線源が患部そのものにあり、放射線の照射範囲が極めて狭いので、効率よく放射線を当てるだけでなく他の臓器などへの影響が少ないので二次ガンへのリスクも少ないと言えるでしょう。

 私が自分の治療法を決める際には二次ガンの事も調べ、他の臓器へ不必要に放射線が当たるリスクが少ないと判断して小線源療法を選択しています。 その頃に調べた文献については詳しく覚えておりませんが、今回お問い合わせくださった方には最近調べて見つけたメディカルオンラインのサイトに、「二次ガンのオッズは体外照射では増加したが、小線源療法では増加しなかった」 という記述があった事をお伝えしました。 また患部で強く作用する陽子線や重量子線療法も二次ガンのリスクは少なく、これも量子科学技術研究開発機構のサイトに 「重量子線療法による前立腺ガン治療では二次ガンが増加し難い」 という研究結果の記述がありました。 通常の外照射はコンピューター断層撮影を元にして多方向からガンに放射線を照射する3D-CRTから更に発展した強度変調放射線治療 (IMRT) へと主流が変わってきていますが、それでも他臓器へ不必要に当たる放射線量は小線源療法や陽子線・重量子線と比較して多いので、二次ガンのリスクもやはり比較すると多くなってしまう様です。

 二次ガンのリスクは陽子線・重量子線治療も低いのですが、色々調べた限り (2021年3月現在) 肝心の前立腺がんの非再発率に関しては小線源療法の方が上である事は間違いない様ですね。 ですので、私個人の見解では小線源療法が前立腺ガン治療法に関して最も優れていると思っていますが、患者さんの中には前立腺が大き過ぎたり逆に小さ過ぎて必要な量のシードを埋め込む事が難しい方も居られるだろうし、股関節の問題でシードを埋め込む際の姿勢を維持できない方も居られるでしょうから、全ての患者さんに小線源療法が適しているとは言えません。

 今回書いた内容は医師や専門的な研究者でない私が偉そうに言う事ではないのですが、何らかの参考として頂き、信頼できる医師と十分に相談して患者さん自身が最適で最も安心できる治療法を選択するのに役立てばと思っております。

 余談ですが、前回書いた記事の患者さんの奥様から、御主人が小線源療法の手術を受けて無事に退院なさったと言う嬉しい連絡を頂戴しました。 私が治療を受ける前に女房が口には出さずとも相当心配していたのを思い出し、奥様のホッとされたお気持ちが良く判り、多少なりとお役に立てた様で一安心しました。 今後の経過が良好である事をお祈りしております。


〇 6年6ヶ月目のPSA検査

  前立腺ガンと判ってから約7年、小線源療法での治療を受けてから6年半経過し、ガン発見の端緒となった市の高齢者向け健康診断に今年も行ってきました。 いつもお世話になっている近所の内科医院で受診し、その際に毎度のPSA検査も受けてきました。 血液採取してから1週間後に結果を聞きに行くと、PSA値は0.113で昨年の0.176より更に1/3位少ない数値まで減っていました。 かかりつけの医師からは、「一般的な人の平均的数値より低いから、転移の可能性は全く無いですね!」 と嬉しいお言葉を頂きました。

 最近では自分が前立腺ガンの患者であった事を完全に忘れており、時々この治療記を読んでくださっている患者の方からの問い合わせや相談のメールで思い出す位になっています。 気になる排尿状態も良好で、夜中にトイレに起きる事も稀であり、あっても月に数回程度。 排尿の間隔も長くなり、これを書いている前日に上映時間が3時間の「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」を映画館で鑑賞し、利尿作用のあるコーヒーのMサイズをチビチビ飲みながらトイレに席を立つ事なく最後まで観れました。 本当にお世話になった岡本先生と河野先生のお二人には、お礼の言い様もありません。

 その岡本先生は大学病院側とのトラブルもあって滋賀医大をお辞めになられたのですが、今は確か京都の宇治病院というところで診療をなさっているらしく、先日この病院で岡本先生から小線源療法を受けるという方からのメールで知りました。(2021年10月現在) その他にも滋賀医大(まだ河野先生は在籍されていると思います)で小線源療法を受けるという方や、以前に岡本先生と河野先生から御指導を受けた医師がベテランとなって治療にあたる大学病院で小線源療法を受けるという方などからもメールや電話を頂いています。

 私が小線源療法を受けた頃はまだマイナーな治療法と捉える泌尿器科医師も多かった様に思えましたが、今では当然の選択肢に入る治療法になってきている様に感じます。 医者でもない私が拙い知識と僅かな経験だけで書いているこの治療記も、多少なりとも貢献出来ているのであれば幸いです。


 〇 放射線治療の進化

  先日、治療後6年半のPSA値を滋賀医大の放射線科医である河野先生に送ったところ、丁寧なお返事を頂きました。 そのメールには 「滋賀医大では小線源療法の全例に直腸スペーサーを用いる様になりました」 との記述がありました。

 私は詳しく知らなかったので調べたところ、直腸スペーサーとは患部である前立腺と直腸の間に緩衝材を入れる様なもので、ハイドロゲルスペーサーと呼ばれる物で前立腺と直腸との間隔を広げて放射線による直腸への影響を極力減らす方法でした。 注射針でポリエチレングリコールという液体を注入し、これに塩緩衝液を混ぜてゲル状にしたもので前立腺と直腸との間隔を1cm程度広げます。 もともと小線源療法で用いる放射性物質のヨード125は強く作用する照射距離が線源から5mm位と短いので、間隔を少し広げるだけで放射線による直腸への影響が激減するというものです。 ハイドロゲルは脳外科でも使われもので、3ヵ月位で体内に吸収されてしまい、術直後は軽い不快感などの副作用が報告される例があるが発生率は僅かな様です。 また、現在は保険適応もあるので治療費が大幅に上がる事も無いでしょう。 いくつかのサイドを調べましたが、昭和大学江東豊洲病院のサイトが判り易かったので参考にして頂けると良いと思います。

 この他にも、「滋賀医大では、前立腺ガンの定位置照射なるものも新たに開始しました」 との記述もありました。 放射線の外照射には以前にこの治療記でも書いた強度変調放射線治療(IMRT)がありますが、これを強度変調回転放射線治療(VMAT)という技術に進化させ、更にそれを5回と言う少ない照射で治療が完了するものに発展させたのが体幹部定位放射線治療(SBRT)という治療法の様です。 これについても詳しく知らなかったので調べましたが、Q LIFE の 「がんプラス」 や 「再発転移がん治療情報」 のサイトが判り易かったです。 肺ガンやリンパ節への転移ガン等に使われている放射線治療法で、現在は限局性の前立腺ガンなら保険適応となっているそうです。 ガンを狙い撃ちできるとの事ですが外照射である事には変わりないので、前述の直腸スペーサーなどを併用できた場合であっても他臓器に対する影響がどの程度なのか、またどれ位の確率でガンを狙い撃ちできるのかの詳しいデータ、そして比較的新しい治療法なのでまだ無理がありますが治療後5年・10年での非再発率のデータを知りたいですね。 

 ガンの治療法は日進月歩だと思います。 それでもこれを書いている現時点においては、小線源療法は前立腺ガンに対する治療法として最上位にあると個人的には思っています。 シードを前立腺内に埋め込むというアナログ的な要素もありますが、ガン細胞に最も近い部位に放射線源があり、他の臓器までの距離はガン細胞へよりも確実に遠いので、ガンには強く作用して他臓器には影響が少ないという事実は変りません。 「もしも」ですが、ハイドロゲルスペーサーの様な物で前立腺を包む様に覆ってから小線源療法でシードを埋め込めむという事が可能であれば、限局性の前立腺ガンなら完璧な治療法になるのではないかと私は考えているのだが、実現できないものだろうか?


〇 IMRT治療を受けた友人の状態

  外照射の放射線治療を受けた友人の話を以前に掲載しましたが、その友人と久々に会いました。 高校の同級生で私が結婚した際の仲人の息子さんでもある友人が受けた治療はIMRT(強度変調放射線治療)で、受けた病院は私が針生検やMRIの精密検査を受けた大きな私立総合病院である。

 友人は治療中に直腸の痛みが酷くなって途中から予定の放射線量より下げた治療となり、治療後のPSA値の下がり方が遅いのでホルモン療法も併用する事となっていました。 放射線治療後5年ほどの筈ですがホルモン治療は続けているそうで、 PSA値も低く再発・転移も無い様ですが残念な事に直腸の状態は完全に回復しておらず、未だに時折血便が出るとの事でした。

  実は私が精密検査を受けた時には、その市立総合病院はIMRTを導入しておらず、私は「摘出手術にしますか?それともIMRTを導入している病院を紹介しましょうか?」と担当医から言われていたのです。 私の友人がその病院で治療を受けたのは、それから1年ほど後です。 つまりIMRTを導入して実績が1年未満の病院で治療を受けた事になります。 疑う訳ではありませんが、IMRTの治療経験が少ない医師が担当した為に、望ましい十分な治療が受けられなかったのではないかと思えてしまうのです。

 友人がその病院でIMRTの治療を受ける前に私に会って相談できたならと思うと、チョット考えてしまいますね。 もっとも実績のある病院であっても担当した医師の経験が浅い場合は心配ですが、やはりその治療法での実績が極力多い病院を選ぶ方が安心できるのではないかと思います。


〇 西郷輝彦さん死亡のニュースを見て

 2022年2月21日のTVニュースで、往年の名歌手である西堂輝彦さんが20日に前立腺ガンでお亡くなりになった事を知りました。 2011年に前立腺の全摘出手術を受けたものの2017年に再発し、昨年には日本でまだ未承認の最先端放射線治療を受けにオーストラリアまで行ったりしましたが、残念な事にお亡くなりになられたそうです。 享年75歳との事なので、老齢とはいえど現在ではまだまだ若いと感ずる年齢でした。

 前立腺ガン治療後10年の生存率を調べてみると、NHKのサイトに [ステージ1 ・ 100%] [ステージ2 ・ 100%] [ステージ3 ・ 98.5%] [ステージ4 ・ 45.0%] [全体 ・ 99.2%]というデータが掲載されていました。 西郷さんは治療後11年目なので、このデータに反映される事はありません。 極端な事を言えば、数年後に必ず再発する酷い治療であっても、患者さん全員が10年生きてさえくれれば治療10年後の生存率は100%となるので、生存率よりも非再発率で治療法を選ぶべきと私は考えており、それは何度もこのサイトに書き記しています。 まずは早期発見、そして非再発率が高い治療法を選ぶことが重要です。 50歳を過ぎたら1〜2年毎にPSA検査を受けましょう。 そして前立腺ガンになってしまったなら、ステージ・持病その他の事由で全ての治療法から選ぶ事が出来ない場合もあるでしょうが、良く調べ検討して最善の治療法を受けて頂きたいです。

 西郷輝彦さんは店主の私が10歳位の頃にデビューされており、小学校の近くにあった劇場にも来られた事がありました。 当時の一宮市は毛織物産業が栄えており、全国各地から織物工場や染色工場に就職した「女工さん」と呼ばれる若い女の人が花束を持って劇場に集まる姿を見た記憶があります。   報道では西郷さんのガンのステージは4との事ですが、最初の治療時なのか再発後なのか詳しい事は知る由もありません。 同じガンを患った経験のある者としてお悔やみを申し上げます。 


〇 7年6ヶ月目のPSA値とEDに関して

 治療後7年6ヶ月目のPSA検査を健康診断の際に受けてきました。 結果は0.173で、昨年の0.113よりは高い数値でしたが一昨年の0.176よりは低いので、どうやら私のPSA値は0.1台で落ち着いている様です。 まあ10年経っても0.2以下であれば根治と言えると聞いています。 滋賀医大の河野先生に連絡したところ、採血した際の体調などによる誤差程度で全く問題ないとの事でした。

 河野先生からの返信メールには、岡本圭生 先生のお姿が載った新聞記事が添付されていました。 相変わらずお元気そうで治療に打ち込んでおられる様なので良かったと思えます。 まあ大々的に取り上げていた新聞が「朝日新聞」だったので、それはそれで納得しましたけど・・・

 この治療記の読者であり岡本先生が滋賀医大に在籍されていた時に治療を受けた方から、御本人のPSA値も河野先生に送ろうかと言う話しがあったのですが、その際にEDの話しが少し出たので、今回はこの件に関して書いてみようかと思います。

 陰茎の勃起は血液が海綿体に充満する事で起きる訳ですから、血液の「入」と「出」の差が大きくなれば起こる現象で、EDはこれが上手くいかなくなる問題なんですね。 私は専門家ではないのでネットで調べた情報ですが、性的な刺激を受けると脳から陰茎の血管を拡張させるcGMPという物質を出す様に指令が出て、この物質により陰茎の血管が拡張して勃起が起きます。 そのままでは勃起しっぱなしになるので、性的な興奮が治まると今度はPDE5という酵素がcGMPを壊し、血管が収縮して勃起も治まるのです。 EDは何らかの原因でcGMPの出る量が減っているのにPDE5の方は正常に出る為に血管が拡張しなくなり、これにより勃起しなくなっているのです。 そこで、PDE5を抑制してcGMPが破壊され難くする事で血液の流れを良くして勃起を促すのが、バイアグラ・レビトラ・シリアス等を代表とするED薬なのです。  現在はそれら優秀なED薬がジェネリックも含めて何種類も出ていますが、全て血液の「出」に関わる方を抑制するものです。 ですから「入」が正常に近い状態であればED薬で問題は解決するのですが、「入」の方に大きな問題があると十分な勃起力が得られなくなる事になりますね。

 前立腺ガンの放射線治療を受けた方がEDになり易いのは、放射線の影響で陰茎付け根付近の筋肉組織や血管が硬くなったりして血液を十分に陰茎へ送れなくなっている為、つまり「入」の問題ではないかと私は考えています。 外照射の放射線治療よりも内照射の小線源療法の方が前立腺以外の細胞に影響が出難いので、結果的に男性機能が残り易いというのも納得できます。 ですが影響はゼロではないでしょうし、高齢になっての運動不足などで筋肉が衰え、血液をポンプの様に送り込めなくなっている可能性もあると思います。 他にも「入」の機能を動かすには性的な刺激が重要ですが、男性ホルモンの存在は重要です。 その為に男性ホルモンが増えやすくなるサプリメント等が世には溢れていますし、男性ホルモン成分を含んだ医薬品も販売されています。 ただ前立腺ガンは男性ホルモンの影響を受けるガンですから、医薬品には「前立腺ガンの疑いがある方は使用しない様に」との注意書きがあるらしいです。 まあ、男性ホルモンを増やすのに有効な食物を多めに食べたり、過剰摂取にならない程度にサプリを摂取する程度なら然程問題ないと思えますが、医薬品は完全根治しない限りは避けた方が良さそうですね。

 ではどうすれば良いのでしょう。 何かで読んだことがあるのですが、登山をなさる方は70歳を過ぎても男性機能が非常に元気らしいです。 これは足腰の筋肉が鍛えられ、括約筋など股間周辺の勃起に関係する筋肉も鍛えられている為と思われますが、登山経験のない方がいきなり登山を始めるのはハードルが高いと思います。 という事で、結論的にはウォーキングやスクワットなどの筋トレや、括約筋を締めて血液を送り込む呼吸法やイメージトレーニング、股関節周辺のストレッチ、下半身のリンパマッサージ等が有効ではないかと考えられます。 cGMPの量が少なくなったとしても血管や筋肉組織が十分な血液を流せるように鍛え、そこにED薬を上手く使えば「入」と「出」の問題解消に繋がるのではないかと思います。 なお、詳しくは知りませんが、陰茎に衝撃波を当てて血管の数を増やすという治療法が最近出てきている様です。 数十万円以上の治療費が必用らしいですが、興味のある方は調べてみてください。

 店主の私ですが、今年は天候不順と町内役員の仕事などで釣りにほとんど行っておらず、その運動不足を解消する為にスクワットと腕立て伏せを30〜50回ずつワンセットとして一日1〜3セットやってます。 そのおかげか、まだある程度機能を維持しているかな?と言ったところです。  今回はどうしても下ネタ的な要素が出てしまうので書くのに苦労しました。 まあ、あくまで私見ですが参考になれば幸いです。


〇 8年6ヶ月目のPSA値

 治療後8年6ヶ月目のPSA検査を健康診断の際に受けてきました。 なんと、その結果は過去最低を記録する0.106という数値でした

 私が毎年PSA検査を受けているクリニックは泌尿器やガンの専門ではない内科ですが、「治療後8年経過してこの数値であれば、転移・再発が無く完治と言って良いでしょう」と言ってくださいました。

 早速、滋賀医大放射線科の河野先生の方にメールで連絡しました。 本来なら岡本先生にも報告とお礼を言いたい所ですが、滋賀医大をお辞めになる際に私が「PSA値を連絡するので資料にしてください」とという申し出に、「そんなものには興味はない」と言われてから疎遠となってしまったので連絡してありません。 まあ元々ぶっきらぼうな性格と思える方でしたし、大学病院側とのトラブで辞めるというストレスによるイライラもあったでしょうから。

 この治療記も書く事がだんだん少なくなってきましたが、治療後10年のPSA値まではお知らせするつもりです。 ただ治療法も日進月歩ですので、最新治療を受けた方が私の様な治療記を書いてくださる事を期待したいですね。

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※ このページは前立腺ガンの小線源療法 (ブラキセラピー) を受けた店主の個人的な考え方を記載しております。 患者である私が調べた事や、体験して色々と感じた程度の内容を書き綴ってきましたが、もし前立腺ガンを患って不安を感じられる方や治療にお悩みの方の為に、少しでもお役に立つ事が出来たのであれば幸いに思います。

 医学的には素人ではありますが、御質問があれば患者の立場からの経験を可能な限りお答え致します。 お問い合わせはTel・Fax・Eメールのいずれでも構いません。 Eメールの場合はウィルスに感染していると自動削除される場合があり、まれに返答で送ったメールが 「迷子」 になり届かない例もありましたので、1〜2週間経過しても返答がない場合はTel等で確認して下さい。
 

 
   

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